ネコさんと帽子
ネコさんはせっせと枝豆を渡しました。気がつけば、荷車いっぱいにあった枝豆も少なくなってきました。
カメコおばあちゃんがネコさんとクマさんの分として残している枝豆のカゴを見て、そのほかに残っている枝豆の量を確認しました。お店に出せるのは、あとちょっとです。
「そろそろ、店じまいかねぇ〜。
クマさん、そこで待ってるお客さんでおしまいだねぇ」
「はーい、わかったよカメコおばあちゃん。
アマガエルさん、おまたせ。枝豆あと少しだけど、いいかな?」
「あ、あの、ひと束ください。こ、これでもいいかな?」
アマガエルさんが水かきのついた前足を広げると、そこには小さな黒いカメが乗っています。あれ?でも、このカメ…。
「か、カメコおばあちゃんをねん土で、作ってみたんだけど。ど、どうかな?」
おどおどと、アマガエルさんが言います。
カメコおばあちゃんは、荷車から首をのばして、アマガエルさんの持っている小さなカメのねん土細工を見つめます。
「おやぁ、これはすごいねぇ〜。ワタシ、そっくりだねぇ〜!
アマガエルさん、枝豆ひと束じゃあ、交換できないねぇ。うん。ふた束分、ふた束分を持っていきなさいねぇ」
「あ、ありがとう!カメコおばあちゃん!」
「にゃあ!カメコおばあちゃんそっくりにゃあ!」
「ネコちゃん、枝豆をふたつねぇ」
「はいにゃあ!」
ネコさんはにこにこと枝豆を渡します。アマガエルさんがふた束もらおうと前足をのばしましたが、ちょっと持ちきれないようです。ふらふらしてます。
「葉っぱつきだからねぇ〜。じゃあ、葉っぱをとって、枝豆ひと束と、うーん…桃をひとつにしようかねぇ」
クマさんが葉っぱをとった枝豆ひと束と、桃をアマガエルさんに渡してあげました。これなら、持てるかな?
「あ、ありがとう!カメコおばあちゃん!またね!」
枝豆と桃を持ったアマガエルさんは、嬉しそうにぴょんぴょんと跳ねていきました。
カメコおばあちゃんが嬉しそうに、ねん土細工のカメを撫でながら言いました。
「アマガエルさんは、ねん土細工が上手でねぇ〜。だいぶ前にわたしも欲しいねぇ〜って、言っていたのを覚えていたんだねぇ」
「よかったね。カメコおばあちゃん。水ようかんを入れていた木ばこがひとつ空になったから、こわれないように入れておくね」
「ああ、クマさん、ありがとうねぇ〜」
「カメコおばあちゃん、よかったにゃあ!」
「うんうん。それじゃあ、お店はおわりだから、このまま荷車をひいて、欲しいものと交換に行こうかねぇ」
そうでした!カメコおばあちゃんは、あみ目の小さなカゴを、クマさんは日よけの帽子が欲しいのでした!
ウサギさんの帽子はすてきでしたが、クマさんには小さすぎたのです。
「ここにあるものと交換できるといいんだけどねぇ」
「これだけたくさんあれば、大丈夫だよ」
「そうだにゃ!」
クマさんがほてほてと荷車をひいて歩き出しました。荷車がごとごとと音を立てます。
ネコさんは、ようやく市場を見回すことができました。
木の下でカゴを置いて、ヘビさんが組み紐のお店を出しています。ウサギさんがどれがいいか見ています。
その先を見れば、サルさんがわら細工の店を出しています。ん?わら細工?
「あ、麦わら帽子だ!大きいからこれがいいなぁ。カメコおばあちゃん、ちょっと待っててね!」
クマさんが荷車を停めます。サルさんが並べているわら細工の中には、大きな麦わら帽子がいくつもあります。うん、これならクマさんも大丈夫ですね!
クマさんがためしにかぶって比べている間に、カメコおばあちゃんがネコさんに言いました。
「ネコちゃん、そこでキツネさんがアメ細工の店をだしているよぉ。その隣にタヌキさんが焼いたお菓子のお店を出しているから、ちょっと交換してきておくれ」
「わかったにゃあ!枝豆はいくつだにゃ?」
「ふた束ずつ、お願いしようかねぇ」
ネコさんは、張り切ってカメコおばあちゃんのおつかいに行きました。
キツネさんもタヌキさんも、カメコおばあちゃんの枝豆が美味しいことを知っていたので、少し多めに交換してくれました。
ネコさんは、お菓子をいっぱいに抱えて、荷車に戻りました。
「いっぱいもらえたにゃあ!」
「おやおや、こんなにたくさん。ありがたいねぇ」
「カメコおばあちゃんの枝豆は、おいしいからね」
「おや、クマさん、いい麦わら帽子を見つけたねぇ〜」
「えへへ、いいでしょ」
「クマさんにぴったりだにゃあ」
にこにことクマさんとネコさんが帽子をかぶります。どちらの帽子も似合っていて、ぴったりです!
「それじゃあ、あとはカゴだねぇ〜。クマさん、ちょっと荷車をひいてこのまま進めておくれ」
カメコおばあちゃんもニコニコと、ネコさんとクマさんを見ています。
しばらく歩くと、どこかから歌が聴こえてきました。なんだか不思議な歌です。
「ふぅん?聞いたことのない言葉だね?」
クマさんが首をかしげながら、言いました。
「ああ、今日は、ゾウさんが来てるんだねぇ。
あ、そこのイノシシさんのところに停めておくれ。おや、イタチさんとウシさんのお店も並んでるねぇ。これはちょうど良かったねぇ〜」
カメコおばあちゃんが前足を伸ばした先には、竹細工に囲まれたイノシシさんが座っていました。
その隣には、ウシさんにのっかったイタチさんが声を張り上げています。
「つかいやすい鍋だよ!ちいちゃいのも、大きいのもあるよ〜!」
それに合わせてウシさんが鳴きます。
「あるもぉ〜」
おやおや、ネコさん、ウシさんを見てびっくりしていますね!
目がまん丸です!