七十七話 バカップル×2
晴れて、マルネちゃんと恋人同士になれた。
気の持ちようというか、僕の学校生活は凄く充実してる。
勉強は難しくても、みんなで勉強会をして教えてもらった。マルネちゃんもユキも、成績いいんだよ。
マルネちゃんは四年五組で、ユキは四年四組。
初等学校では一学年上だったユキだけど、上級学校に入学する前に一年浪人したから、僕たちと同学年だ。
勉強が苦手だったユキは、そのままじゃ入学できないし、一年間猛勉強した。
で、無事に入学。成績も上位をキープしてる。
ユキも凄いけど、マルネちゃんなんか座学は学年首席だよ。
二人とも、相当努力したんだ。
賢くて可愛くて優しくてパーフェクトな彼女と二人で、僕の部屋で勉強してる。
「マルネちゃんは、首席なのになんで五組なの?」
「わたし、平民だから」
マルネちゃんの答えには、いまいち納得がいかない。
上級学校は、成績順でクラスを分けてるんじゃなかったっけ?
留学生の僕はお客様扱いだから、特例で一組になってる。
それ以外は成績順じゃないの? 身分が関係するの?
質問すれば、マルネちゃんの答えは「関係する」だった。
「平民だと、どれだけ成績がよくても一番下か、下から二番目のクラスにしかなれないよ。スウダ君も、雄爵になるまではわたしと同じで下のクラスだったし」
平民だから、マルネちゃんは五組でユキは四組。
なんかバカバカしいな。身分が絶対なら、最初からそう言っておけばいいのに。
成績順にクラス分けするって公言してて、実際は身分が重要なんて詐欺だよ。
「ご加護は関係ないの?」
マルネちゃんは農神のご加護を授かってる。
賢神が魔法、武神が武力なら、農神は知力だ。頭がよくなる。
農神のご加護を授かっただけで学年首席になれるわけじゃないから、マルネちゃんの頑張りがあったのは確かだ。
農神のご加護があって首席となれば、平民でも一組になっていいんじゃないかなって思う。
「絶対神様のご加護でも授かってれば違うのかな? 農神だと関係ないよ。わたし、一年生の頃からずっと一番下のクラスだし」
ご加護よりも当人の実力よりも、身分が最優先なのか。
スタニド王国の上級学校は、やっぱりどこか歪んでる。それが僕の感想だ。
「マルネちゃんと同じクラスになれないのは残念だけど、こうして一緒にいられるしいいかな。酒場の仕事まで、まだ時間大丈夫?」
「もうちょっと、かな。それで……ロイ君」
「何?」
「わ、わたしのこと……好き?」
「もちろん、大好きだよ。世界で一番愛してる」
歯の浮くようなセリフだけど、いくらでも言える。だって、本気で好きだから。
「わたしもロイ君が大好き。あの……だから……わ、わたしのこと……」
こ、これは、もしかして……「わたしを抱いて」とか続いたり?
いわゆる、オッケーサインってやつ!?
ど、どうしよう……心の準備ができてないのに……
したいかしたくないかなら、めっちゃくっちゃしたい。超したい。
したいけど、リリやシロツメもいるし、いつ部屋に突入してくるかも分からないんだよね。行為の最中に踏み込まれでもしたら一大事だ。
マルネちゃんは仕事があるから、長く付き合わせることもできないし。
三十分くらいでささっと終わらせる?
いやいやいやいや! 初めてなんだから、もっとじっくりと!
一晩中一緒にいて、朝起きればベッドの隣でマルネちゃんが寝てるのが理想!
じゃあ、拒否する? それもなんだかなあ。
マルネちゃんに恥はかかせられないし、何より僕がしたい! あんなこともこんなことも、全部したい!
「わたしのこと、呼び捨てにしてくれない?」
「あ、あれ?」
……僕の勘違いだった!
あっぶな! 妄想だけでとどめておいて正解だった!
