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第一話 エステル

「はぁぁ、今日の収穫はこれだけかよ。盗賊も楽じゃねえや」


 アタシはそう言って、今日の分を机に広げる。

 一台の金持ち馬車を襲ったが、あまり金品はなかった。毎回命の危険を冒してやってるというのに、割に合わないにもほどがあるというものだ。


「でも姐さん。これを売り飛ばしちまえば一週間は暮らせるよ」


 ため息を吐くアタシに、弟分のポトが慰めるように言ってくる。でもアタシは別に慰めて欲しいんじゃない。


「だから何だって言うんだい。すぐに尽きるだろうが。アタシはね、もっとデカい仕事を狙いたいんだ。こんなちょろちょろやってたら、人生終わっちまうよ」


 もっともっと大きな宝が欲しい。もっともっとスリルのある生活が欲しい。

 それと今の生活とは、大きくかけ離れすぎているのだった。



******************************



 ――アタシはエステル。


 家名なんて上等なものはない、平民――いや、それ以下の女。

 二十五にも差し掛かろうという年頃で、未婚。毎日食うのが精一杯、そんな暮らしをしている。


 穴蔵に身を潜めて、アタシは女盗賊として毎日をやり過ごしていた。

 仲間はポトだけ。元々アタシは一匹狼だったが、数年前にポトをたまたま道端で拾って、それ以来慕われている。


 八歳年下だけど、あいつのことは正直気に入っている。男として、ね。


 それはともかく、もうずっと山奥に引きこもって、時たま麓に出て馬車を襲う、そんな生活を続けていたアタシだけども。


 ある日突然、ビッグニュースを耳にした。


「え? 隣の国に『黄金の秘宝』だって?」


「そうなんだよ姐さん。街に買い出しに行った時、聞いたんだけどね」


 どうやらポトがいい話を持ち帰ってきたらしい。


「もっと詳しく聞かせろ!」


「姐さん食いつきがいいなあ。ほら、テーブルに身を乗り出さないでよ。スープの器が傾いてるじゃないか」


 ポトの言葉なんてお構いなしに、アタシは話の続きを催促する。

 すぐに諦めたらしく、ポトはその耳より話を教えてくれた。


 簡単に言ってしまえば、ここより東にある隣国の城に、『黄金の秘宝』というデカいお宝があるという。

 隣国とこの国は実は冷戦状態で、渡ることは難しいんだとか。でもアタシは、一も二もなくその話に飛びついた。


「そんなでっかいお宝、夢があるじゃないか。……盗りに行ってみてえもんだ」


 アタシには望みが一つだけある。

 それは、世界一の女盗賊になることだ。元々捨て子だったアタシは、色々な訳あって盗賊の道に進んだ。今はしがない山賊だが、絶対に大盗賊になってやるのだと決めたのだ。


「こんな絶好の機会、逃せるはずがねえ。よし決めた、『黄金の秘宝』、狙ってやるぜ」


 アタシはニヤリと笑った。

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― 新着の感想 ―
[良い点] わお、女盗賊のヒロインですか! いいですねー! 宝をねらっての敵国入り。 どうなるのかワクワクですー!
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