ネコさんとクマさんの夏休みは続く
ゾウさんが長い鼻をクマさんとネコさんに巻き付けました。ネコさんとクマさんは、ゾウさんの鼻にしがみつきます。
ぐいっ
「にゃっ、にゃあぁ〜〜!!」
ゾウさんは軽々とクマさんとネコさんを持ち上げました。あっという間にゾウさんの頭より高いところに!
「あはは!すごいすごい!」
「にゃあ〜!たかいにゃあ〜!」
クマさんは大はしゃぎです!麦わら帽子をとって、下の方に投げました!
「わぁい!ゾウさんすごい!」
「じゃあ、いくわよ」
ゾウさんがネコさんとクマさんを持ち上げたまま、歩き出しました。
ズンズンとゾウさんが歩き出すと、それだけでどんどんまわりの景色が変わります。
木にのぼっても届かないような高い所の葉っぱにもネコさんの前足が届きます!
「すごい!たかいにゃあ!」
「あははは!」
ネコさんもクマさんも大興奮です!
木陰も抜けて、湖のそばまであっという間についてしまいました!
高いところから見る湖は、お日さまの光を反射して、とてもキラキラしています。
「にゃあ〜、湖のむこう岸までみえるにゃあ〜」
「高いところからは、よく見えるでしょう?」
ゾウさんも嬉しそうです。
すると、クマさんがぺしぺしとゾウさんの鼻を叩きます。
「ゾウさん、ゾウさん!あれやって!お願いお願いっ」
「あらあら、もう少し湖に入ってからよ」
ゾウさんはそう言うと、湖の中までざばんざばんと入ります。
そして、
「行くわよぉ〜」
ぶんっ!
と、長い鼻をのばして、ネコさんとクマさんを湖の真ん中に向けて放り投げました!
「にゃにゃにゃあぁあ〜〜?!!」
「あはははは!」
ネコさんとクマさんが高く高く空に舞い上がりました!そして、ゆっくりと回りながらそのまま湖に落ちていきます。
「にゃあーーー!!」
「あははは!」
急に下に落ちていく感覚にびっくりして、ネコさんが悲鳴をあげます!
クマさんに投げられた時よりも、もっともっとすごいです!
ネコさんの悲鳴と、クマさんの笑い声が湖に響き渡りました。
ざぶんっ!
どぼんっ!
そして、湖の中に深く深く沈んでいくネコさんとクマさん。
キラキラと揺れ動く水面が上に見えます。くぐもった音が聞こえる水の中は、お日さまの光もゆらめいて、とてもきれいです。
ネコさんがぼんやりと輝く水面を見ていると、急に前足をひっぱられました。
ざぶっと、水の中から顔を出すと、青い空が頭の上いっぱいに広がっていました。
「にゃあっ!」
「あ、ごめん、ネコさん。ゾウさんに湖に飛ばしてもらうよって、いうの忘れてたね」
「……クマさん、いってにゃあ〜」
ちゃぷちゃぷとネコさんを抱えながら泳ぐクマさんは、悪びれることなく謝ります。
「ごめんごめん!でも楽しかったね。」
「たのしかったにゃあ〜」
ぼんやりとしたまま、ネコさんは泳ぐクマさんに体をまかせています。だらんとしっぽが伸びています。
自分で泳がずに、ひとりでに水面を進む感じも、なんだか楽しくなってきました。
「にゃあ〜、あんなに森はあつかったのに、ここはあつくないにゃあ〜」
ちゃぷちゃぷと体に当たる水の音を楽しみ、時々空を見て、青い青い色にネコさんが溶けこみそうになっていると、クマさんに抱き上げられました。
水の中ではふんわりと軽かった体が、急に重くなったように思いました。
「にゃあ〜、たのしかったのににゃあ…」
「あ、ごめん。岸についたよ」
「にゃんだあ〜」
びしょ濡れのネコさんとクマさんは、ぴたぴたと水を落としながらゾウさんの方へ向かいます。けれど、クマさんがネコさんを振り返ると、急に大きな声をあげました。
「あぁっ?!……ネコさん、ごめん、ごめんね!」
「クマさんどうしたにゃ?」
「……帽子、かぶったまま湖に飛んじゃったから…」
「にゃあ?ぼうし…ぼうし」
ネコさんは、びしょびしょの両前足で頭をなでなでします。
ありません。
帽子がありません!
ウサギさんの作った刺し子模様の帽子が、ありません!!
「にゃ、にゃあーーー!!」
「ごめんっ!ネコさん、ごめん!」
「帽子が、ないにゃー!にゃー!
ないにゃー!!にゃあ〜〜!」
びしょびしょのネコさんの大きな目から、ボロボロと大きな涙が次々に出てきます!
「帽子がないにゃあ〜!う、うええ〜ん!にゃいにゃぁあ〜!」
ネコさん、ギャン泣きです。
クマさんはオロオロとネコさんの周りを歩きます。どう見てもネコさんの帽子はありません。やっぱり、湖に落としたのです。
「ゾ、ゾウさん!もう一回湖に飛ばして!ネコさんの帽子をさがしにいくから!」
「ま、待ちなさい!今、どこに落としたのか見ているから!」
「じゃあ、一緒にさがすから!」
クマさんは、一度体をブルブルとふって水を落とすと、そのままゾウさんによじのぼってゾウさんの頭の上から湖を注意深く眺めました。
けれど、水色のネコさんの帽子は、キラキラと光る水面のどこにあるのか、わかりません!
