103 怪物共はかく語る、己の所業を棚上げして
「災厄がやってくる」
怪物共の間ではそんな話が持ち上がっていた。
「おぞましき災厄が」
「我らを滅ぼしにくる」
どの人面花も人面虫も同じ事を口走る。
女面の顔に憎悪と嫌悪、そして憂鬱を浮かべながら。
最初は末端にある小さな世界の出来事だった。
いつも通り、行く手を阻む障害があらわれた。
だが、それを気にする者はいなかった。
栄光と繁栄を許さぬ邪魔者はいつもあらわれる。
だが、いつだってそれを退けてきた。
今回もそうなると誰もが思っていた。
しかし、その障害はあろう事か怪物共の世界を崩壊させていった。
末端の出来事ではあるが、それは怪物共の間で大きな衝撃になった。
そのような事、これまでなかったからだ。
しかも、怪物共の世界が破壊されるに伴い、他の世界からの侵略も始まった。
怪物共が平定した場所からだ。
末端を統治する世界が破壊され、その下にあった各世界が混沌とした状態に戻ったのだ。
怪物共がならして平定した場所がだ。
彼女らにとってそれは、あるべき姿への復帰ではない。
築き上げた世界の崩壊でしかない。
平和で平穏な世の中を破壊されたと考えている。
そこに、元々そこにいた者達への配慮はない。
そのようなもの全く考慮もしていない。
せいぜい、害虫が繁殖しているという程度の認識でしかない。
怪物共はその世界にいる者達の事が見えてない。
見ようともしない。
そもそも、そこに生命があるとも思ってない。
勝手にその場に居座って巣くってる邪魔な存在でしかない。
宇宙は自分達の為にある。
そう怪物共は考えている。
だから、様々な世界にいる多くの生物の事など気にもしない。
邪魔になるなら処分するし、利用価値があるなら生かしていく。
そんな考えしか持ち合わせていない。
そんな怪物共にとって、末端の世界での出来事は驚愕する事だった。
自分達の世界が、領域が破壊されていくのだから。
なぜそうなるのか?
どうしてそのような事になってるのか?
怪物には理解出来なかった。
無駄に抗っていたものは消滅してるのだから。
それなのに、なぜ自分達の領域が崩壊していってるのか?
その原因がわからなかった。
ようやく問題の起こってる箇所への偵察が行われた。
その時にはもう手遅れになっていた。
強力な敵が怪物の巣を破壊していく。
怪物が作り上げた世界を破壊していく。
それを止める事が出来ない。
敵が強力だった。
戦闘にならない。
侵入できない凶悪な結界が作られていく。
それに阻まれ、敵と戦う事も出来ない。
無理して結界に入れば、己が死ぬ。
よほど強力な個体でもない限り、結界を破る事は出来ない。
それが出来るような強力な存在はそう多くはない。
無限とも言えるほど多い怪物であってもだ。
どうしても対処が遅れる。
その遅れの間に、崩壊がどんどん進む。
結界の強度も上がっていく。
並の怪物ではどうにもならなくなっていく。
怪物も手をこまねいていたわけではない。
大量の怪物を集め、軍勢を作って対抗していく。
結界は邪魔だが、それを無理矢理壊していく。
そこにいる、世界を壊す敵を倒すために。
結界破壊の為に、多くの怪物を犠牲にした。
まだ成長しきってない小型の怪物すらをも大量にすりつぶし、霊魂を抜き出す。
その霊魂を練り合わせて結界にぶつける。
無数の生命を凝縮して作った気の攻撃だ。
さすがに結界も無事では済まない。
そうして作った穴に向けて、怪物が押し寄せる。
攻め込んできた危険な存在に向けて。
だが、そうして挑んでいく怪物も、即座に殲滅される。
突入した数多の怪物が、再び作られた結界の中にとらわれる。
その中で怪物共は瞬時に蒸発していった。
そうして霊魂が怪物共の敵に吸収されていく。
吸収された霊魂が新たな結界の材料に使われる。
破壊した結界は、怪物共の命で再び作られていく。
これが何度も繰り返される。
結界を破壊して突入する。
突入した怪物が抹殺され、新たな結界の材料にされる。
その結界を再び破壊して突撃。
しかし、突撃した者どもが消滅して結界が作り直される。
数え切れないほど同じ事が繰り替えされていく。
一進一退の状況になっていく。
だが、それは決して膠着状態ではない。
わずかながら、怪物は退いていっている。
怪物の世界は崩壊していっている。
なぜそうなるのか?
怪物は理解出来なかった。
どうしてこうなってるのか?
その理由や原因もわからなかった。




