1話
大学入学を期に田舎から上京した俺、浅井 弓比良は都会の魅力に飲まれて、ギャンブルや風俗にがっつりハマってしまい。
大学中退からのフリーターになってしまった俺はだらしがない生活を送っていた。ある日友人にヤミ金の保証人になってしまい。
案の定、借金を背負い黒服に追われる毎日を送っていた。
いつものように黒服から逃れようとビルから隣のビルへと飛び込んだ時、足を滑らせてそのまま10メートル程の高さ落ちてしまった。
「やべぇ!!」
口から漏れた時にはもう既に遅く頭から地面へ落ちていった。
びっしゃ。
全身が冷たいものに飲み込まれる。不思議と痛みもなく無意識ながらもこの冷たい感触は自分の血だ自覚する。
しばらくすると田舎に住んでいた頃の川のせせらぎの音や心地よい鳥の鳴き声が聞こえる。懐かしい。
まだ子供だった頃に祖母の元に住んでいた田舎暮らしを走馬灯のように思い出す。
感傷的ななりながらどんどん呼吸が苦しくなった。
まるで水の中にいるような感覚だった。体がこの空気を求めて勝手に動き出す。
「あれ…俺…立ち上がってる?」
てっきりビルから落ちて全身血だらけになってると思いきや、無傷…むしろ全身水浸しだった。それからあまりの眩しさに目が眩む。さっきまで夜だったのに
今ここにいる場所は太陽が見えた。
それに周囲を見てみると都内のビル街とは違い、次に自然に溢れた場所だった。
「ここは…どこだ?」
完全にパニック状態になりながらも周りをさらに見渡す。蒼天な空にいつもより輝く太陽それに見た事のない
様な森林と昔住んでいた田舎を思い出す川。
「これっていわゆる異世界ってやつか?」
最近、流行り異世界へ転移もしくは転生…現実世界で死んだりとか死にそうになったら起きてしまう展開の
ストーリー…。
「ついに…俺にも来たのか…!異世界もの!」
ここ最近いい事がなかった。大学生活でも最初は頑張ったんだけどずーと田舎暮らしの反動で夜の遊びに
どっぷりハマってしまってカイジみたいに借金生活になっていた。
「さあーってまずは街に向かうか…ここでいきなりヒロインと出会う流れがまあ、王道だなー」
変にテンションが上がりつつも俺は川抜け出すと上流の方に滝があった。その滝の下は流れが緩やかになっていた。
そこでは全裸の女性が水浴びをしていた…全裸がだった!全裸だやっほい!
「…あ」
彼女と目が合う。
肌が白く髪が銀髪で凛とした綺麗な顔だちで自分の直観的には年齢が近いように感じた。あちらも結構驚く表情をしていたが
そのまま表情は最初に見た凛とした涼しい顔に戻っていた。この人がヒロインなのかもしれない!
「よっと」
銀髪の女は川を出て、近くにある布で体を吹きながら俺に話かけてくる。
「あんた、名前は?」
不思議と言葉が分かる。日本語とか喋り方ではないのは確かだ。
「お、俺か…?浅井、浅井弓比良って言うんだけど…ってあれ?」
そして俺自身も覚えのない言葉を話している。
違和感を覚えつつもこの空気は気まずかった。いきなり身知らずの男に全裸を見られたのだから、
ひとまず軽くコンタクトを試みる。
「えーといい天気ですね」
まずは最初は挨拶からだ。銀髪の女は空を見上げている。今、心地よい太陽の光が濡れた体そして髪を乾かしてくれそうだ。
とても気持ち良さそうだ。これなら許してくれそうだろう。その為俺は全力で微笑みを彼女を向けた。
すると彼女も微笑みで返し、右腕の人差し指をこちらに向けて。
「フレイムショット」
俺の右頬が一瞬で熱くなる。まるでナイフで一直線に切られたようにそれと同時に後ろから強烈な爆発が
した。思わず振り返るとさっきまであった川に大きなクレーターのような穴が出来、さっき泳いできた川魚も水と一緒に落ちてきた。
「ええ、そうね。いい天気ね」
「そ、そうですね。なんか魚とかも降ってきてるけど…」
今分かっている事は銀髪の女の右腕の人差し指から何かが放たれ後ろから確かだった。
「次は当てるわ…きちんと貴方の心臓に」
「ま、待ってくれよぉ!確かにいきなり全裸ちょっと見ちゃったけどさ!胸は小さいけどへそ周りのくびれからその下のプリっとしたお尻はすげえ良かったけど!これはほんの一瞬で起きて終わって事故だから!!」
「安心しなさい。私の美しい体…いわゆる全裸を見たんだし死刑決定よ。って一瞬でめちゃくちゃ見てるじゃない!」
下着だけ来て銀髪の女は怒った顔でこっちに迫ってくる。
「だから名前だけ覚えておくわ。明日忘れるけど…。あ、ついでに言っておくけど私、男より女の子の方が
好きだからさ。だから容赦なく男殺せるのよね。男基本嫌いだし」
「いきなりのカミングアウトありがとうございます!!くそ!これなら女の子に転生とかの方が良かったのに!」
「因みにこれ世間的には秘密になっているの…だからさ…知られたからには殺さないとならないのよねー」
「それ完全に俺、罪ないですよね!完全に不可抗力ですよね!」
「まあ、そういう事だから…まあ、あんた面白そうだから記憶なくなるくらいですましって…」
銀髪の女は言葉を辞め、俺に手が取れるくらいまで近づいてくる。
「な、なんだよ?」
「ちょっと左手を出しなさい」
大人しく左手を出すと銀髪の女は左手を掴み食いつくように見ている。
「…何これ…見たことない…レジェンダリーコードってわけでもないし…エクストラコードでもこれは見たことないわ…」
俺は自分の左手に見た事ない文字が書いてある事に気が付いた。
「なぁ!?なんだよ!これぇ!?」
俺は左手を川に突っ込み必死に消そうとする。
「無駄よ。コードは消えるものじゃないから」
洗っても洗っても消えない。まるで入れ墨もしくはタトゥーの様に感じた。
「マジかよ…これなんか悪いものとかあるのか?病気になるとか呪いとかあるとか…?」
「大丈夫よ。むしろそれはあなたの生き方を示しているの」
厳密に言えば左手の甲に文字が刻まれた。日本語でもないし、英語でもない。だけど俺にはその文字が読めた。
「調停者?」
「あら、あんたそれ読めるのね」
「なあ、ここはどこなんだよ?信じてもらえないと思うけど…俺…ここ世界の住人ではないんだ」
真剣な表情で、俺は銀髪の女に告白する。きっと驚いてくれるだろ…この流れ俺が別世界から来たものとして暖かく迎えてくれるだろ。
「ああ、知ってるわよ。あんたみたいの前に一人世話した事あるしね。事情は知ってるわ。しかも女の子だっからめちゃくちゃエッチ…じゃなくて大切にしたわ」
「本当に女の方が好きなんですね・・・」
うん。こいつ、相当やばい奴の分類ぽい。
「と、とにかくあんは何も知らないでしょ?仕方がないからしばらく面倒見てあげる。まあ、まずはついて来て」
「ああ、よ、よろしく…えーと名前は?」
彼女は笑顔で右手を差し出す。
「私はティファ・ユージュ。因みにまだユミヒラだっけ?貴方の事許してないから命は常に握られてるおもってね!よろしく!」
「ああ、…よろしく」
俺は異世界に来て初めて会ったのはヒロインではなく俺人生にとってのラスボスであるのはこの時の俺は知る由もなかった。