「にゃあーん!にゃあーーん!」
ネコさんは、ガチ泣きしています。
クマさんは困ってしまいました。
せめて、帽子を外すように言えばよかったと深く後悔しました。
クマさんもだんだん悲しくなってきました。
「う、うえぇ〜ん!ネコさーん、ごめんねぇ〜!ごめんねぇ〜!」
「にゃあぁあぁーん!にゃあぁあぁーーん!」
ネコさんとクマさんの泣き声が、湖に響き渡ります。
ゾウさんも困ってしまい、うろうろと水の中に入ったり、背伸びして水面を見たりしました。
すると。
「……あら?ねぇ、あれ、水色の帽子かしら?」
「うぇーん!うぇーん…うぅっ、うぅ?」
ゾウさんが何かを見つめています。
それは水面にぷかぷかと浮いています。
それに……
なんだか、こっちに近づいて来ているみたいです。
「あら?」
「……ぐすっ、へんだね。こっちに、きてるね」
ゾウさんがクマさんを頭に乗せたまま、ざぶんざぶんと湖の中へ入っていきます。
水色の何かは、ゾウさんに向かってゆらゆらと近づいてきます。
「ゾウさん、ここから下ろして…」
クマさんがゾウさんの鼻につかまって、そうっと湖の中へ入ると、そこにはネコさんの水色の帽子がありました。
「ネコさんの帽子…あれ?」
「あ!クマさん、これ、ネコさんの帽子だよね?」
「あ、アマガエルさん?!」
「せっかく湖にきたから、泳いでいたんだ。そうしたら、ちょうど飛んできて。もしかしてと思って、ひっぱってきたんだ。ネコさんに届けておいてね〜」
そう言うと、アマガエルさんはすいーっと泳いで、また湖の真ん中の方へ行ってしまいました。
「あ、ありがとう〜!アマガエルさん!」
クマさんが大きな声でお礼をいいましたが、アマガエルさんは水かきのついた前足をひらっとさせると、水の中に潜ってしまいました。
「ほうっ……よかったわね。ネコちゃんのところに戻りましょう」
「うん!」
水に浮かぶクマさんをゾウさんは鼻にひっかけてもちあげると、そのまま岸の方まで歩いていきました。そして、泣いているネコさんのそばに、クマさんをそっと下ろしました。
「……ごめん、ネコさん、びしょびしょになっちゃった」
「にゃあーん!にゃあー……にゃ、帽子にゃ、帽子にゃー!!」
ネコさんはクマさんから帽子を受け取ると、きゅきゅっと軽くしぼって、水気を切りました。ちょっと帽子がしわしわになりました。
そのしわしわで濡れた帽子をネコさんは嬉しそうにかぶりました。
「あついから、これでちょうどいいにゃ!」
「ごめんね、あとで洗って、きれいにするね」
「にゃあ!クマさん、お願いするにゃ!」
「うん、アマガエルさんが届けてくれたんだ。あとで、お礼にいってくるね」
「アマガエルさーん!ありがとうにゃあ〜〜!!」
ネコさんはキラキラ光る湖に向かって、叫びました。
「帽子が見つかってよかった……」
「よかったにゃあ……」
ネコさんとクマさんが、ほっと安心すると、
ぐうぅ〜〜…
お腹の音が響きました。
「お腹すいたにゃあ」
「うん、お腹すいたね」
そういえば、もうお昼ご飯の時間です!
「水ようかんがもう一箱あるから、食べようか。あとは、ほかの食べ物と交換してもらおう」
「にゃあ〜!クマさんの水ようかん、おいしいにゃあ!」
「ゾウさんもいっしょに食べよう!」
「あら、それじゃあご馳走になろうかしら。さっきの枝豆の分と、水ようかんで二回歌うわね」
「またゾウさんに、高くもちあげてほしいにゃあ!……でも、湖には、とばさなくて、いいにゃ…」
「ふふっ、いいわよ。それじゃ、つかまって」
そう言うと、ゾウさんはネコさんとクマさんを長い鼻にまきつけました。
そして、ゾウさんの頭よりも高いところに持ち上げました!
「あはははっ!」
「にゃあ!たかいにゃあ〜!」
ネコさんとクマさんは、大きな声で笑いながら、ゾウさんと一緒にカメコおばあちゃんの待つ荷車の方へ帰っていきました。
〜おしまい〜
「あっ!ゾウさん!さっきのところに戻って!」
「そうにゃ!クマさんの麦わら帽子にゃ!」
「まぁ!忘れるところだったわ」
「まだカメコおばあちゃんの畑でお手伝いするからね!帽子がないとたいへんだよ!」
「おてつだいするにゃあ〜!!」
おやおや!まだまだネコさんとクマさんの夏休みは、続くみたいですね!
お読みいただき、ありがとうございました!
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