72 それが意思だったから、あの人の/それが意思だから、自分自身の
怪物の巣の崩壊に押し込まれた者。
かつてカズヤを救い、今は一般人として過ごしてる滝口ノボル。
その滝口が最期に残した言葉だった。
巣の崩壊で発生する暗がり。
その向こう側に行けと。
何故なのかは分からない。
滝口の記憶を回収し、それを見ていても判然としない。
彼の人生などはそれなりに分かったのだが、崩壊の後にどうなっていたかは不明だ。
その部分だけ記憶が消えている。
断片的に幾つかの情報はある。
しかし、それが何を意味するのか分からない。
それは全体の一部分だけを写した写真のようなものだ。
部分的に何かを示してるのは分かる。
だが、それだけで全体像が分かるわけではない。
圧倒的に情報が不足していて、予測や推理すら出来ないのだ。
分かってる事は一つだけ。
巣の崩壊の向こう側に何かある。
確実なのはこれだけだ。
それが何なのか分からないのがおそろしい。
何もわからないから対策がたてられない。
怪物に関わるのは分かるが、どのように関わってるのかが不明。
断片的な情報だけでは推測のしようがない。
これも滝口が怪物に取り憑かれていたからだろう。
重要な部分が怪物に食われている。
それも、肝心な部分が。
意図的にやってるのかは分からない。
怪物が知られたくない部分だけを吸い取れるのかどうか。
そこは不明だ。
カズヤに重要な部分が伝わってないのは確かだ。
似たような状態の者から情報を得られればまた違うのだろう。
しかし、巣の崩壊に巻き込まれて帰還した者は少ない。
皆無ではないが、そうそうお目にかかれるものではない。
似たような者がいたら、出来るだけ確保して記憶を探るように仲間に伝えてはいる。
だが、そもそもそういうい者にそうぐうする事がない。
おかげでカズヤは事前情報を全く得られずにいた。
それでもカズヤはもたらされた最期の言葉をかなえようとしていた。
遺言だからというのもある。
最期の意思なのだからかなえてやりたい。
しかし、それ以上に気になった。
崩壊した巣の向こう側に何があるのかが。




