表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/8

ネコさんと枝豆

 ネコさんは、カゴの中でぐるぐると体をまわすと、ようやく見つけたカゴのへりに前足をのせました。


「うにゃあっ!」


 一生けんめいに体をのばして、頭をカゴから出してみると、そこは畑でした。


「にゃあん?」

「あ、ネコさん、起きた?」

「クマさん、ここはどこだにゃあ?」

「カメコおばあちゃんの畑だよ。これから枝豆をとるよ」


 そうです!ネコさんは思い出しました!

 今日は、市場に持っていくために枝豆を朝にとることになっていました。


 まだお星さまが見えるくらいの空の下、カメコおばあちゃんはせっせとお弁当を作りました。

 お星さまがうすい水色の空に、きらりと輝いている朝のはじまりのころに、クマさんは起きました。


 そして、荷車から(わら)をおろして、カゴとお弁当とヤカンと水ようかんの入った木箱、そしてカメコおばあちゃんと眠ったままのネコさんをのせて畑に出発しました。


 出発してしばらくすると、ネコさんが前足をバタバタさせて、荷車から落ちてしまいそうになったので、クマさんはカゴの中にネコさんを入れていたのです。


「にゃあ、ねぼうしちゃったにゃあ」

「大丈夫だよぉ、ちゃんとお日さまが出てくる前におきたからねぇ。早起きさんだよぉ〜」


 カメコおばあちゃんが畑の中でにっこりと笑います。


「お日さまが起きて、暑くなる前に枝豆をとろうかねぇ」

「がんばるにゃあ〜」


 ネコさんはまだちょっとぼうっとしたまま、荷車からおりて、畑の中に入りました。


 緑色の葉っぱの中を進みます。

 その後ろをカメコおばあちゃんがのそのそとついてきます。そして、枝豆の実のなり具合をたしかめると、言いました。


「うんうん、よくできてるねぇ〜。ここからとろうか」

「わかったにゃあ!」


 ネコさんは、カメコおばあちゃんの前足がちょんちょんと押したところから、枝豆をとることにしました。

 枝豆は葉っぱも根っこもついたまま、市場に持っていきます。ネコさんの背たけと同じくらいの枝豆の茎を土の中からひっこ抜くのです!


「ふんにゃあぁあ〜!!」


 ネコさんは力一杯にひっぱります。


 ぼこんっ!


 根っこから枝豆の実がたくさんついた茎を引っこ抜きました!


「ふんにゃあぁ!」


 ぼこんっ!


「ふんにゃあぁ!」


 ぼこんっ!


「ふんにゃあぁ!」


 ぼこんっ!


 どんどん葉っぱ付きの枝豆がネコさんの力で抜かれていきます!引っこ抜くほどにネコさんのまわりの景色が広々としていきます。


「おいしい、えだまめ、にゃあー!」


 ネコさん、なんだかたくましくなっていますね。

 得意気にひげをそよがせながら、小さな山になった枝豆の葉っぱを見ます。


 ふと、カメコおばあちゃんの方を振り返ったネコさんはびっくりしました。


「にゃあ?!」


 ネコさんのつくった葉っぱ付きの枝豆の山をもっともっと大きくした緑色の山ができていました。


 その山になった枝豆の影には、カメコおばあちゃんが真っ黒い顔を嬉しそうにして、笑っています。


「まぁだ、ネコちゃんには負けないからねぇ〜」


 そう言うと、根っこに近い枝豆の固い茎を口ではさむと、ひょいっとしわしわの首を振ります。


 ぽこっ


 あっさりと枝豆の根っこが畑から抜けました。


 ひょいっ


 ぽこっ


 ひょいひょいひょい


 ぽこっぽこっぽこっ


 カメコおばあちゃんが口にくわえるだけで枝豆がどんどん積み重なっていきます。

 なんということでしょう!


 ネコさんがびっくりしていると、紐を持ったクマさんが来て、くるくるっと枝豆を束ねていきます。

 そして、いっぱいになった束を抱えると、荷車の中にあるカゴにどんどん入れていきます。


 流れるようなクマさんとカメコおばあちゃんのコンビネーションです!


「にゃあ〜、まけないにゃあ!」


 ネコさんはふんすと気合いを入れると、枝豆を引っこ抜きました。


「にゃあんっ!」


 ぶちっ


 ちょっと焦りすぎましたね。茎の途中で折れてしまいました。


「市場には出せないから、あとで食べようね〜」

「にゃあ…ごめんにゃあ」


 カメコおばあちゃんが朗らかに笑います。

 ネコさんは、しょんぼりとしましたが、もうお日さまは待ってくれません。

 もじもじと顔を出しはじめたと思っていたら、どんどん元気になってぴかぴかと輝きだしています。


 あわてたように、うすい雲がお日さまをおいかけますが、お日さまはぐんぐんと空をのぼっていきます。


「ほれほれ、早くしないと暑くなっちゃうよぉ〜」

「にゃにゃにゃにゃあ!」


 ネコさんは必死に枝豆の根っこをぽこぽこと引っこ抜きます。

 クマさんもせっせと束ねては、荷車に運びます。


 気がつけば、荷車は枝豆の束でいっぱいになりました。


「いやぁ〜、こんなに早く終わるなんてねぇ〜。ネコちゃんありがとうねぇ」

「が、がんばったにゃあ」


 ネコさんがふらふらと畑の横にある木の下に倒れこみました。

 クマさんは、荷車を木のかげになるように動かすと、荷車から小さなふたのついたカゴを出しました。


「ネコさん、おなかすいたよね。ごはんにしようか」

「ごはん!食べるにゃあ!」

「麦茶も飲みなさいねぇ」


 カメコおばあちゃんは、しその葉っぱで包まれた焼きおにぎりと、ナスとキュウリのお漬ものと、甘い味噌をのせた焼きナスを出しました。

 クマさんは、木箱から水ようかんを出しました。


「にゃあ!ごちそうだにゃあ!」


 麦茶をごくごくと飲んで、ネコさんは大喜びで言いました。


 よかったね、ネコさん。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 枝豆大好きにゃあ(*´▽`*)
[一言] 枝豆は鮮度が命! 朝採り枝つきなんて贅沢だなぁ(*´ω`*)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