いつでもどこでも短編小説『夜の静寂』
夜になり町を歩く。夏の夜の澄んだ空気が心地よくて、あてもなくいくらでも歩いて行ける気がする。
商店街には人影はなく静寂が町を包んでいる。さっきまで此処に住民たちの生活があったとは到底思えない。
小高い場所に登って町の全貌を確かめようと思った。坂を上る途中にふと空を眺めると、幾千の星がこちらを睨んでいる。怖くなってうつむいた。
丘の上にたどり着いて町を見下ろした。昼間の爆撃による大きなクレーターと町の残骸だけが見える。自分のした罪の重さを実感すると自然と涙があふれてきた。肩に担いでいた銃を投げ捨てて、ひざまずくと大声をあげて泣いた。
しばらくしてもう一度銃を手に取った。
一発の銃声が静かに夜空に沁みこんでいった。夜は再び静寂を取り戻した。