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Virus buster  作者: 高杉 亮
2/2

能力

 自室のベッドの上で俺は目覚めた。


「葵!大丈夫か?」


「あ、父さんか。どうしたの?」


 俺の父親である三倉 光一は心配そうな顔で俺をのぞき込む


「急に倒れたから心配したぞ。具合悪いのか?」


「いや。俺、どれくらい倒れてた?」


「ついさっきのことだから1時間くらいだ。」


「1時間。。。」


 おもむろにスマートウォッチに目をやると時刻の表示と共に新規情報を表示するポップアップが出ている。

 開いてみると新しく登録されたアドレスのようだ。


「ということはやっぱりあれは夢じゃなかったんだ。」


「どうした?」


 光一が心配そうに尋ねてくる。


「父さん。心配しなくていいよ。身体は大丈夫だから。それよりちょっと教えて。現代の人達は電脳空間に入ることが出来るんだよね。」


「ああ、いろいろと制限はあるがな。でもお前にそんなこと教えたか?」

 光一は口をつぐんだ。


「もしかしてお前は電脳空間に入り込んだっていうんじゃないだろうな。」


「そうだよ。俺はさっきまで電脳空間にいた。助けてくれた女の子が教えてくれたんだ。」


「しかし、どうやって。。。電脳空間に入るにはデータ適正としかるべき手順が必要だ。何も知らないお前が簡単に入れるほど電脳世界は安全じゃない。」


「俺も危うくあっちで死にかけたよ。しかるべき手順って言うのはどういうものなの?」


「普通は心をデータ化する訓練を積むことで自由に世界を行き来すること

が出来るのだが。。。」


 またしても口をつぐんだ父親に戸惑いつつ尋ねる。


「倒れる前の記憶は曖昧だけど、未来のネットワークがどうなってるのか調べてたところだったと思う。」


「おそらくお前はデータ適正が常人より高く、既に訓練を積んだ状態だったのだろう。その状態でネットワーク。要は電脳世界のことを考えたことが世界に入り込むきっかけになったのだろう。」


 普通の人間が訓練して手に入れるものを何も知らない俺が持っているなんて到底信じられない。

 こわばった父親の顔が本心を隠しているように見えるが、実際にあの世界の記憶と証拠が残っているので疑うのは止めておいた。


「どちらにしてもあの世界に行くきっかけはその端末だ。これには勝手に世界とお前を繋げないようプロテクトをかけておく。」


 そう言って仮想キーボードを目の前に表示し、カタカタと音がしそうな軽快さで文字列を打つと俺の端末、スマートウォッチの画面に「完了」のウィンドウが表示される。


「さすが天才エンジニアだね。」


「まあな。もうあの世界に行くことはないぞ。危険だからな。」


「分かってるよ。もうあんなおっかない経験はごめんだね。」


「それじゃ俺は仕事に戻るぞ。」


 不意に俺の端末から通知音が届いた。


「あいつか。。。とりあえず経緯はわかったからメールで説明しとくか。」


 届いたメールを開いてみるとひとこと「助けて」というメッセージが届いていた。


「何かあったんだ!」


「知り合いか?」


「うん。向こうで俺を助けてくれたんだ。父さん早速だけどプロテクトを解除してよ。早く助けないと!」


「まて、お前が行って何になる。あの世界にいたってことはバスターだろ。なら仲間にも連絡してるんじゃないか。」


「いや仲間に連絡できるなら俺にメールを送る必要はない。なにか俺にしか助けを求められない事情があるんだ。助けを求められているのに無視することなんてできない。ましてや彼女は俺を助けてくれたんだ。」


 光一は一瞬逡巡したような顔を浮かべたが、何かを決意したかのように眉間に眉を寄せて口を開いた。


「いいだろう。お前を信じる。いいかあっちの世界に入ったらコントロールと叫べ。すると今使えるコマンドが出てくるはずだ。その中から直感で使えそうなものを選択してコマンドを詠唱しろ。武器の使い方は使いながら学べ。さあ手おくれになる前に行け!」


 やけにあっさり許可したなと思ったが、こっちとしては好都合なので礼を言っておく。


「ありがとう。」


 俺の頭は早速仮想世界に入ろうとしてフリーズした。


「ってあれ。どうやって入るんだ?」


「さっきのように仮想世界を思い浮かべて、インサートボディと言え。ベットに寝てからにしろよ。また倒れられたら困るからな。」


 言われた通りベットに横になる。


「最後に!ウイルスを倒すか攻撃圏内から出るまでログアウトはできないからな。まずはその子と逃げることを考えろ。気を付けろよ。。」


「分かった。インサートボディ!」


 意識が白く遠ざかる中、かすかに光一の声が聞こえる。


「お前はあの世界ではきっと強い。。。友達を助けてやれ。」


 そうして俺の意識は途絶えた。

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