ネコさんとクマさん
ネコさんは、せっせと荷車に水ようかんの入った木箱を運びます。
納屋の前にあるクマさんの荷車は、まわりを板で囲んであります。荷車のおしりのほうの板だけ外せるようになっていて、大きな丸太も乗せられる丈夫な荷車です。
ネコさんは、その板を外して木箱を乗せました。
すでに荷車には、たくさんの袋や箱が乗っています!
「にゃあ!いっぱいあるにゃあ!」
「カボチャもとれたから、カメコおばあちゃんにおすそわけをするんだ。あとは、おやつのちびじゃがのフライドポテトとか」
「じゃかいも!甘いおみそのじゃがいも、食べたいにゃあ〜」
ネコさんはクマさんの家に来た理由を思い出しました。
「もちろんあるよ。荷物を全部のせたら、ネコさんを呼びに行くつもりだったんだ」
木箱を乗せおわったクマさんが、にっこりと笑いました。
「カメコおばあちゃんのところに、行きたいんじゃないかなと思って」
「にゃあ〜、クマさんはなんでもお見通しだにゃあ」
ネコさんは恥ずかしそうに、もじもじと顔を前足で洗いました。
荷物を全部乗せて、おうちの戸じまりもしました。
ネコさんは、ハスの葉っぱのくきを短く切って、頭にのせました。日よけの帽子のできあがりです。
「しばらく帰ってこないからね」
クマさんはそう言って、近くにあった真っ白い石をつかむと、ドアにカメコおばあちゃんの絵を描きました。
「カメコおばあちゃん、そっくりにゃあ」
「じゃあ、行こうか」
「しゅっぱつにゃー!」
ネコさんはハスの葉っぱの帽子をかぶり、クマさんは竹の葉っぱでつくった日よけを頭にのせて、出発です!
クマさんが荷車を引いて、うしろからネコさんが押します。
クマさんは力もちなので、ネコさんはそれほど力をつかいません。
あっちをキョロキョロ。
こっちをキョロキョロ。
真っ青な緑色の田んぼや、真っ赤なトマトがなっている畑を見ては、
「あ!まっ白い鳥さんがいるにゃあ!」
「トマト、おいしそうだにゃあ!」
クマさんにたくさんお話ししています。
クマさんはネコさんのお話に、ふんふんと相槌を打ちます。
湖まであと半分くらいになったころ、クマさんはネコさんを荷車の前の方に、ひょいっと抱えて乗せました。
「そこに麦茶の入ったヤカンがあるから、のんでね」
「にゃああ〜!お手伝いするにゃあ!」
「ここからは下るだけの坂道だから、だいじょうぶだよ」
クマさんは、持ってきたコップに麦茶をそそぐと、ごくごくと美味しそうに飲み干しました。
「おいしそうだにゃあ」
ネコさんもつられて、麦茶をごくごく飲みはじめました。
クマさんはにっこりと笑うと、ネコさんが麦茶を飲み終わるのを待ちました。
「いっぱい飲んだ?」
「のんだにゃあ!」
ネコさんがハスの葉っぱをかぶり直して、元気に答えました。
クマさんはそれを聞くと、もう一度にっこり笑って荷車を引き始めました。
ごろごろごろ。
ネコさんは荷車に乗ったままです。
ごろごろごろごろっ。
なんだか早くなっています。
ごろごろごろごろごろごろごろっ!
「クマさん…にゃんだか」
ごろごろごろごろごろごろごろごろ!!
「にゃにゃにゃにゃ!はやいにゃあ〜!」
ものすごいスピードで、クマさんは坂道を下っていきます!
「ネコさん!ハスの葉っぱをはずして、荷車の上に立ってごらん!」
「にゃにゃにゃ?!」
ネコさんは、あわててハスの葉っぱを頭から外すと、荷車の囲いに前足をついて、立ち上がりました。
「にゃあ〜〜ぁ!」
夕方にはまだ早い、青い空がネコさんの頭の上いっぱいに広がります。
クマさんの頭よりも高いところから見る景色は、いつもと違って見えます。
後ろ足よりも低いところにある道ばたの緑の葉っぱたちが、どんどん後ろに消えて行きます。
「すごいにゃあ!高いにゃあ!」
ネコさんはごきげんになって、にゃあにゃあと叫びます。
ひげを風にそよがせて、ふんふんと夏の匂いをかぎます。
あつあつにかわいた土に、木陰を作る葉っぱの匂い。
がたがたと揺れる荷車からは、ジャガイモと甘い味噌のおいしそうな匂い!
「おなかすいたにゃあ〜!」
「あはは!湖についたら食べよう!」
坂道をものすごいスピードで走るクマさんも、なんだか楽しそうです。
ごろごろごろ……
だんだんとスピードが落ちて、ネコさんを乗せた荷車は木陰の道を走ります。
湖までもう少しです。
ごとん。
クマさんが荷車を止めて、ネコさんの方に近づいて来ました。
「ネコさん、行くよ!」
「にゃあ?!」
クマさんはネコさんを向かい合わせで抱っこすると、そのまま走り出しました!
「にゃあ〜?!」
ネコさんはクマさんの背中に必死にしがみつきます。
ものすごいスピードで運ばれていきます。
「ネコさん、湖だよ!」
クマさんの声に、ネコさんが振り返ると、そこには水面をキラキラと輝かせた湖が広がっていました。
「湖にゃあ!」
ネコさんが喜びの声をあげると、そのままクマさんはネコさんを湖に放り投げました。
「にゃあぁあぁあ〜?!」
ネコさんは空を飛びました。
青い空がきれいです。
「にゃあっ!」
ざぶんっと、大きな音を立てて、ネコさんは水の中に落ちました。
その後すぐに、ごきげんな笑い声を上げて、クマさんも水の中に飛び込みました。
「わあい!湖だ!涼しい!」
クマさんも夏の暑さに困っていたみたいです。
あれ?
ネコさん、浮いてこないな?