体育祭編3
よろしくお願いします。
➖体育祭当日
「お疲れ様です」
「いいんちょ、お疲れさん」
「すごかったですねーシングルス」
「さすがⅫ委員の中でも最強と言われる人だ」
「圧倒的に優勝してしまいましたね!」
デュエルシングルス優勝
伝通院真木人
「超肉体活性能力、はじめて見たけど凄まじです」
「あぁ、あんなん対処のしようが無いよ」
筋力強化
反射スピード向上
だけでなく
回復と再生まで行う
本当の化け物だ。
ピンポンパンポーン
「ただいまよりぃぃエスケープのぉぉ参加者整列をぉぉ行いますぅぅ参加する生徒はぁぁ所定の位置にぃぃお並びくださいぃぃ」
「オシっ!出番だないいんちょ」
「頑張りましょうね!」
「きたっちー」
「彩乃ー今日はお互い頑張ろうね」
「ふふふ、きたっち!C組にはウチの最終兵器佐名がいるんだよ!簡単には負けないよ」
「むーそれは手強そうですね、春市くんチームワークで何とか逃げ切りましょう」
「おう!頼りにしてるぜ!いいんちょ」
「甘い甘い! 目にもの見せてあげようね! 佐名!」
「…」
「佐名?」
何故かボーっといいんちょの胸元を見ている
変な沈黙に気づきハッ!と顔を上げた。
不意に佐名を見ていたら目が合った
……晩御飯の時間だからとおもちゃを取り上げられた子供みたいな不安なのか寂しいのかわからない表情だった。
心配になる
のも束の間、目があった瞬間にギラリと光りが宿り
「負けないわよ!」
とプレッシャーを掛けてきた!
「お、おう」
意外に元気そうで安心した。
今年のエスケープは
赤組 墨俣、源道寺チーム
白組 北地 、春市チーム
青組 佐名、彩乃チーム
黄組 印旛、奥戸チーム
緑組 松谷、鳳チーム
先にダンジョンから脱出した順
に上位から20p.15p.10p.5p.0pt
となる、ちなみにリタイアも0ポイント
俺たちは最下位だけは避けたいという完走
目当ての戦略になるが、強い能力者がいる
チームは他を全滅させてポイントに
差をつけるという戦略を実行してくる。
制限時間は60分タイムオーバーも
もちろんリタイアになる。
いいんちょと二人でクジ引きで決まった東入口からダンジョンに入る。
「時間内に脱出する!シンプルに逃げ切ろう」
「そうですね!」
「エスケープ開始ぃぃ5秒前ぇぇ…3…2…1、スタートぉ!!!!ガガッ、ピーー」
安物のスピーカーがハウリングを起こす。
いよいよスタートだ!
〈残り60分〉
入り口のドアが入室と共に閉まる
まず最初の部屋は正方形の部屋だ
10m四方になっていて日常生活の建物に
対してやたら天井が高くなっている。
部屋の中には何もない
金属の壁がただの箱の形を成しているだで
窓もドアもない。
「いったいどう先に進みましょうか?」
「まわりを、調べてみよう」
見渡す限り壁
金属製で床も壁も全てシルバー
どこを見ても発見はない
「いきなり手詰まりですね」
「能力で何とかしろって事か?」
「私の能力で全ての壁、天井を触ってみます、春市くんは床を見てもらっていいですか?」
「わかった」
いいんちょは人差し指から糸を出した。
この能力の詳しい使い方はわからない
そもそも能力とはあまり人に開示する事は避けたい物。
なぜなら強い弱いに関係なくその性質や特性がバレてしまうだけで大きなデメリットになる、同級生の能力を詳しく知らないのは珍しく無い。
「…いいんちょ、その能力について大まかで良いから教えてもらえるか?」
「私の糸の特徴は切れる事は無いくらい硬い事、自由に動かせる事、あとは太さを蜘蛛の糸から私の人差し指の太さまで変化させる事が出来きます」
「なるほど、教えてくれてありがとう」
「春市くんは信頼してますからね、お礼なんていいですよ」
「? それはありがたいけど、そんなに信頼される程の人間じゃないと思うよ」
「言うと思いました、春市くん!貴方は自分の優しさは全て偽善と思っています無意識にですけどね」
「そんな事はないよ」
「クラスの中でも誰かが困ってる時、必ず何かを行動しています、誰にも気づかれないようにひっそりと」
「たまたま、そう見えただけだよ」
「私知ってるんですよ、春市くんの能力が学校中にバレた時の真相」
こちらを真剣な眼差しで見つめてくる
「クラスの子が先輩からいじめられてた時、標的が自分になるようにわざと派手に能力の事をバレるようにしてましたよね」
