1 取り憑かれて、救われて
「……………………」
安房カズヤは無言で歩いている。
気が重く身体がだるい。
ここ最近はずっとこんな調子だ。
原因は色々思い当たる。
学校でイジメ──犯罪被害にあってること。
家庭内の状況が最悪である事。
それらによって痛め付けられ、心労も負っていることが理由だろう。
そうなる理由に心当たりはないが。
ただ、父の勤める会社が思わしくない事が生活を圧迫して。
学校にいるクズ共が怪我とストレスの原因なのは確かだ。
これらが無ければ、もう少し楽に生きていられるのだが。
現実はそうではない。
今日もノロノロと動きながら家へと帰る。
下校時間からだいぶ経ってるが、それはいつもどおりにクズ共にいたぶられたから。
学校では優等生で通ってる、一見爽やか少年と。
いまだに根絶されてない乱暴狼藉があたりまえの不良。
手を組んだこれらがカズヤを標的にしている。
今日もそいつらに嬲られてからの帰宅だ。
身体も無事ではないし、気も重くなるというものだ。
ただ、この日のつらさは今まで以上だった。
身体が動かなくなるほどに。
途中、たまらず道の上に座り込む。
もう動けないと思った。
(まずいな)
殴られ蹴られた痛みが増していく。
頭痛もする。
熱っぽくて身体がうごかない。
(もう駄目かな)
なんとなくそう思った。
このまま死ぬんじゃないかと。
幸い、そうはならずに済んだ。
いきなり身体が軽くなった。
うずくまっていたのが嘘みたいだ。
「え?」
驚いて頭をあげる。
かすんでいた視界がはっきりとしていた。
なんで、と思っていると、
「大丈夫か?」
声をかけられた。