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君と最後に選ぶ言葉  作者: 廣田
恋愛ごっこ
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いつも通りの日常

某月某日午前6時00分

いつも通り、目覚まし時計のアラーム音で目を覚ます。

いつも通り、高校の制服に着替え、リビングに向かう。

リビングのダイニングテーブルには既に朝食が並んでいる。今日の朝食は、白飯と目玉焼きと夕飯の残り物の味噌汁だ。

僕は箸を取り、手を合わせ、小さく「頂きます」と言い、白飯を少し箸で取り、口に運ぶ。口の中で米粒を噛み唾液と共に飲み込む。そして、味噌汁を少し啜り、目玉焼きに手を伸ばす。いつも通りの僕の食べ方で朝食を食べ進めていると、弟が部屋から降りてきてダイニングテーブルの椅子に座る。そして、箸を取ると、何も言わずに食べ始める。

これがいつも通りの朝だ。


そうこの日までは…。


食べ終えると、僕は弟より少し先に家を出て学校に向かう。見慣れた道をいつも通りのペースで歩き、駅に向かう。駅に着くと、クラスメイトの薬袋しの子に会った。

しの子は僕に優しく微笑みかけ「おはよう」と柔らかい声で言った。僕はしの子に小さく「おはよう」と返す。

しの子は少し微笑み、「今日も桜哉君は遅いんだね」と少し笑いながら言った。桜哉は僕の弟の事だ。「うん。でも、すぐ来ると思うよ。」と、僕が返すと、しの子は少し笑い「そっか」といつも通りの返事をした。

電車が来る2分前になり、桜哉がホームに来た。桜哉はしの子に向かって「おはよう」と言うと、しの子は僕に笑いかけた時よりも嬉しそうな笑を浮かべ「おはよう」と返した。

2人はその後も親しげに話していた。

僕は2人の側にいるだけで、会話には入らない。と言うより、入れないと言った方が正しいと思う。

だってしの子は桜哉が好きで、桜哉はしの子が好きだから…。だから僕は2人の会話には入らない。

だって、その世界には2人だけしか存在してないのだから。

少し経つと電車が来たのでいつも通り電車に乗る。ここは田舎だからか、朝の電車は空いている。

乗客は高校生か私立中学校の生徒かスーツに身を包んだサラリーマン風の人達位だ。

僕は2人とは少し離れた位置にある席に座る。2人は、電車の中でも親しげに話している。僕はそんな2人を横目に、イヤホンを耳に入れるが、曲は流さず聴いている振りをして、窓の外の景色を見る。

電車はいつも通り走る。窓の外の景色は電車の速度に合わせ、流れている。こんないつも通りの光景を見ていると、少しだけ僕がこの世界に存在しているのだと言う事が感じられる。

ふと、しの子の方を見ると、しの子が微笑みかけて来た。

僕は少し照れた様に即座に視線を手元の携帯に落とす。

僕の携帯の画面には、高校の入学式の時に撮ったしの子の写真が写っている。僕はしの子の写真を見た。そしてまた、僕から少し離れた位置に座る2人を見た。

もしも、あそこで話しているのが桜哉じゃなくて、僕だったとしても、しの子は桜哉に微笑みかけた時の様な笑顔で僕はにも微笑んでくれるのだろうか。そんな事をふと考えてしまった。そんな事考えても無駄だと言う事は分かってる。


だって、しの子は桜哉が好きだから。

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