体育祭編2
よろしくお願い致します。
カラスが一匹、空から消えた。
3年A組の教室では
墨俣一夜はにこやかに
クラスメイトと話している
「僕は[エスケープ]に立候補するよ」
「え、一夜くんが出るなら私もでたいな?」
「えー!ずるいわたしも出たい!」
「一夜はもてるなぁ〜」
「エリート中のエリート、Ⅻ学生
統括委員だからな」
「みんなありがとう。それでは
どうやって決めようか」
「一夜くんは誰と組みたいの?」
「そうだね一夜くんの意見も聞きたい!」
「…本当は同じクラスのみんなと組みたいのだけれどスペシャルフォース枠を使ってもよいかな?」
「「え?」」
「赤組のスペシャルフォース決まってなかったでしょ、申請だしたくて」
「えーやだー」
「つらみーー」
「みんな本当にごめんね、だけど、どうしても
やらなきゃいけないⅫ学生統括委員の役割もあるんだ、本当に寂しいけどわかってくれるかな?」
「わかった、じゃ代わりに今度デートして」
「は!ずるい!わたしも」
「ありがとう約束するよ」
スペシャルフォース枠
体育祭で学年を超えて競技チームを組める枠が各組ごとに3つある。能力的に効果的な相性のものがいる場合でチームの勝利に必要と判断した場合同じ組、すなわち赤組なら赤組の別の学年から人を選びチームを組む事が出来るシステム。使ってもよいし使わなくてもよい、デュエルのダブルスで使われる事がほとんどだ。
「でも、エスケープでスペシャルフォース枠の申請珍しいよね。通るの?」
「だからデュエルが良かったんだけどね」
「デュエルには出ないの?」
「あぁちょっとやりたい事があるんだよ」
「ふーん、ところで誰と組むつもりなの?」
「源道寺千加さんだよ」
「えーやだぁ、一夜くんおっぱい女に惑わされちゃやだよ」
「千加ちゃんはそんな子じゃないよ」
「えーー」
「かばってるー」
「つらみー」
➖2年C組
「佐名さ、最近メイク変わったよね」
「え?」
「だってファンデだけ超適当に塗ってる感じだったのに最近は下地つくってファンデ塗ってるでしょ」
「よくわかるわね、すごい」
「わかるわよチークも、うっっっすらだけど使ってるでしょ」
「うん」
「佐名、もとが良いんだからもっとメイクもオシャレも楽しみなよ、凄く可愛いんだから」
「な!そんな…あ、ありがとう」
「んーー!!佐名は可愛いのぅ!こうしてやる
うりうり♪」
「もう、ふざけてないで出る競技決めちゃおう」
「佐名はデュエルもう決まってるじゃん」
「そうだけど彩乃は決まって無いじゃん」
「そうなんだよねぇ、わたし何にでよう…ん!チャットだ、お!きたっちは[エスケープ]かぁ、しかもあの春市くんと!?すごいなーきたっちも能力そんな強く無いから大変だろうなー」
佐名はピクリと顔を上げた
「!!……彩乃、"きたっち"って?」
「中学時代の同級生で2Bのクラス委員長だよ」
「まぁ知らない人ばかりと戦うの緊張するからわたしも[エスケープ]にしようかな、脱出ゲームみたいで楽しそうだし」
「わ、わたしも一緒に出ようか?なー?なんて」
「え?なんで?」
「あ、ほら、だ、脱出ゲームって楽しそうだしやってみたいかなー?なんて」
「佐名…喋り方ヘンだよ」
「そ、そんな事ないよ、普通だよ」
「うちのクラス、デュエルに佐名の代わりに出れる子なんていないよ?」
「大丈夫だよ佐名さん時間被ってないからダブルエントリー出来るよ!」
「え!委員長、マジ!なら佐名とのチームは頼もしい!一緒にエントリーしようか」
「そうだね、立候補してもいいかな?」
「わかった、佐名さんと彩乃ちゃんエスケープにエントリーしたいんだけどみんなOK?」
「佐名が出てくれる競技増える分にはいいんじゃない?ウチらの勝つ可能性あがるし」
「了解ー、一応それで進めとくね、でもどうしてエスケープに出たいの?彩乃ちゃんの能力ってサーチ系じゃないし、そんなに得意には思えないけど」
「委員長スルドイなー、実はB組のきたっちと春市くんが出るって聞いて、なんか知り合い居ると気が楽だし勝てそうかなーなんて思ったんだよねー」
「きたっちてB組のクラス委員長の北地さん?」
「そうそう"オナチュー"なんだよ」
「そうなんだ、でも彩乃ちゃん手強いかもしれないよ、北地さんと春市くん結構仲良い感じだし、何か能力的相性を使った秘策があるのかもよ」
「へ、へぇー、北地さんと春市は仲良しなんだね、そうなんだ、ま、特別は興味ないけど、へー」
「委員長会議とかで会うけど北地さんはすごいよ、誰にも分け隔てなく真っ正面から人と接するタイプ」
!!
