104 怪物共はかく語る、己の所業を棚上げして 2
怪物には分からなかった。
なぜ自分達の世界が崩壊していくのかが。
なぜ、敵は自分達を滅亡させようとしてるのか。
心当たりが全くなかった。
怪物には自覚がなかった。
自分達が他を虐げてることの。
踏みにじってることの。
怪物が生きていくために、他者を全く顧みてない事を。
怪物にとって、他者を食い散らかしていくのは、生きていくためだ。
別に悪いことをしてるという意識はない。
生きていく為に空気を吸い、食事を取り、眠る。
その為に他者を侵害している。
そこに悪事を働いてるという自覚は無い。
また、効率よく食料を確保するために、餌の養殖や繁殖をしていく。
どうせやるなら自分の気に入ったものを作っていく。
その為に他の多くを踏みにじってる自覚もない。
自分達がどれだけ恨まれ、憎まれてるのか。
怪物にその自覚はなかった。
相手に意思や心があるとすら考えてないのだから。
自分達が食い物にしてきた者達が反撃してくるなど思いもよらなかった。
それは自分達の住む世界が危機にさらされてる今も同じだ。
敵がなぜ敵になって自分達を攻撃してくるのか。
それが全く分かってない。
その理由や原因に思い至らない。
根本的な部分が抜け落ちている。
大事な部分が欠落してる。
だから結論が出てこない。
間違った推理や予想をしていく。
それが解決をよりいっそう遅らせていく。
「なぜだ?」
そんな怪物達の思考を一言であらわすとこうなる。
なぜ、自分達は攻撃されてるのか?
この一点に行き着く。
この一点から出発していく。
延々と「なぜ?」を繰り返す。
「なにも悪いことなどしてないのに」
こうも言える。
怪物共は悪さをしてる自覚がない。
自分達はごく普通に、慎ましく生きてるだけ。
それなのに、なぜ攻撃されるのか?
こんな当たり前の事をしてるのに、どうして攻撃されるのか。
他の生物を食い物にするなど当たり前なのに、なぜ攻撃されるのか?
怪物の思考は常にこういったものになっている。
言うなれば、彼女らは被害者なのだ。
実際はどうなれ、彼女ら自身はそう考えてる。
何も悪いことをしてないのに、一方的に攻撃を受けている。
そんな自分達は被害者だと。
────これが怪物共の思考の基本にして結論だった。
怪物共からすれば、敵対してる者どもこそ侵略者だった。
加害者と言ってもよい。
一方的に攻撃してきて、蹂躙していく。
怪物共の同胞や住処を消去し、生きる場所を消していく。
蹂躙して破壊する、虐殺者。
それが怪物共から見た敵の姿だった。
「おのれ、侵略者!」
「虐殺の悪魔!」
敵に向かってそんな怒りを抱く。
彼女らからすれば、それは当然の評価だった。
それはカズヤも理解していた。
敵対する怪物の思考を読み取っているのだから。
相手が何を考え、どういう意図で行動してるのか。
それを知ることで、今後に活用するためだ。
敵を知り、己を知れば百戦危うからず、という言葉に従ってる。
そうして知り得た怪物の考え。
それにカズヤはそれなりの理解を示していた。
怪物から見れば確かにそうなのだろうと。
カズヤ達から見れば、怪物こそが侵略者であるが。
敵からすれば、同じようにカズヤ達も侵略者なのだろうと。
理解はしている。
理解した上でこう考えていく。
「だからなんだ?」
聞き入れる必要もない愚論として、怪物の思考を切り捨てていった。




