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4 倒して、あらわれて、中に入り

 家一つを覆う蔦。

 その頂点に咲く人面花。

 その花の中にある女の顔がにらみつけてきている。

 おぞましいと言うしかない。



 それだけではない。

 巨大な人面花の身体には、何匹もの巨大な虫がつきまとっていた。

 それらもまた、頭には女の顔をつけていた。

 人面虫とでも呼ぶべきか。

 それらが幹と呼ぶほどに太い蔦のあちこちにはりついてる。

 幹に口を付けて樹液を吸っていたが、今はカズヤと男の方を向いている。



「あれは……」

「怪物だ」

 戸惑うカズヤに男が答える。

「この家に取り憑いてるやつだ。

 たぶん、あれが原因だ」

「……さっきの花のですか?」

「他にも色々だ」

 ため息を吐きながら男は言う。



「最近、色々酷い目にあってただろ、お前」

「え?」

「分かるんだよ。

 こいつらに取り憑かれた奴はそうなる」

 運気が下がる、酷い目にあう。

 怪物に取り憑かれた者はそうなっていく。

「今までそういうのを見てきた。

 俺も前はそうだった」

 顔をしかめながら言う男は、とてつもなく不機嫌そうだった。



「こいつらはな、潰すまでずっとつきまとう。

 だから、根こそぎにしないと駄目だ」

 それも経験からの分かった事なのだろう。

「それに、こいつらは自分たちが見える奴を逃がしはしない。

 見つけたら常に襲ってくる。

 だから逃げられない」

「それじゃあ……」

「そうだ、見えるようになってるお前はこいつらから逃げられない。

 戦うしかない」

 選択肢はないようだった。



 実際、カズヤの方を人面花も人面虫も見つめている。

 隣の男を見てるのかもしれないが、その視界にはカズヤもうつってるだろう。

 とても好意的とは言えない顔をしている。

 何匹かの虫がじりじりと近づいてくる。

 たしかにこれはまずいとカズヤも感じた。



「どうすんです」

「倒せばいい」

 あっさりと言う男。

 だが、そうあっさりと出来るのかと思った。

 何せ、虫は全長1メートルほどはある。

 簡単に倒せるものなのかと思った。

 けど、やらなければ一方的にやられるだけでもある。

 腹をくくるしかなかった。



「どうすればいいんです?」

「お、やる気になったか」

 カズヤの声に男は嬉しそうだった。

「腰抜けじゃないのは助かる」

 いいながら男は迫ってくる人面虫に向かう。



 男の全身が淡い光に包まれる。

 先ほど、カズヤから人面花をとった時に見たのと同じものだ。

 それを身にまとった男は、一瞬にして人面虫との距離を詰める。

 家にからみついてる太い蔦を駆け上りながら。

 そうして人面虫の前に出ると、拳を顔面に叩き込む。

 その一撃で、人面虫の頭が潰れた。



 同じように他の人面虫も倒していく。

 倒しながら蔦をのぼっていき、屋根の上に割いていた人面花にたどりつく。

 巨大な花の中にある巨大な顔は、迫る男に怯えてるようだった。

 それを気にする事もなく、男は人面花の顔にも拳を突っ込んでいった。



 男を包んでいた光が大きくなる。

 拳が人面花に叩きつけられると、その光が拳に集まる。

 光はそこから人面花の中に入っていった。

 その光が入るに従い人面花の顔が膨らんでいく。

 風船のように内側からひろがり、そして破裂した。



 それと同時に、家をくるんでいた蔦がしおれていく。

 水分を失って枯れたようになり、そして靄や霞のようになって消えていく。



 それをカズヤは呆然と見ていた。

 人間離れした男の動きに驚き。

 一撃で人面虫を倒していく事に目を見開き。

 巨大な人面花も瞬時に倒した事に度肝を抜かれた。



 更に倒れた怪物から、粒状の光がいくつもあらわれる。

 靄や霞になって消えた後にあらわれたそれらがカズヤと男に向かっていく。 

 なんだと思ってる間にそれはカズヤの中に入り込んでいく。

 そうして光の粒が入ってくると、なんだか力がわいてくる。

「上手く吸収したな」

 いつの間にか近くに戻ってきていた男がそう言う。

「これって……」

「説明はあとだ」

 カズヤの問いかけを男は止めた。

「時間がない。

 まだ終わってないからな」

 そう言って家の方を振り返る。



 そちらを見たカズヤは息をのんだ。

 人面花を咲かせていた蔦が消えた家。

 だが、そこに家はなかった。

 あるのは、巨大な暗い球状の何かだった。

 家のあるところにそれがある。

「行くぞ」

 有無を言わさずに男は、カズヤの腕を掴んでそこに向かっていく。

 思った以上に強い力に引っ張られ、カズヤは強制的に暗い球の中に連れ込まれていった。

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