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僕が、その場に座り込んでいると叔母が来た。叔母は、目の前にある1つの死体を見ると、頬を紅潮させ
「よくやったわね」と、手を合わせ歓喜に満ちた声を上げた。すると、鞄の中から携帯を取り出すと突然電話をかけた。
叔母は電車越しの相手と一言二言話した後、「それじゃぁ、帰りましょうか」と言ってきたので、僕は叔母と一緒にマンションに向かった。
その後の事は殆ど覚えていない。
気が付いた時には既に、空は明るくなっていた。
僕は、ベッドから起き上がるとカーテンを開けリビングに向かった。
リビングには叔母が朝食の準備をしている所だった。
僕は、ダイニングテーブルの席に座った。
昨日の夜の事を思い出そうとしたが、よく思い出せなかった。
「あら、随分早起きね」と突然叔母が話し掛けて来た。僕は、時計を見た。時計の針はまだ6時半を少し過ぎたばかりだった。ふと、今日の曜日を確認しようと思い、カレンダーを見た。カレンダーの日曜日の所に印が付いていた。
僕が、ぼんやりとカレンダーを眺めていると、朝食を作り終えた叔母が2人分の朝食を運びながらキッチンからダイニングテーブルに来た。
「さて、今日は君に書いて貰う書類があるから」と、言いながら席に着いた。
僕は、ぼんやりとしか昨日の事を思い出せない。だけど、これだけは伝えたいと思ったので、
「あの…。すみませんが、僕には殺しの仕事は向いて無いと思います…。そっ…、それで、仕事を辞める事は出来ませんか…」と、声を震わせながら言った。これで、叔母が辞めさせてくれたら、いいのだが…。
そんな事を思っていたが、僕の考えとは裏腹に、叔母は「だーめ。だってそれ、本心じゃないでしょ」と、叔母は歪んだ笑顔を顔に浮かべながら言った。
「桜哉君も本当は思っているんでしょ。自分がした事は悪い事じゃないって」と更に続けた。
「そんな事微塵も思ってません。何故そう思ったんですか!」僕は慌て声を荒らげて反論した。しかし、
「そぉ。でもそんな事思っている様には見えないけどなぁ」と、更に追い討ちをかける様に言ってきた。僕は、反論するだけ無駄な気がしてきたので、
「…分かりました…」と叔母の言う通りにする子にした。
「本当!嬉しいわ。それじゃぁ、これから共犯者として宜しくね」と、言ってきた。この言葉を聞いた時、背筋に悪寒が走るのを感じたが、僕は至って平静を装い
「そうですね」と返した。
「そう言えば、今日書く書類って転校手続きの書類ですよね」と、僕は話題を変え、叔母に聞いた。
「ええ、そうよ。私が書く所は書いてしまったから、後は桜哉君に書いて貰うのみ」と、叔母は笑って言った。
「所で、僕の転校先はどこなんですか?」と聞くと、叔母は××××高校だと教えてくれた。僕は朝食を食べ終えた後、書類を書き、教えられた××××高校について調べた。
ネットのまとめサイトを見たが、どうやら偏差値が高く、都内でも有名な進学校らしい。ホームページや様々なサイトに校舎の写真が載っていたが、漫画の中でしか見た事の無い様な校舎だった。
こんな校舎なんだ。きっと通っているのも、親が一流企業の社長や上層部の人間の人達だろう。
と、言う事はきっと叔母の抱える財産は想像もつかない物なのだろう。
叔母がこの高校を選んだ事から、きっと叔母は僕に相当な期待を寄せているのだろう。
僕は、パソコンの画面を閉じた。
入学テストまで残り数日、それ迄に出来る事は1つしか無い。
入学テストに合格する為に、少しでも勉強する事、そして、叔母の期待を裏切らない事。それだけだ。
叔母の期待を裏切ったら、何をするか分からない。僕を殺すだけで済むならまだしも、もししの子に手を出されたら…、そこ迄考えたが、変な考えは忘れ様と思い、勉強に取り掛かった。
でももし、しの子に何かあったら、僕はどうするのだろうか。
この答えが見つかるのは、まだ当分先の話しである。