強がり Part1
その後、僕はしの子を家へ送ると少し、本屋へ行ってから、自宅へ向かった。
いつもと変わらないはずだが、少し足取りが軽い様な気がした。
僕は、家に入ると台所にいる母に「ただいま」と、言い自室へ向かった。
自室に入ると、鞄を下ろしいつもの定位置に置く。
宿題をやろうと思い、鞄からテキストを取ろうとした時、部屋の扉を叩く音がした。
きっと、扉の前にいるのは父だろう。
扉を叩く音が母より強いし、叩くリズムが母より速すぎる。
僕は、扉を開け
「何か用でもあるの父さん」と、いつも通りの僕の聞き方で父に質問者した。
父は、「ああ」とだけ返事をした後、「今すぐリビングに来なさい」と、いつもより少し、声のトーンを落として言った。
僕は、机の証明を消すと、すぐに、リビングに向かった。
リビングに行くと、ダイニングテーブルの席には、両親が並んで座っていた。
僕は、両親と向かい合う形で席に着いた。
家族3人で居る事は、殆ど無かったし、両親が何を言い出すのか分からないので、僕は黙って座っていた。
すると、父が少し咳払いをし、
「実は、お前を養子に出す事にした」と、言った。
僕は、理解出来ず
「養子って…。本当なの」と、柄にもなく聞き返してしまった。
母は何も言わずただただ俯いていた。
父も少し、顔を顰めた後、「…本当だ」と何時に無く低い声で言った。
僕は、2度も聞き返すのは馬鹿らしいと思ったので、何も聞き返さず、
「そうか。分かった」と、いつも通りの言い方で返事をした。
そんな僕の受け入れように、両親は驚いたのか、ただただ口をポカンと開いていた。
「所で、僕は誰の養子になるの」と、聞くと
一瞬時間が止まった様な雰囲気になった後「東京に住んでいる姉さんの元に養子として出す」と、父は言った。
父の姉は会った事が無いので、どんな人物か分からないが、両親の顔色から察する限り、かなり厄介な人物なのだろうと予想した。しかし、僕は至って平静を装い、「所で、いつ頃向こうへ行くの」と、聞くと、母が少し慌てた口調で「2ヶ月後、2ヶ月後に行くの」と言った。
僕は「2ヶ月後だね。分かった、準備しとくよ」とだけ、返事をして自室へ向かった。
事実に入ると、僕は真っ先にしの子に電話した。
電話でそのまま伝えても良かったし、メールで送っても良かったのだが、僕はしの子に直接言いたかったので、電話でしの子を近くの公園へ呼んだ。
僕は、両親にコンビニに行ってくると嘘をつき、公園へ向かった。
夜の住宅街は昼間よりも更に、閑散としていた。
僕が、公園に着くと既にしの子が来ていた。
「どうしたの?こんな時間に呼び出して」と、しの子はいつも通りの優しい声で聞いてきた。
僕は、何て言ったらいいのか、少し考えたが正直に言う事にした。
僕は、しの子に2ヶ月後東京の叔母の元に養子として出される事を言った。
しの子は、僕の話を何も言わずに聞いてくれた。
「そっかー。それじゃぁ、遠距離恋愛になっちゃうね。なんか寂しいなー」と、しの子は僕が話し終えると、僕に顔を見せない様にしながら言った。
僕は、しの子の発言を聞き驚いた。
僕の勝手にしの子と別れようと思っていた。しかし、しの子はまだこの関係を続けるつもりでいたんだ。
その後、僕はしの子を家まで送り届けた。しの子は、「ありがとう。それじゃぁ、また明日」と言い小さく手を振った。
僕は、しの子が家へ入った事を確認すると、僕は自宅へ向かった。
自宅へ帰ると、既に夕飯は出来ていた。
両親はもう食べ終えた様で、父はリビングにはいなかった。
僕は、夕飯を食べ終えると自室に向かった。自室ではやる事は殆ど無かったので、宿題をやる事にした。いつも通りなら、そんなに時間は掛からないはずだったが、今日は中々進まず、かなり時間が掛かってしまった。
宿題を終え、風呂に入っている時も風呂上がりに本を読んでいる時も、何となくぼーっとしている。
それと、公園で会った時のしの子の発言が頭から離れず、ずっと頭の中をぐるぐる回っている。
僕は、この気持ちの正体に何となく気付いていたが、僕は気付いてない振りをして寝た。