強がりPart2
翌日、僕はいつも通りしの子と一緒に学校へ行った。放課後もいつも通りしの子と一緒に帰った。
そんないつも通りの日常を過ごしている間に2ヶ月はあっという間に過ぎ、僕が東京へ行く日になった。
僕は1人で電車で新幹線の駅に向かうつもりでいた。その方が、寂しさが少し紛れる気がしたから。
そう思い、いつもの電車に乗ろうとした時、後方からしの子の声がした。
「待って!!」と、言い「駅まで送らせて」と言った。
僕は、断ろうと思ったが承諾した。
僕としの子は静かな始発電車に乗った。
「同じ電車なのに、違う電車に乗ったみたいだね」と、しの子は少し眠そうなのを紛らわすかの様に言った。
「うん。そうだね」と、僕はしの子に言った。
しばらくした後、しの子が
「たまには、連絡してね。それから、私の事、忘れないでね」と、少し寂しそうに言った。僕は、「うん。連絡するし、しの子の事は忘れないよ」と言った。
しの子は、僕の返事を聞くと少し嬉しそうに笑った。
僕は、そんなしの子の顔が見れるのも、今日が最後だと思うと少し寂しくなった。
電車が終電に着くと、僕としの子は電車から降りた。
駅のホームから出て、僕としの子は静かな朝の街を新幹線の駅に向かって歩いて行った。
駅に着くと、しの子は「2人で写真撮っても良いかな」と聞いてきた。僕は、「うん。いいよ」と言い、しの子の携帯で、僕としの子のツーショット写真を撮った。
しの子は、「後で送るね」と、少し寂しそうに笑いながら言った。
しの子が言い終えた時、ちょうど僕が乗る新幹線が駅に来た。僕は新幹線に乗ると、しの子は小さく手を振って見送ってくれた。僕も、しの子に手を振り返したが、しの子に見えたかどうかは分からない。
新幹線に乗って暫くした時、しの子から一通のメールが届いた。そのメールには、先程僕としの子が一緒に撮った写真が貼り付けられていた。
僕は、その写真に写っているしの子の顔を見て、東京に行きたくないと思ってしまった。
そんな事を思っていたが、早起きしたためか、眠くなってしまい、気付いたら寝ていた。
僕が目を覚ましたのは駅に着く数分前だった。
駅に着くと、僕を呼ぶ声がしたので、そちらに向かうと、そこには1人の女性が立っていた。
その人はとても美しく、まだ叔母と思うには若かった。
「ようこそ、桜哉君」と、僕を出迎えた。僕はその時、背筋に悪寒が走るのを初めて感じた。この人に気を許してはダメだ。と、僕の本能がそう言ってるのが分かる。
僕は、笑顔を作り「駅まで迎え来て下さりありがとうございます」と言った。
「あら、今日から親子なんだからそんなかしこまらなくてもいいのよ。桜哉君」と、笑顔で言ってきた。
その時の叔母の笑顔は異常な程に歪んでいた。
「それじゃぁ、家に向かいましょうか」と、言って駅の出口へ向かった。僕は叔母について行った。
叔母は駅から出ると、すぐにタクシーを拾い乗せてくれた。
タクシーは僕と叔母を乗せ、東京の中心地に向かって走っていく。
タクシーは大きく綺麗なマンションの前で止まった。叔母はタクシーから降りたので、僕も叔母に続きタクシーから降りた。荷物を受け取ると、叔母と一緒にマンションの入口から中に入って行った。
エレベーターに乗り、上へ向かっていった。
僕と叔母を乗せたエレベーターはぐんぐん上へ向うと12階で止まった。
僕は叔母の部屋に入った時、びっくりした。玄関は広く、そして爽やかな香りがした。それだけでは無く、リビングもキッチンも広い。
叔母はエアコンを付けると、「桜哉君の部屋に案内するから、荷物を持って来てくれる」と言ったので、僕は荷物を持って叔母について行った。
僕の部屋として、紹介された部屋は元々物置だった様だったが、片付けをし、綺麗にした時から使わなくなったらしい。そのため、僕の部屋として使わせてくれる様だ。
「荷物を置いたら、リビングに来て。朝食の準備をするから」と言われたので、僕ははい、と返事をした。
荷物を下ろすと僕は、ベッドに腰掛け部屋を見回した。何か、誰かに観られているような気がしたから。
僕は、少し部屋を見回した後、視線を感じる所へ行き、そこら辺をよく観るとそこには盗聴器らしき物と、盗撮機が設置してあるのに気付いた。
僕は、他にもあるのでは無いかと思い、気になる場所全て探した。すると、部屋の中にはありとあらゆる場所に、盗聴器と盗撮機があった。
僕は、それら全てを外し、リビングに持って行った。
リビングに着くと、
「あら、遅かったのね。朝食が冷めてしまうから早く食べなさい」と、叔母は優しそうな声音で言った。
僕は、笑顔で「そうですね」と言った後、「これは何ですか」と、僕が探せた限りの盗聴器、盗撮機を叔母の前に広げた。
すると叔母は、関心した様な表情を見せ「凄い。全部見つけられたなんて」と、まるで自分で設置した事をばらすかの様な言い方をした。
僕は、その言葉を聞いた時、両親のあの表情を思い出した。
僕が想像していた以上に厄介な人物だと、思った。