7 迫る怪物を倒し、奥へと向かう
破竹の勢いだった。
迫る人面虫を男は次々に倒していった。
人面虫の動きもかなり素早く、常人ではとらえられない程だ。
後ろにいるカズヤはとらえきれないでいた。
だが、男の動きはそれに勝るとも劣らない。
天井も壁も床も埋め尽くすほどの人面虫。
芋もしや毛虫、団子虫からバッタにムカデにクモと。
様々な形の虫型の人面虫がやってくる。
それらを男は次々に倒していった。
手足が舞うように動く。
それらが動く度に、人面虫の頭が吹き飛んでいく。
次々に塵にかえる怪物達。
それらは光の粒になり、男とカズヤに吸収されていった。
(凄え……)
押し寄せる人面虫の大群をものともしない。
攻撃できる範囲に入ったものは次々と消え去っていく。
おかげで、男とカズヤに吸収される光の粒が途切れる事がない。
数えてるわけではないが、とっくに何十匹という人面虫が倒されたはずだ。
それだけの数をあっさりと倒していく。
そして、それだけの数が倒されたのに、人面虫はまだ途切れる事もない。
こうなると、男が疲れて動けなくなるのではないかと心配になる。
しかし、男も全く動きが衰えない。
それどころか、押し寄せる人面虫の群れを少しずつ押し返してる。
実際、戦いが始まった頃より男の位置がカズヤより離れてる。
少しずつ前進してるからだ。
押し切られるどころか、押し返していく。
そんな男の強さに呆気にとられてしまう。
知らず知らず口が開きそうになった。
レベルアップするとこうなるのか、と思った。
本当に人間なのか疑わしくなる。
そんなカズヤの前で、男が放つ光が大きくなっていく。
それはひときわ大きく輝いたと思うと、一気に男の前方に向けて噴出していった。
巨大な光の奔流が、虫の群れを巻き込んでいく。
それに触れた虫の大群は、硬い物体に当たったように吹き飛ばされていった。
光の流れに触れた部分を叩き潰されて。
後には人面虫の死骸が大量に残った。
死にきれずに生きてるものもいるが、それらも行動不能になっている。
身体のどこかを吹き飛ばされ、まともに動けなくなっている。
そのせいで天井や壁にはりついていられないのか、床に落ちていった。
男はそれらの頭を一つずつ踏み潰していった。
「それじゃ、処分を手伝ってくれ」
こうやるんだ、と言って男は人面虫の頭を踏み潰していく。
「ちょっと硬いけど、踏み抜けない程じゃない。
遠慮なくやってくれ。
一人じゃ手間がかかる」
言われてカズヤも床でもだえる人面虫を処分していった。
踏み潰す時に嫌な感触が足から伝わってくる。
だが、気にする事なく生き残りを倒していった。
作業そのものは単調だ。
難しい事など何もない。
だが、数が多くて全部を処理するのに時間がかかる。
それに、人に似てる頭を潰すのには多少の抵抗があった。
怪物だと分かっていても、人を殺めるような忌避感がこみ上げてくる。
だが、放っておくわけにもいかない。
害をなす連中だ。
生かしておくわけにはいかない。
もう動けないとしてもだ。
男と一緒にカズヤは怪物をたおしていく。
その度に光の粒がカズヤに吸収されていく。
体感的になにかが変わるという事は感じられない。
だが、確かになにかが自分の中に入ってくるのは分かった。
それがどういう影響をもたらすのかは分からないが。
そうして、怪物を片付けて先に進む。
二人がいるのは巣の入り口。
問題を片付けるにはこの奥まで行かねばならない。
「そこにこの巣の主がいる」
男はそう説明する。
「それを倒せば、この巣は消える。
そうなりゃ、お前の家は安全になる」
それが出来なければ、悲惨な状態は続くという事だ。
行くしかなかった。