71 三年の間に
一人で行動する事になったカズヤは、まず協力者を求めた。
いくら強くても、一人で出来る事に限りがあるからだ。
だから、怪物と戦っていた者達に接触をしていった。
そのほとんどは、怪物側の人間達である邪魔者に脅されていた。
家族などを人質にとられ、やむなく怪物退治を断念していた。
それどころか、怪物を倒そうとする者との戦いを余儀なくされていた。
そんな者達にカズヤは接触、協力を求めていった。
もちろん、簡単に承諾するわけもない。
家族や社会的な立場を人質にとられているのだ。
怪物側の人間に逆らえば、様々な圧力を受けてしまう。
それが己一人ならば良いのだが、家族や縁者に及ぶ。
友人知人までもが被害にあう。
その為、したくもない事をさせられている。
だが、カズヤはその枷を破壊していった。
社会的な影響を与える怪物側の人間を片っ端から殲滅していった。
また、怪物の巣を破壊して、そういった者達を消し去っていった。
圧力をかけていた者達が消えていく事で、脅されていた者達は自由になった。
そうして解放していった者達を仲間にして、怪物側の人間を殲滅していく。
宗教施設を破壊し、能力者を抹殺し、それらの拠点となってる怪物の巣を破壊する。
行動を縛ってる者達を消すごとに、一人また一人と仲間が増えていく。
人手が増えれば、破壊できる怪物の巣も増える。
それがまた新たな協力者の解放につながった。
それを三年続けてきた。
今や何十人という仲間が怪物を叩き潰していっている。
まだかなりの数の怪物が残ってるが、それでも解放できた場所は多い。
今日も敵の拠点を潰し、更に多くの場所を開放した。
怪物側も抵抗をしてるが、圧倒的な戦力差を覆す事は出来てない。
直接対決は不利とみて、社会的な圧力をかけてはくる。
だが、そうしてる敵拠点や中心となってる怪物の巣を破壊すれば解決する。
圧力をかけていた者達そのものが消え去るのだ。
そもそも、そんな事が無かった事になる。
家族や縁者・知人達が受けた被害もなかった事になる。
あとに残るは、何事もなく平穏な世界。
それを取り戻していける。
脅された者達も、そもそも被害がなかった事になるならば、と勢いをもっていく。
たとえ家族や見知った者達が被害にあっても、それが無かった事になる。
怪物の巣を破壊すればそうなるのは知っていたが、それがどれほど大きな影響をもたらすのかまでは完全に分かってなかった。
だから、縁のある者達が傷つくのを恐れて行動できなかった。
しかし、どれほど被害を受けても、それは無かった事になる。
あらためてそれを確かめた者達は、もう屈する事はなかった。
ひたすらに怪物と怪物側の人間を殲滅していく。
人に危害を加えてきた者達が消えていく。
怪物の巣と共に消滅していく。
消え去った後には別の人間があらわれていく。
怪物側の人間は、もともと存在しなかった事になっていく。
代わりに出て来る者達は、人格・性格ともにまともな者達ばかり。
消えていった怪物側の人間のように、誰かを踏みにじって生きてるような者はいない。
そうしてあらわれた良き隣人達との付き合いの方がよっぽど心地よい。
一時的にでも社会的な攻撃などで受ける被害はつらいが、それらを消し去ったあとに出て来るよりよき世の中を考えれば耐えられる。
家族や友人知人達が傷つくにしても、それも一時の事ならば涙をのむ。
そんな者達が増えていった事で、カズヤは求めたものを手に入れた。
自分がいなくても怪物を殲滅していける状態を。
「そろそろか」
まだもう少し仲間を集めたい。
怪物と戦う能力をもった者を見つけたい。
そういった人間を育てたい。
そうも思う。
だが、それはカズヤがいなくても達成できるようになってる。
だからこそカズヤは次の段階に進もうとしていた。
三年前から気になってる事を。
「暗がりの向こう側か……」
滝口ノボルが最期に伝えた言葉を実行にうつそうとしていた。