46 見知らぬ誰かだったら後回しになってただろう
駅周辺を片付け、姉も解放した。
母はパートから、姉はバイトから家に帰ってくるようになった。
ただそれだけの事だが、今までに比べれば周りはよくなってる。
あとは父親だけだ。
父親の方はまだ家に帰ってきてない。
それこそ、何週間も会社に泊まり込みなんてのも珍しくない。
週末に家にいる方が奇跡という状態だ。
それだけ忙しい、会社が大変な状況だという事なのだろう。
今までだったらそう考えていた。
だが、怪物がいる事が分かったのだ。
もうそうは思えない。
母と姉がそうだったように、父も怪物に取り込まれてると考えられる。
それを解決するために、カズヤは父の会社へ向かうことにした。
夜、皆が寝静まった頃。
起きていたカズヤは家を出る。
母と姉に気をかけて、眠りを深くさせてから。
これで朝が車で目が覚める事は無い。
途中で起きて、何かの拍子にカズヤの部屋を確かめる可能性はなくなった。
変に騒がれたりしたら面倒なので、こんな処置をした。
それから父の会社の方へと向かっていく。
途中、男と合流し、誰もいない道を走って行く。
今では自動車の最高速よりも早く走れるカズヤだ。
父のいる所まで一時間もかからずに到着するだろう。
「無事だといいな」
並んで走る男が気遣ってくる。
カズヤも「そうですね」と返す。
だが、心配してるかというとそうでもない。
母と姉がそうだったように、家族としての感情は既にない。
二人がまともになって良かったとは思うのだが。
それも、以前に比べればカズヤ自身の環境が良くなるからというものだ。
今回も、父がまともになれば、カズヤの家庭環境が更に良くなるからやってる。
そうでなければ、父の事もどうでもいいと思っていただろう。
そんな確信をカズヤは持っていた。
なにより、怪物をのさばらせておきたくない。
放置したら確実に状況が悪くなる。
そうならないように、全てを駆逐していきたかった。
父の解放はそのついでだ。
カズヤ自身に関係があるから優先的に処理するだけである。
これが見知らぬ他人だったら、気にもしなかっただろう。
というより、カズヤが知らないだけで怪物の被害にあってるものは大勢いる。
その中にはカズヤよりも酷い状況のものもいるだろう。
それこそ、今まさに怪物によって死ぬ者もいるだろう。
だが、それがどこにいるのか分からない。
分からないから、優先して救助する事も出来ない。
父の事だって、これが赤の他人だったら、見知らぬ人だったらばだ。
存在すら気付く事は無かった。
放置して無視していた事だろう。
知らずに放置するか、偶然助けるか。
そのどちらかになっていたはずだ。
実際、単純に怪物を倒していくだけなら、会社の方には向かわない。
それよりも近所から順番に周辺を片付けていっただろう。
それがわざわざ会社のある都市まで向かうのは、父がそこにいるからだ。
家庭環境に影響があるからだ。
だからまだ片付いてない周辺を置いて怪物退治に出向く事にした。
なので、男が言うように心配などしていない。
今までより良い環境で生活がしたいだけだ。
だから父のいる場所へと向かっている。
薄情と言えばそうなのだろう。
それでもだ。
結果として家は助かるだろう。
会社も巣に取り込まれてるなら、怪物から解放する事になる。
多くの人間が今までより良い状況に置かれる事になるだろう。
それはそれで良いことだろう。
結果が良くなるのだから。