「たまたまだって」
「高生くんに確認しました」
「あのおしゃべりめ!」
「クラス委員長の"周り見る力"舐めたらダメですよ」
「わるかった、降参だ」
「ふふっ!やっと認めましたね」
「いいんちょには敵わないな」
いいんちょは何か嬉しそうだ
「床は"外せる"場所は無かったよ」
「天井も糸で触る程度では何も変化起こせないみたいです」
「糸は壁にくっつけたり出来るのか?」
「はい、基本特性は蜘蛛の糸をイメージしてもらって構わないです」
「天井と壁の境目辺りに何本か切り離した糸をぶら下げる事は可能か?」
「切り離した糸は7分くらいしか持たないですが」
「十分だ」
天井の端に30cm程度で割り箸くらいの太さの糸を数本足らす。
向かって右側の糸だけが揺れている。
「あそこから空気が流れているな」
「という事は他の空間につながってはいますね」
「あそこら辺を糸で触って隙間があったらそのまま差し込んで欲しい、どこに繋がってるか知りたい」
「わかりました!それからどうしますか?」
「構造を理解出来ると外せる可能性が出てくる」
「へー、そういう能力なんですね、ですが良くどこかに空気の入り口があると気づきましたね」
「入口が閉まる時に気圧の上昇を感じ無かったからな、密閉度が高いとドアは閉る時に独特の音がするだろ?」
「確かにそうですね」
話しながらも、いいんちょは糸で天井裏のスペースを確認している。
「いいんちょ、隙間の奥はどうだ?」
「天井の厚さは20cmくらいその先は空間があります!」
「左右は?」
「左右は行き止まり、上にしか抜けられないようです」
「なら登って天井に触ってみる」
「それは無理です、糸は切れないですが人の体重を支える粘着力はありません」
「糸は動かせるんだよな?先っぽを玉結びに出来るか?」
「それは出来ます」
「何本も糸を壁と天井の隙間から通して、その奥で束ねて縄を編んで玉結びにする、それを掴んで壁伝いに足を着いて登っていけば行けると思うが、可能か?」
「出来きます、しかし最初の糸から消えて行きますから早く登らないといけません」
「大丈夫だ5分で終わらす! だから出来るだけ早く作って俺が登ってる間にもう一回同じ物を作っておいてくれ」
「春市くん人使いが荒いですね、しかし良いアイディアです」
「良し頼む!」
いいんちょが手早く作業に入る
そして垂らしてくれた糸の束を鷲掴みにして
登り始める。
案の定、天井は外せそうだ!
天板を外す!
バゴ
いいんちょの糸はさらに上に続き2階の床と天井裏スペースの壁のつなぎめに入り込んでいる。
床を外したら俺も落下してしまう。
天井裏スペースのまわりを見渡すと柱が何本かある!ビンゴだ!
「いいんちょココに柱があるから今度はここに糸を巻きつけてくれ!」
いいんちょの糸から糸を消える前に渡り歩きようやく上の階の床に触れる事が出来た
迷わず外して上の階へ抜ける
「おっしゃー登れた!」
抜け先は通路だ
いいんちょを糸を使って引き上げて
通路を進む
「春市くんは他人の能力を活かすのも上手いですね」
「自分の能力が無いおかげでそれが上手くなったのさ」
「(私が思ってる以上に凄い人かもしれません)」
「先を急ごう!いいんちょ糸をまた天井から垂らしてくれ」
糸の揺れを見ながら風上の方へ進んで行く
「空気が流れてくる方へ向かえば外に近づけるはずだ」
「なら右側ですね」
通路を進んで行くと
奥から暗闇が進んでくる
俺といいんちょはすぐ暗闇に
飲み込まれた。
「え?停電ですか?」
「違うな」
まったく何も見えない
上下左右がわからなくなるほどの真っ暗闇
咄嗟に手探りでいいんちょの手を掴む
「これは能力だ」
➖通路奥の青い部屋
「いきなり白組と鉢合わせるなんてね」
「油断しない方がいいですわよ」
「すでに先手を取っている僕に対してその発言をするなんて千加ちゃんは"欠陥くん"をかなり気に入ってるんだね」
「何をおっしゃてますの、ただの日常会話ですわ」
「そうなんだね、心しておくよ」
「わたくしは見るだけでよろしいのでしょ」
「お願いするよ、これから欠陥くんの能力を見て欲しい」
「もうすでに見ていますわ、あと何度も申し上げますが、源道寺という家の名で呼んでくださいますかしら」
「わかったよ源道寺さん、じゃあ行くよ!」
〈残り44分〉
ありがとうございます。