39 破壊する前に結界を張って聖域を作ってみる。
(巣がある状態で結界を作ったらどうなるんだろ?)
怪物退治をしていく中でカズヤはそんな事を考えた。
巣を破壊してから、怪物が入って来れなくするのが当たり前だと思っていた。
だが、ふと疑問に思ったのだ。
(べつに、巣を破壊しなくてもいいんじゃないか?)
とりあえず男に電話をして聞いてみた。
壊す前に結界を作っては駄目なのかと。
そうしたら、
「そういやそうだな」
男も驚いたような声をあげた。
なんの事は無い、巣を破壊する前に作るという発想がなかった。
思い込みとも言う。
そういうものだと思っていたのでやらなかった。
思いつく事もなかった。
「試しに今度やってみるよ。
そっちでやったなら、結果を教えて」
「分かりました」
そう言って電話を切る。
ならばと試しにやってみた。
手近なところで結界を作ってみる。
巣を覆うように聖域が作られていく。
途端に怪物共の動きが止まった。
厳密に言えば止まってるわけではない。
非常にゆっくりとだが動いてる。
何かに抑えつけられてるかのように苦しげに。
結界の効果なのだろう。
怪物が入ってこれない場所なのだ。
そこにいきなり入れられ、身動きが取れなくなっている。
もっともそれは生き残ってるものの話だ。
中には聖域となった瞬間に死んだ怪物もいるようだ。
そのせいか、怪物を倒した時にあらわれる光の粒が、そこかしこから飛んできた。
おそらく、効果範囲の中で死んだ怪物から放たれたのだろう。
おそらくは弱い怪物が死んだのだろう。
レベルが低いと言うべきか。
一定以上の強さがないと、怪物は聖域の中では生きられないようだ。
生き残る事が出来てもかなり苦しむらしい。
おかげで怪物退治がかなりはかどった。
動けなくなった怪物の生き残りを倒していくだけなのだから。
怪物に乗っ取られた人間も含め、次々倒していく。
ただ、これはこれで問題があった。
「面倒だな」
相手は動けない。
それは良い。
だが、逃げる事もないので、追い込む事が出来ない。
一カ所に集めてまとめて倒すことが出来ない。
一匹一匹探して倒さねばならない。
追い込むのも手間はかかる。
だが、探って歩くのも別の手間がかかる。
どちらが楽とは言えない。
ただ、聖域の中にいる怪物は、いずれ死ぬ。
継続的なダメージを受けるのか、時間が経つと死んでいく。
倒したおぼえもないのに光の粒が飛んでくることから分かった。
即死を免れても、脱出できなければ生きていけないのだ。
ならばとカズヤは巣の方に向かっていく。
ザコは時間が経てば死ぬ。
だったら放置して巣を破壊した方が良い。
手間をかけて倒す必要がない。
さっさと巣を破壊した方が良い。
そうしてる間に、勝手に死んでくれるのだから。
この効果は地下にある巣には及んでなかった。
そちらでは怪物は特に苦しむ様子もなく、いつも通りに動いていた。
ただ、結界に阻まれ、聖域になった場所に出られなくなっていた。
それはそれで、被害が拡大しないからいいか、と巣を潰しながらカズヤは思った。
何はともあれ、先に結界を作って聖域にしておく効果はある。
それは確かだった。
電話で男に伝えたら、
「そうなるんだ。
便利だな」
と男は答えた。
「今度からそうする」
今後の活動への変化をもたらすことになった。
カズヤも便利なので、先に結界をはっていくことにする。
労力が大幅に減ったのがありがたい。
それに、見逃して取りこぼすことも無い。
忘れた頃にひかりの粒がとんできて、レベルアップの助けになることもある。
「便利だ」
順番を変えるだけでこうも違うのかと思った。
そんなことを考えながら、駅周辺を片付けていく。
このままいけば、順調に怪物どもを掃討できると考えていた。
なのだが、それを止める輩が出てくる。
「待て!」
人が動きを止める時間が止まった世界の中。
そこでカズヤに向かって叫ぶ者があらわれた。
誰だと思って目を向ける。
そちらには、意気込んだ表情をした6人の男女が立っていた。




