49 仕事をさせて、利益を吸い上げる、その為の奴隷
止まってる時間の中で、カズヤと男はひたすら巣を破壊していく。
正確には分からないが、もう24時間はとっくに超えている。
それこそ、何日もの間、休まず活動し続けてる気がする。
そこまでしてようやく都市全体の半分が解放された程度だ。
「さすがに疲れますね」
「まったくだ」
カズヤも男も疲労感を漂わせながらぼやく。
休みをとりながら作業をしてるが、それでも疲れは出てくる。
超人的な体力と精神力があっても、働きづめはつらい。
「でも、半分まで来たんですね」
「ああ、あと半分だ」
折り返し地点に到達した事が、ささやかな慰めだった。
ここまで来ると、カズヤの目的だった父の会社にたどり着く。
小さいながらも自社ビルを持つ父の勤め先。
立派な中小企業のそこは、やはり巣に飲み込まれていた。
その中で父は、怪物達の奴隷だった。
取り憑かれてはいないが、最底辺の労働力として働かされていた。
怪物が選んだお気に入りの男を生かすための。
労働によって得た収穫のほぼ全てが、怪物達の取り憑いた者達の生活に使われていく。
その中には、怪物が生ませた子供達も含まれる。
それらは怪物達が作った人間牧場の子供達だ。
いずれ母と姉が怪物の選んだ男の子供を孕む事になっていた。
そうなったら父の給料は上がる事になっていた。
必要なら昇進して役職がつく事にもなっていた。
怪物が選んだ男の子供を育てるために。
もちろんその時には、カズヤは死んでいる。
そうして父は怪物の奴隷として生きていく。
そうなる予定だった。
皮肉な事に、だから取り憑かれる事はなかった。
最底辺の労働力として生かすためにだ。
怪物もさすがにそうなるのは嫌なようで、取り憑いたりはしていない。
おかげで父は人のままだった。
そして会社の上層部だが。
ほとんど全てが取り憑かれていた。
経営を担う重要な部署の人間は取り憑かれてなかったが。
それは、利益を出すためだった。
あげた利益は会社には必要のない部署の者達が吸い上げていく。
そこにいる者達は全て怪物に取り憑かれている。
それらは働きもせずに大量の給料を手にしていた。
そして、会社の中で繁殖に励んでいた。
その為に女も大量に用意されている。
もちろん、働いてるわけではない。
むしろ、仕事に必要の無い過剰な人員になってる。
それでも会社は社員としてそれらを囲っていた。
全て、怪物共の指示のせいだ。
父の会社はそんな状態だった。
他の会社も同じようなものだった。
どこも怪物に侵食されていた。
それらを潰して回る。
少しは状況が良くなればと思いながら。