江戸時代に回帰させるファシズム
賀楢書店と繋がりがある野田病院、これは古株の女性患者である高畠が口で言った、事実上言ったことであるから、先ず間違いないと思う。高畠が虚言癖のある「患者」でなければだが。
その賀楢書店の主な収入源がセブンイレブン合志御代志店であると「仙声」で言った、賀楢書店次女の真田は、先ず間違いなく驚愕の表情を浮かべることになったであろう。
「ヒトラーの大衆煽動術」
セブンイレブンに置いてあった、店に入って、右側の雑誌・本のコーナーに置いてあったその本、三冊はあったと思う、を月矢は、少しパラパラとめくり、とても落ち込んで店を後にした。
ナチズムとオカルトの深い関わりは有名である。
月矢はもちろんその本を買わなかった。
賀楢書店と繋がりのあるような店ならば、このコロナウィルスで政情不安定なときに、そう言う本を棚に並べるはずがない。
真田が嘘を言ったのか、しかし真田の性格、当時の「声」の感じからして、真田がそう言う嘘を言ったとは考えられない。
魔法社会が完成したら、オカルト的な物が、先ず現代において、流行の兆しを見せるだろう。
店の外に出た月矢は煙草を吸った。店の横に新たな場所、店の側壁に置いてある灰皿スタンドでである。
以前は、店の正面、左横においてあった灰皿スタンドであったが、人目につきにくい場所に変わって、心なしか、煙草を吸う人が増えて来た感じは受ける。
特権的な階級である喫煙家は自らの力を隠す。
月矢は思う。これではダメだと。
今度、セブンに行ったら、スタンドを元のスタンドの位置に変えてみたいと店の店長の真木に強く働きかけてみよう。
何人か人が駐車場、主として、左手の方から、現れてきた。
月矢は全員に挨拶をした。何時もなら、当然ながら人は違うわけだが、挨拶を返してくれる人が多いのだが、この時は何故か、皆険しい表情、怪訝な表情を浮かべ、黙って素通りしていった。
ファシズムの時代とは、賢者、お茶の間における批評家がやたら多いこの国において、自分だけが正しい、自分だけは正義であると錯誤していく現象から始まる。
月矢は挨拶をして、数人から無視された、ただそれだけである。
コロナウィルスで、人心は不安な中にある。
如何なる理由があるにせよ、そう言う本は置くべきではないが、コンビニと言うのはルート毎に一斉に商品を購入するので、仕方の無い面はあるかもしれない。ただ担当者をチェックしなかった、店長の責任、経営倫理上の責任は問われてしかるべきであろう。
店長の真木は、がさつで乱暴な感じがする人物である。
あまり思慮の深そうな人物でない、と言うことである。
親友、幼馴染みの山田がそう言うタイプなので特にわかる。
そう言う人と月矢は感情的、感性的に全く合わないが、話しかけられることは比較的多い。
嫌だけれど、仕方ない。お義理程度には話を返している。
「お前、何でそぎゃんあっとや」
代ゼミ熊本校の本校の1階横にある付属の食堂で、月矢はかって、作間にそう凄まれたことがある。
作間とトラブった後の北校先輩を交えての四人の話し合いだったが、佐久間はそう激情した。
喧嘩、作間は北高ラグビー部でならした猛者だったが、月矢は構わず、相手を粉砕するつもりで、と言うより無意識でタックルしたのである。作間も、こちらの服をつかんで、押さえにかかった。
ガードマンがやって来る。「何でもありませんよ」と言う佐久間の声が裏返っていた。月矢は「勝った」と思った。
月矢は怪力である、しかし、その怪力が何時もは出ないように、人間の意識に自我を押さえてある。自我とは力の物差しである。ドストエフスキーの『悪霊』を丹念に少しずつ、オーサーというボランティア研修の行き帰りの通勤電車の中で読んでいき、読み通した月矢にとって、「人間」についてあまり深く悩むことはないのであった。
人間は人間じゃん。そんなん、わざわざ特徴付けたら変じゃん。
勿論だが、服に縫い付けられた名札に「人間」と書いてあるわけではない。
そう言う観点からすると、昔、ついこの間まで、あらゆる種族に例えば、巨人族と人間などの種族間の差別などはなく、平和にやっていたのである。
2016年、全てが決壊する。
魔族の出現、次いで世界は魔族の構造転換にかけられる。
少し位気にくわなくたって、コミュニケーションをしてみることをお勧めしたい。
高校くらいまでですよ、本気でぶつかっていけるのって。みんな死ね。消え去れ。
月矢は生半可な気持ちで、オナニーをする。ドストエフスキーも兵学校で、オナニーをしまくったのであろうか。あぁ、好きだよ、醤油煎餅。神社に奉納する徳利問屋は辛口醤油煎餅が好き、大好き、超超愛してる。今日も三社詣りで気分は毎日、江戸の正月の気分です。