七十九話 充実した学校生活
上級学校の四年生に編入してから、初めての試験が実施された。
学校の掲示板に、でかでかと張り出されてる結果を見て。
「ま、負けました……」
敗北を知り、がっくりとうなだれるシロツメがいた。
いや、僕が勝ったわけじゃないんだ。
座学一位はマルネ。僅差で二位はシロツメ。
僕は三位だった。また、シロツメに勝てなかったよ。
ケアレスミスさえしなければ……これは言い訳かな。二人はミスしなかったし。
得意の勉強で敗北したシロツメは、非常に悔しそうだ。
でも、同時に嬉しそうでもある。ライバルを見つけたって顔だ。
実技はというと、一位はユキで二位はスウダ君。
僕はここでも三位だった。
「勝った……ロイサリスに勝ったぞ……」
「おめでとうございます、スウダ様。さすがはサクミの愛するお方です」
僕に勝って歓喜に打ち震えるスウダ君と、恋人をべた褒めするサクミさんの二人。
素直に負けを認められない僕は、つい負け惜しみを漏らす。
「ちょ、直接対決はしてないよね。負けたわけじゃ……」
「勝ちは勝ち、負けは負けだ。くっくっくっ」
「……次は勝ってやる」
悔しい。思ってた以上に悔しいよ、これ。
武術大会のような、派手な対戦があったわけじゃない。あくまでも、授業の範疇で実力を見て、成績がつけられてる。
だから、スウダ君に直接負けてはないけど、悔しいことには変わらない。
シロツメと一緒に、敗北に打ちひしがれる僕だった。
そこでフォローしてくれるのは、僕の愛しの恋人。
マルネ・クナだ。
「でもロイ君は、総合成績なら多分一番だよね。どっちも三位って、さすがだよ」
「マルネ! ありがとう!」
座学は座学、実技は実技で成績が発表されるから、両方合わせた総合成績は分からない。
ただ、両方で三位になってる僕が、多分トップだろうとは思う。
「そうだよ。僕は、スウダ君に負けてない」
「ふん、負け惜しみだな。実技で俺が勝ったのは、まぎれもない事実だ」
「うぐぐ……」
「そもそも、総合一位を誇りたいなら、全部で一位を取ってみればどうだ。座学も一位、実技も一位、そして総合でも一位。これなら、誰からも文句は出ないぞ。俺だって認めてやる」
「うぐぐぐ……」
「両方三位で、総合一位? 随分と中途半端だな、ええ?」
「うぐぐぐぐぐぐ……」
「いやあ、気持ちいい。すっげえ気持ちいいな。もっと悔しがれ。マルネさんの前で、情けない姿をさらして見せろ」
スウダ君、酷い。ここぞとばかりに言ってくれちゃって。
ヴェノム皇国の中等学校でも、僕は中途半端な首席だった。
座学はシロツメに勝てず、実技は武神のご加護を授かってる子に勝てず。
今回も一緒ってのが、凄く悔しい。
こうなったら、仕返ししてやる。
「マルネ」
「え、ええ?」
マルネの腰を抱き寄せて、イチャイチャぶりを見せつけてやった。
いいだろ。僕たちは、こんなにラブラブなんだぞ。
「……器が小せえな」
「スウダ君だって、サクミさんとイチャイチャしてるくせに」
「俺はサクミを愛してるからな」
「僕だってマルネを愛してるよ」
男二人で変な対抗心を燃やしてると、ユキから呆れた目で見られてしまう。
「男ってバカ」
「まあまあ、男性の友情は素敵だと思います」
「シロツメは寛容だよね。あたしには真似できない」
「寛容に見えます? わたくし、殺意という感情を抱くのは初めてかもしれません」
「そ、そういうことね。素敵なのは、あくまでも『男性の友情』なんだ」
ユキとシロツメは、いつの間にか妙に親しくなってる。リリも含めて、女性三人でよく集まってるんだ。
会話の内容については……反省します。僕が間違ってました。
スウダ君に見せつけるつもりだったけど、シロツメにも見せつける形になった。
今後は、人目のある場所では自重する。
それにしても、試験の結果を見ると改めて思う。僕の周囲は凄い人ばかりだ。サクミさんも何気に上位に食い込んでるしね。
神様のご加護にしたって、ここにいるメンバーは。
シロツメが賢神。
ユキとスウダ君が武神。
マルネが農神。
僕とサクミさんが低神。
ってなってる。
六人中四人が、数が少ないはずの上位神のご加護を授かってるんだ。
僕だって頑張ってるけど、油断したらすぐに成績は落ちるだろう。
気が抜けないんだ。
「マルネ、今日も勉強する?」
「ロイ君のお邪魔じゃなかったら」
「邪魔だなんてとんでもない。歓迎するよ。じゃあ、いつも通り僕の部屋で」
「うん」
勉強する時は、大抵僕の部屋だ。一番落ち着ける。
不満があるとすれば、マルネと二人きりになれないことだ。屋敷にはリリもシロツメもいるし、ユキが一緒になることも少なくない。
「ねえねえ、ロイ。たまには、あたしと模擬戦でもしてよ」
「訓練なら、しょっちゅうやってるじゃない」
「訓練でしょ。あたしは、ロイと戦いたいの」
「そっちもたまにやってるし、十分じゃないの?」
「足りないよ。全然足りない。なかなか本気でやってくれないし、欲求不満だよ」
ユキは相変わらず脳筋だ。美女に成長しても、ここは変わらない。
勉強はできるようになってるし、脳筋は失礼かな。
「戦うのは今度ね」
「今日じゃないんだ」
「今日は、マルネと勉強。そっちが先に約束したし」
「じゃあ、今度絶対にね。シロツメ、今日はあたしに勉強教えて。ちょっと座学の順位下げちゃったし」
「よろしいですわよ。では、わたくしの部屋で。勉強の後は、リリも呼んでいつものように」
いつものってなんだろ。悪だくみとかは、してないと思うけど。
仲がいいんだし、心配しなくて大丈夫だよね。
とりあえず、今日の予定が決まった。
僕とマルネで勉強。ユキとシロツメも勉強。
スウダ君は、どうせサクミさんとデートだろう。
とまあ、こんな感じで、みんな仲よくできる楽しい学校生活だ。