出会った頃の春市に対する自分の上から目線の態度に思い当たり、佐名は何かモヤモヤした気持ちになった。
多分、妬みだ。
自分に出来なかった事が出来てしまう女の子に佐名は妬みを感じていた。
「春市殿は本当にしょうがない御仁であります。」
映研部部長がやれやれといった身振りでため息まじりに語りだした。
「なんで?」
「委員長殿、彩乃殿ならわかるでありましょう春市殿のまわりにいる女の子の特徴が」
「いや、まったくわからないよ」
「そもそも春市くんあんまからみ無いしぃ」
「??」
はぁーーーと大袈裟に部長はまたため息をついた
そしてカッ!と目を見開き声を上げた!
「源道寺千加、馬来田朝七、北地木乃香!全てFカップ以上の逸材とばかり交友関係を結んでるんでありますよ!!!」
「なにそれーバカらしい、たまたまでしょ。きたっちは確かに中学から目立ったけど、男子ってそんな事ばっかり言ってんじゃんサイテー」
「みんながって訳じゃないと思うよ」
「春市殿の人脈は狙ってるとしか思えないでありますよ!」
「いや、さすがに偏見だと思うけどね」
「では聞きますが、そんな偶然ありますでしょうか?いや無いであります」
「それだと誰にも聞いてないって!」
「なんでちょっと泣いてんのよ!」
「羨ましいのであります!!!!!」
「佐名さん彩乃ちゃん、みんながこうじゃないよ」
「別にいいけどねー男子ってそういう生き物なの知ってしー、委員長もそんな事言ってさぁ実はきたっちが大っきいの気づいてたんでしょー」
「え、あ、いや、その大きいとかじゃなくて、そのとても魅力ある子だなって思うよ」
「その魅力に"大きさ"が関わってる割合は0%?」
「ゼロとかどうとかの問題じゃないでしょ!」
「あー!委員長が誤魔化そうとしてる〜、佐名もなんか言っ……」
メキッ!!
「…っさくて、…るかったわね」
「え?なんて?」
ギチっ!机が軋んでいる
「ヒィ!!!」
「さ、佐名?」
「なに?」
すーっと顔を上げた佐名の瞳には
まったく光がない暗くくすんだ黒だ。
「っ!!!!!」
「彩乃」
「は、はい!!!!」
「…スケープ、…っ対勝とうね」
声は超小声で震えいる
耳では聞きとり辛いのだけど
彩乃は心にビンビン伝わってきた。
「うん、そうだね」
「春市殿はエスケープできるでありましょうか?」
「ハハハ、ちょっと、わからないね」
➖2年B組
ゾッ!!!!!
「春市くんどうしたの?急に振り返って?」
「わりぃ、何か殺気が」
「殺気なんてリアルで感じること無いでしょ、漫画の見過ぎですよ」
「あぁそうだな」
➖職員室
「先生、頼まれていた資料ここに置いておきますわよ」
「おぉ悪いな源道寺」
学年主任の山田先生がぶっきらぼうに応える
カラスがフッと源道寺の肩にとまる
「先輩ですか、何のようなのです?」
カラスが喋る
「スペシャルフォースを組んでエスケープに出て欲しい」
「イヤですわ」
「君の協力が必要なんだ」
「目的は何ですの?」
「確かめたい事があるんだ」
「あなたがご自分で確かめたらよろしいではないですか」
「2年B組の春市くんの能力を君に見てもらいたい」
「は?なぜですの」
「理由は今は言えないよ、報酬は出すからよろしく頼むよ」
「報酬なんて入りませんわ」
「君が一番聞きたい情報のヒント、ならどうかな」
!!ピクッと源道寺のまゆが動いた
「本当、交渉がお上手ですのね」
「まさか君を相手に交渉なんておこがましい、取引を提案しただけさ」
「ふふ、乗せられてあげますわ」
「ありがとう千加ちゃん」
「以前から申し上げてますけど、わたくしには源道寺という家名がありますわ、そちらで呼称してくださるかしら」
「わかったよ源道寺さん」
「なるほど、そう来るか。お前ら青春してるじゃねぇか」
山田先生が愉快そうに笑った。
読んでいただきありがとうございます。
読んでくださる方がいると知って
凄く嬉しいです。