26 変わった風景、消えた者達の代わり
学校とその周辺の巣を破壊してきた。
様々な怪物を倒してきた。
人に取り憑いていた、成り代わっていた者も倒した。
そうすれば学校の中から消える者達も出て来る。
しかし、そうはなってなかった。
怪物に取り憑かれ、乗り移られていた者達。
中身が怪物となっていた者達はカズヤと男が倒した。
しかし、そうやって消えた者達の代わりに別の者達があらわれていた。
カズヤの知らない面々である。
いずれも、消えていった者達のいた場所にいた。
入れ代わるというべきか。
カズヤの知らない人物が、消えていった者達の代わりにそこにいた。
男の言っていた変化という意味をようやく知る。
消えていった者達の代わりに別の誰かが入ってくる。
怪物となっていた者達の代わりに、他の誰かがあらわれる。
そうして消えていった者などいなかった事になる。
そもそも、消えていった者達など存在しない事になる。
最初からこういう状態だったという事になる。
それが分かるのは、新たにあらわれた者達と面識があるからだ。
全員と関わりがあるわけではないが。
しかし、消えていった者達の代わりにあらわれた者達のうち何人かは見知った者となっていた。
子供の頃から一緒だったり、同じ学校の学級だったり。
友達とまでいかないまでも、知り合いくらいの仲の者達となっていた。
そういう記憶が頭の中にあった。
「どうなってんですか」
昼休みに男に電話をかけた。
色々と変わってる事について。
何がどうしてこうなってるのかがまだ分からない。
巣を壊した事と関わってるのだろうとは思ったが。
「そういうもんだ」
男の答えは淡々としたものだった。
「俺もどうしてこうなるのか分からん。
だけどな、怪物を倒して巣を潰すとこうなる。
人が入れ代わる」
そういう現象なのだと言うしかない。
説明にもなってないが、男もそれしか分からないようだった。
「ただな、決して悪い方向に変わってない。
そうじゃないのか?」
「まあ、それはそうですけど」
カズヤもそこは否定しない。
確かに人は入れ代わった。
だが、それが悪い結果になってるわけではない。
新たにあらわれた者達は、基本的には善人だ。
少なくともカズヤの知る範囲では。
悪さをするような奴はいない。
以前のように、カズヤや他の誰かをいたぶって楽しむ輩は全くいない。
仲がそれほど良くない者も、関係が悪いというわけではない。
接点が少ないというものがほとんどだ。
悪名とどろかすような者は一切いない。
生徒も教師も、まともな人間が揃ってる。
比べてみれば、以前よりもこちらの方が過ごしやすくなっている。
「それが変わるって事だ」
電話の向こうで男が断言する。
「たぶんだけど、怪物の影響が消えたからだろ。
それで、別の誰かが出て来る。
怪物の影響のない、まともな人間がな」
「何なんですか、これ」
聞いててもよく分からない話だった。
なぜ怪物を倒せばまともな人間があらわれるのか?
理由が分からない。
「俺にだって分からないよ」
男もそういうしかないようだった。
「こうすればこうなるってのを見てきただけだしな」
誰かが説明してくれたわけではない。
ただ、目の前で起こった事を見聞きしておぼえただけなのだと。
推測や憶測、そこから考えられる可能性や仮定はある。
だが、はっきりとした確証があるわけではない。
「だから、原因や理由は分からん。
分からんけど、こういう風になるってだけだ」
男が知るのもそれが限界のようだった。
これ以上聞いても何も得られないのは分かった。