「ロイ君?」
「あ、えっと、うん、そうだね。恋人になったんだし、呼び捨てもありだよね」
そういえば、僕は「リリ」、「シロツメ」、「ユキ」って呼んでるのに、マルネちゃんだけはちゃん付けだ。
昔からの呼び方だし、変えるのも違和感がある。
でもまあ、呼び捨てにしてみようか。
恋人だからね!
「マルネ」
「は、はい、ロイ君」
「マルネは、僕のこと呼び捨てにしないの?」
「わ、わたしは……ロイ君のままで。い、いつかは『あなた』って呼ぶ……から」
あなた! 二人称のあなたじゃなくて、夫に使うあなた!
ひゃっほーい!
僕とスウダ君、そしてスウダ君の恋人の女性。
この三人で、マルネやユキが働く酒場にやってきた。
お酒以外に食事も提供してるから、食べにきたんだ。
マルネが働いてる姿を見てみたいって目的もある。というか、僕はそっちが主目的だ。
エプロンを着けて給仕してるマルネが可愛い。ブラボー!
「おい、ロイサリス。マルネさんばっかり見てんじゃない」
「よいではありませんか。恋人になられたのですし、見たくもなります。サクミは素敵だと思います」
スウダ君に突っ込まれ、恋人のサクミさんがフォローしてくれた。
フルネームは、サクミ・ジウ・ゼードガード。ゼードガード男爵家のご令嬢だ。
僕やスウダ君と同じ十三歳で、四年二組。
ちっちゃくて、お人形さんみたいに可愛い人だ。
この二人、バカップルなんだよね。いっつもイチャイチャしてる。
しかも、当人たちに自覚のないバカップルだからたちが悪い。
「まあ、俺も普段からサクミを見てるからな」
「サクミも、スウダ様だけを見ております」
またか。見つめ合って、二人だけの世界を作ってる。
幸せそうで微笑ましいとは思うけど、毎日これだと胸焼けする。
スウダ君はサクミさんにべた惚れで、サクミさんはスウダ君にべた惚れ。
サクミさんはともかく、スウダ君の好みは分かった。
昔はマルネが好きで、今はサクミさん。
つまり、小さい女の子が好みなんだ。もちろん、外見だけでサクミさんを好きになったわけじゃないだろうけど。
そういえば、スウダ君が真面目になったのって、リリが先生として赴任してからだった。
「スウダ君って、マルネを好きになる前は、ひょっとしてリリを?」
「お前は、俺に恨みでもあんのか!」
この反応、ビンゴかな。
「スウダ様、今のお話を詳しく。マルネさんをお好きだった事実は存じておりますが、リリさんという女性のことは初耳です」
「やましいところは何もない! 初等学校時代の先生が、強くて可憐な人だったから憧れてただけだ!」
「では、今はなんとも思われていない?」
「もちろんだ! 今の俺には、サクミしか見えてない!」
「本当ですか?」
「本当だ。俺を疑うのか?」
「いいえ、サクミはスウダ様を信じています。スウダ様のためでしたら、なんでもします。ええ、なんでも……ポッ」
頬を染めるサクミさんは可愛らしい。恋する乙女だ。
ただし、ちょっとだけヤンデレ気質でもある。
いや、いい人だよ。貴族のご令嬢なのに、マルネやユキにも普通に接してくれるし、スウダ君の友達ってことで僕も仲よくさせてもらってる。
スウダ君への愛が、ちょーっと重過ぎるんだ。
重い愛情でも、スウダ君はきちんと受け止めてるし、幸せそうだからいいんだけどさ。
「サクミ」
「スウダ様」
本当にバカップル。
僕とマルネなんか、付き合いたてなのに普通だよ。見習ってもらいたいね。
陳謝
主人公の頭がすっかりお花畑になっていますが、許してやってください。付き合いたてのカップルなんてこんなものです。(作者の偏見)
また、主人公は本気で自分たちがバカップルではないと思っていますが、これも大目に見てやってください。しばらくすれば収まりますので。




