体育祭編1
よろしくお願いします
結局、例の動画の撮影は酷かった。
Fカップの胸部を見ているつもりは
無いがいつのまにか視線が誘導されている…
それに気づいた佐名に光りの槍を
突き刺される。
源道寺は面白がってわざわざ
俺の前に来てジャンプしたり
前屈みになったりと
やりたい放題
だが、おかげで
映研のみんなの士気は
上がりぱっなしだった。
チーム一丸となり
映研が青春の全てをかけた
不正チップ撲滅キャンペーン
の動画はネットで
あまりのクオリティの高さ
から話題になり
タレント源道寺千加のサプライズ
水着姿も相まって爆発的ヒット動画
として注目を集めた末に
広告映像作品コンテストに
出品する事になり
見事、入賞したりした。
いまや街中のオーラビジョン、SNS、また
プロジェクションマッピング等で流れまくり
佐名も朝七も一躍、時の人となっていた。
一方で俺は毎日佐名の監視護衛役の
act.という方に帰宅のタイミングだけ
連絡入れていた
グループワーク期間中、特に襲撃もなく
無事に学年主任の"お願い事"も達成した。
全てが終わり
俺と高生は本当に平穏な
日々を過ごしていた。
➖2年B組教室
「はい!春市くんぼーっとしない!」
「え、あー、うん」
「話し聞いてないですね」
「えー、あ、聞いてるよ」
「もう!戻ってきてぇ!」
学級委員長の北地木乃香が教壇から何やら不服を申し立てている。
「いいんちょ、ダメさ春市はほっておいて
話しを進めた方が賢明さ」
「高生くん、でも体育祭の役割決めだよ」
「ウン、オレ、ガンバル」
「本当にどうしちゃったの」
「Ⅻ統括委員2人に心と身体、交互に圧力を
かけられた結果さ」
「何ですか?その地獄」
「映像研究部の夢を叶えるために
生け贄となったのさ」
「でも、いいの?春市くん勝手に出る競技決まってしまって」
「あぁ、いいんちょ、それは大丈夫だよ。能力的に役に立つことまず無いから、ヤバそうなら去年みたいに棄権するし、適当に割り振ってくれ」
「…春市くん、私は能力だけが人生の全てではないと思うわ、一生懸命に参加する事に意義あると思うの。それにみんなで協力する為の体育祭だから、春市くんにもちゃんと参加して欲しいの。」
真面目だ!
あまりの正論に反抗する事など出来やしない
「そうだな、俺が悪かった!いいんちょの言う通りだ、出来るところまで頑張ってみるよ!」
能力学校の体育祭は主に
障害物のあるコースを5人で
たすきをつなぎ駆け抜ける[リレー]
サーキットをチーム3人で戦いながら
だれか1人でも早くゴールさせる[ダービー]
ドーム型フィールドで30個のフラッグを
2対2で奪い合う[旗取り]
特設フィールドで10対10のバトルをし
生き残りの人数を競う[サバゲー]
また5対5で相手のチームの宝箱を奪いあう
[スティール&ディフェンス]
2対2でリングで闘う[デュエル ダブルス]
1対1でリングで闘う[デュエル シングルス]
などがある。
俺の狙いは天高く掲げられたカゴに能力も肉体も使い球を投げいれる[玉入れ]が第1希望だ。
「あのね、春市くんデュエルに出るつもりは無いよね?」
「いいんちょ、俺を殺したいのか?」
「違うよ!墨俣先輩に誘ってみて欲しいと言われたの」
墨俣一夜、Ⅻ統括委員の3年生で影を使う能力者、こないだの保育園襲撃事件で俺たちを救出してくれた人だ。
しかし…
「俺、一度も話した事無いよ?」
「先輩もそう言ってた、だけどね春市くんに興味があるみたい」
「なぜ?」
「体育祭実行委員会の時に少しお話しただけだったから詳しくは聞いてないんだけど…」
「さすがに出ない方がいいだろ、本当に何も出来無いと思うから、対戦相手にも失礼になる」
「…わかった、先輩にもそう伝えておくね」
助けてもらった人からの言葉だからテキトーに無視は出来無いがいささか無謀だ。
「他の競技で頑張るよ」
「そうだね」
体育祭では能力活用力を評価される為
生徒たちは本気で参加する
いやいやの参加でもクラスメイトに迷惑を
かけないために本気にならざるを得ない
勝敗も内申点に響くからだ
1年から4年までA組は赤
B組は白、C組は青、D組は黄、E組は緑
と分けられている。
すったもんだのクラスミーティングの結果
俺が出場する競技が決まった。
[エスケープ]という建造物に閉じ込められた
状態から各チームが早く脱出するという競技だ
成績が関わる以上、俺をどこに出場させるかも
みんな真剣に悩んでいたが委員長の
「春市くんの外す能力が役に立ちそう!」
という提案で満場一致で決まった。
2人一組のチームになるのだが、その
チームメイト自身の提案でもあるから
クラスで反対する者はいなかった。
「気を使ってくれてありがとうな」
小声で話しかけると
「私は本当に勝つつもりの戦略だよ!」
と満面の笑み応えられた。
「いいんちょには敵わないな、よし!頑張ろな」
「そのいき♩そのいき♩」
なんとなく、清々しい気分だ。
成績のことはともかく体育祭を楽しもう
窓の外をみた、どこも続く青空は雲一つなく
綺麗でムラのないパステル色の塗装みたいだ
そのせいで空が近く感じる。
一羽のカラスが気持ち良さそうに
旋回している。
カラス?珍しいな
「まぁとにかく、久しぶりにのびのびと
学生らしく過ごせそうだな」
「なによそれ?」
「いいんちょ、暴力も事件もない日常とは本当に大切な宝物のようなものなんだよ」
「春市くんったら、やっぱり変だよぉ」
いいんちょのニコッとした笑顔に太陽の日差しが降り注ぎとても眩しかった。
ありがとうございます