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【完結】暗がりの向こう側 ~怪物が蔓延っていた世界で、生き残るために戦います~  作者: よぎそーと
3章

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69 そして、平穏な日常へ

 変わっていく風景。

 新たに出現する現実。

 それらの中を歩き、目的地へと向かっていく。



 なんの変哲もない住宅地。

 怪物が消えた事による変化で、いくらか整備や整理がされてはいる。

 その為、古くからある町の割には景観が良い。

 家が所狭しと並んでるという、古い住宅地にありがちな姿は消えつつある。



 その一角。

 この近隣では珍しくもない平凡な家。

 カズヤはその家の前まで来ていた。

 家の中から居住者が出てくる頃合いを見計らって。



 通勤時間になる頃だ。

 バスや電車を考えると、そろそろ家から出ねばならない時刻。

 家の中から住人が出てきた。



 30歳前後くらいだろうか。

 一般的な背広を来たサラリーマンである。

 特徴などもない、ごくごく一般的な普通の人。

 それが出勤時刻に合わせて家を出てくる。



 同じく家の中からもう一人。

 背広の男と同じ年頃の女も出てくる。

 こちらは腕に赤児を抱えている。

 その隣には、三歳くらいの子供。

 男の家族なのだろう。



 ゴミ出しついでに家族全員で出てきてるようだ。

 男は大きなゴミ袋を。

 子供は手伝いなのだろうか、小さな袋を腕一杯に抱え込んでいる。

 大人から見れば小さなものだが、子供にはいささか大きいようだ。

 必死になって抱えている。

 それを両親は微笑ましく見つめている。



 近くのゴミ置き場まで家族全員で歩いて行く。

 これといって特別な事は無い日常の一コマ。

 それをカズヤは眺めていた。



 その夫婦は、以前はもっと悲惨な状態だった。

 女房は怪物に選ばれ、人間牧場の繁殖用の母体とされていた。

 その腹には怪物が好む男の子供を仕込まれていた。

 夫である男は、その子供を養育させられていく事になった。



 だが、多少は霊感のあった男は、違和感に気付く。

 そこから怪物が見るようになり、戦う事になる。

 最初は怪物一匹を苦労して倒していたが、少しずつレベルを上げていく。

 やがては巣を破壊するまでになった。



 そうして巣を破壊したところで、女房を取り戻す事も出来た。

 不倫の事実は消滅し、托卵で生まれた子供も消えた。

 だが、怪物がまだ存在している事から、男は戦いに身を投じていく事にした。

 不幸をこれ以上増やさないために。



 そんな男に怪物は、配下の人間を使って対処させた。

 人間牧場から生まれた怪物に従属する者達。

 それらが使う宗教団体は、男の女房をふたたびさらった。

 従わねば女房に危害を加えると脅して。



 悩んだ男は、それでも戦いを続けた。

 ここで怪物とその配下の宗教団体に屈したら全てを失うと悟って。

 戦って取り戻す以外に、平穏を手に入れる事は無いからだ。



 そんな男に、怪物と宗教団体は脅しに屈した高レベルの能力者を当ててくる。

 それらを何とか撃破し、宗教団体との戦闘にも突入した。

 しかし、その事で男は女房を殺された。

 それでも巣を破壊して、ふたたび女房を取り戻した。



 幸い、巣を破壊して宗教団体の一部がなかった事になった。

 当然、女房が誘拐される事もなく、誘拐されたから起こった殺害という悲劇もなくなる。

 男は家族を取り戻す事に成功した。



 しかし、何度も同じ事を繰り返すうちに、精神的にまいっていった。

 女房に何が起ころうとも、巣を破壊すれば悲劇はなかった事になる。

 だとしても、大事なものが何度も何度も傷つけられ、殺されるという事を体験する。

 精神に負担をかけて蝕むには充分な重圧だ。



 それに耐えながら男は戦い続けた。

 怪物の巣を破壊して現実を変化させれば元に戻る。

 だとしても、一度は自分の妻が悲惨な目にあうのを目にする事になる。

 それを気にせずにいられるほど、男は冷たい性格にはなれなかった。



 大事な女房を傷つけられ続けながらの戦い。

 それを何度も繰り返してきた。

 家族への愛想をとうに失ったカズヤとはここが違う。



 カズヤなら、家族がどうなろうと気にする事は無い。

 拷問を受けようが殺されようがどうとも思わない。

 復活・再生した家族が、以前とは違うとしてもだ。

 今の家族が、かつてのものより遙かによいものであってもだ。

 もう家族への愛着というものはない。



 だが、そうではない男には耐えがたい日々だった。

 何度も妻を襲う敵。

 それを撃破して取り戻すも、それでもまた繰り返される悲劇。

 それに耐えながら戦い続けていた。



 だが、それもようやく終わった。

 巣の崩壊に巻き込まれ、怪物となってこの世に戻ってきた。

 そして、消滅して新たに再生された。

 その時、怪物に巻き込まれたという運命も変わった。

 そのような事はなく、ごく普通の平凡な人生を歩む人間としてよみがえった。



 今、男はただのサラリーマンとして生活している。

 そこそこ良い会社で、それなりの給料をもらいながら。

 仲睦まじい夫婦として、子供も授かって。

 特別な事は何も起こらないが、平凡な平安と平穏を当たり前として生きている。



 良いか悪いかはともかく、男の戦いは終わったのだ。

 それをカズヤはその目で見て確かめた。



「それじゃ、滝口さん」

 ゴミ出しがてら、家族みんなで並んで歩く。

 そんな男に向けて、カズヤは別れの言葉を告げる。

「お元気で」

 気で姿と気配を消しながら、カズヤはそう呟いて立ち去った。



 家族と一緒にいる男、滝口ノボルはそれに気付く事はなかった。



【あとがき】


3章はここまで

なんとか話に一区切りがついたかな、と思ってる


気に入ってくれたら、ブックマークと、「いいね」を


以前、こちらのコメント欄で俺の書いた話を話題にしてくれてたので、覗いてみると良いかも

http://mokotyama.sblo.jp/

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