6 怪物の巣の中、強くならねばならない理由 2
「えっと…………怪物が見えるようになると襲われて。
戦えないと死んで。
そうなりたくないなら、強くなるしかないと」
「そういう事」
確認のために聞いたら、全て肯定された。
出来れば違うと言って欲しかった。
特に、死ぬという部分は。
「奴等に襲われて死んだ奴も見てきた。
酷えもんだ。
骨も残さず食われるからな」
想像もしたくない場面だった。
特に自分がそうなるところは想像もしたくなかった。
「そんで、食われるとあいつらが強くなる。
もっと大きくなってな。
そうならないように、奴等を逆に倒せるようになってもらいたい」
「そうしないとどうなるんです?」
「後始末する俺が面倒になる」
単純明快な答えだった。
「そうならないように、お前には強くなってもらいたい。
自分を守れるくらいにはな」
そういう事なら仕方がない。
カズヤとて死にたいわけではない。
巻き込まれたとはいえ、それならそれで生き残りたい。
怪物に殺されるなんて願い下げだ。
「あ、でも」
説明を聞いてて疑問が出て来た。
「それなら、なんで俺はあの花に取り憑かれてたんですか?」
「ああ、あれか」
言われて男も思い出したようだ。
「ああいう場合もある。
むしろ、ああいうのがほとんどだ」
自分たちを見ることが出来るものだけ襲う。
それならば、見えない状態だったカズヤが人面花に取り憑かれるわけがない。
それまでカズヤは怪物の事が見えなかったのだから。
「見えなかったから、あの程度で済んだんだ」
おそろしい事を男は口にした。
「見えてないから、あいつらも気付かないらしい。
だから一斉に襲ってくる事はない」
「じゃあ、見えてると……」
「目に付く所にいるあの化け物共が襲ってくる。
何匹も何十匹もな」
「…………」
話を聞いて背筋が凍りついた。
「お前が取り憑かれたのは、怪物の巣の中にいたからだ。
だから自然と怪物の花の種が入ってきたんだろ。
そういうのもいるぞ」
そうして取り憑かれた者は、身体に張り付いた人面花の根から霊魂を吸われていく。
「そのままいってたら、死んでたな。
俺が見つけなかったら、今日中にいってたかも」
そこまで酷い状態だった事を、カズヤは初めて知った。
悪寒が更に大きくなっていった。
あのままだったら、本当にどうなっていたのだろうと。
路上で倒れて死んでいたかもしれない。
本当に運が良かった。
ギリギリのところで、男に助けられた。
「……ありがとうございました」
「ん、なにが?」
「助けてもらって」
「ああ…………気にすんな」
男はそういって照れくさそうに笑った。
「俺もたまたまあそこにいただけだ。
怪物が多そうな所を探ってな。
そこにお前がいただけだ」
ただの偶然だと男は言う。
それでも、そこにいなければカズヤは死んでいただろう。
「まあ、そういうわけでだ。
お前にはこいつらにこれから狙われる事になる」
だから強くなってもらわないと困る。
「倒して出てくる光は、近くにいる見える奴のところに向かう。
だから、俺のあとについて来い。
そうすりゃ、お前もレベルが上がって強くなる」
「分かりました」
カズヤに迷いはなかった。
そんな話をしてるうちに、奥の方から人面虫がやってくる。
それに向かいながら男は、身体に光をまとっていく。
「とりあえず見ておけ。
こいつらの倒し方を」
「はい」
言われるがままにカズヤは、男の戦い方を見ていった。