18 怪物に居場所を作らせない
男の言う変化というものを実感する事もなく時間が過ぎていく。
親は二人とも仕事が忙しいのか帰ってない。
いつも通りだった。
父親の方は、会社の業績が思わしくないので、帰ってこない日もある。
母の方もパートで少しでも稼ぐべく、遅くまで仕事をしてる事が多い。
おかげで家の中は散らかったままだ。
カズヤも使ったものを元の場所に戻すくらいはするのだが。
細かい所の掃除などまでは手がまわらない。
やり方が分からないので、どうしても行き届かない場所が出てくる。
そんな家を見渡しても、なにかが変わったという気にはならない。
ただ、散らかったままなのも気が滅入るので、出来る範囲で片付けていく。
レベルが上がったおかげか、いつもと違って気力も体力もある。
普段は、学校から帰ってきたらもう動けないほど疲弊していたのだが。
「これもあいつらのせいか」
怪物共のせいで相当まいっていたのだろう。
どれだけのものを奪われていたのか。
それをこんな事でも感じていく。
もし、もう少し身体が動いていたならば。
やる気が保てていたならば。
今まで手をつける事が出来なかった事も出来ていたかもしれないのだ。
それを怪物共が奪っていった。
(絶対に許さねえ)
家の中を片付けながら怒りを燃え上がらせていく。
失ったもの、過ぎ去った時は戻らない。
だが、奪われた以上に取り戻さないとやりきれない。
一方的に奪われてばかりなのだから。
とりあえず自分が動き回る部分を少しだけ片付ける。
幾らか行き来しやすくなった。
そうしてから、怪物が入ってこれないようにしていく。
これも男に教えてもらった事だ。
塩を持ったりする程度であるが、それを家のあちこちに施していく。
これだけで怪物は侵入できなくなるという。
ついでと思ってカズヤは塩を持って外に出る。
気を消費して手に入れた塩を、そこらにまいていく。
怪物がふたたびやってきた時に備えて。
少しでも侵入できる場所を減らして、根を張るのを防いでいく。
怪物の居場所は作らない。
二度と立ち寄らせない。
もう侵入してるものはどうにもならないかもしれないが。
これ以上の侵入は阻止していく。
逃げいていった怪物がどこに潜んでるのかは分からない。
だが、自分の家の周りからは消していく。
そのつもりで、塩をまいていく。
その途中、何匹かの怪物に遭遇した。
まだ小さな人面花や人面虫。
それらも見つけ次第潰していく。
生かしておくだけで人を蝕んでいくのだ。
見逃すわけにはいかない。
人に取り憑いてる怪物も見つけた。
人面花が咲いていたり、人面虫がかじりついてたり。
取り憑いてるそういったものも潰していく。
怪物除けのついでに、怪物潰しも進めていく。
思ったよりも目に付く怪物に呆れながら。
巣に囲まれた場所だったので、生き残りもそれなりの多いのだろう。
取り憑かれてる人間も。
その全てを片付けるとなると、手間も時間もかかってしまう。
先は長いと感じて、カズヤはため息を吐いた。