27 決断を迫られる、悲惨な今までと、自分が消える可能性と
「じゃあ、うちも変わるんですか」
聞いてて浮かんできた疑問を投げかける。
「うちも親とかが変わる可能性があるんですか?
俺自身も変わるとか」
「そうなる可能性はある」
男は素直に答えた。
「実際、どうなるかは分からないけどな。
変わっていく場合もあれば、何も変わらない事もある。
その境目はさっぱりわからん」
男もお手上げのようだった。
「ただ、まともな奴はそのままだし。
おかしな奴が消えていく。
そういう風になってるとは思う」
観察結果から考えると、そういうものになるという。
「あと、俺達みたいなのだけど。
変わっていくのを見たことはないな。
俺が知らないだけで、どこかで入れ代わってるかもしれないけど」
それはそれで怖いものがある。
怪物の巣を破壊し終えたら自分が消えてる可能性があるのだ。
そして、代わりの誰かが自分として振る舞う。
「怖いんですけど、それ」
素直な気持ちを口にしていく。
「諦めろ、そういうもんだ」
男はこれまた淡々と答えた。
「俺たちもそのうち消えるかもしれん。
消えないかもしれん。
どっちになるかは分からん。
けど、それでもやるのかどうか。
それを決めろ」
男はカズヤに現実を突きつける。
言われてカズヤも考えていく。
このまま怪物退治を続けるか。
続けて、いつか消える可能性におびえるか。
そして。
男は明言してないが。
怪物を倒さず、以前のような悲惨な状態を続けるか。
そうなってもかまわないと開きなおるか。
消える可能性と恐怖にさらされるくらいなら、いっそ消える事を覚悟で怪物と戦っていくか。
そうして、幾らか改善されていく日常を手に入れるか。
「それが良いのか悪いのか。
それは分からん。
けど、どっちか選べ」
カズヤの抱いた悩みを男は突きつけていく。
「最悪のままでも今まで通りが良いのか。
良い方向に変わるなら、今までよりも変わった方がいいのか」
「自分が消える可能性も含めてですね?」
「そういう事だ」
男ははっきりと告げた。
カズヤも消える可能性があると。
その声を聞いてカズヤは決めた。
不思議なもので、男に言われてはっきりと分かった。
頭の中の悩みが解消されたというか。
何故かは分からないが、男の声が決断するきっかけになった。
「やります」
悩みも困惑もなかった。
惑うことなくカズヤは言い切った。
「あんな奴等のいる世界なんて御免です。
俺は幸せに生きていたい」
その為には怪物を倒していかなければならない。
「だったら、あいつらを叩き潰します」
「そうか」
男は短く応じた。
その声はどこか安心感とか安堵をたたえたものだった。
嬉しそうと言った方が良いのだろうか。
なぜかそう感じられた。
「それに」
「ん?」
「消えるっていうなら、あなただってそうでしょ。
消える可能性があるのに、怪物を倒して巣を破壊してる」
「まあ、そうだな」
「だったら、俺も頑張りますよ。
それに、今まで消えた人は見たことないんですよね?」
「ああ、ないな」
「だったら、俺も生き残れるかもしれないじゃないですか」
その可能性にカズヤは賭けることにした。
たとえ消えたとしても。
それでもかまわなかった。
辛くて苦しい現実が続くくらいなら。
消えてこの世から解放された方が幾らかマシだ。
そうなれば、もう苦しい思いはしなくて済む。
そちらの方が遙かにマシだった。
クズと共に生かされて、苦痛を際限なく受け続けるよりは。




