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六十三話 理不尽な結末

 僕はなんとか一命を取りとめた。

 毒のせいで危ないところだったけど、直接食らってなかったのが幸いしたんだ。

 メルさんとミコトさんも無事に逃げられてたし、コロアドさんとジンフウさんも無事。みんなが死ななくてよかった。


 ヴェノムオオヘビの情報を伝えれば、国はすぐに騎士団を派遣した。

 死闘の末に、ヴェノムオオヘビを撃破。脅威は去った。


 これで済んでれば問題なかったんだけど、ベイさんが持ち帰ったヴェノムオオヘビの卵が、よりにもよって皇都の中で孵化(ふか)した。


 あのヴェノムオオヘビは魔物化してたよね。

 魔物化したやつの子供も、やっぱり魔物として産まれるんだ。

 魔物を放置しておくと、どんどん魔物を産んで増えるから、ハンターが一生懸命に退治してるってわけ。


 つまり、卵から(かえ)ったヴェノムオオヘビも魔物だった。

 皇都の中に魔物が、それもヴェノムオオヘビなんて存在が持ち込まれれば、大問題になった。

 孵化したばかりだったから、大事には至らなかったのが不幸中の幸いだ。


 とはいえ、お咎めなしとはいかない。

 直接持ち込んだベイさんは、ハンター資格を剥奪。それと強制労働の刑に。

 ベイさんはハンターだし、魔物の卵の危険性も認識してた。欲に目がくらんで持ち帰るなんてミスをしたから、かなり重い罰になった。


 パーティーを組んでた僕も連帯責任で、ハンター見習いの資格を剥奪。

 強制労働にならなかった分だけ運がよかった。

 ヴェノムオオヘビが出てこなかったら、僕も一緒の時に卵が孵化してたよ。あれが魔物の卵かもしれないなんて、想像してなかったし。

 そしたら、もっと重い罰になってただろう。


 そもそもハンターじゃないミコトさんは、これといってお咎めなし。まあ、白い目では見られたけど。

 僕の教育係だったコロアドさんたち三人は、教育不行き届きってことで罰金。


 誰も得をしない、非常に理不尽な結末だった。

 僕やベイさんは自業自得としても、コロアドさんたちは無関係だ。こんなに迷惑をかけたのに、僕を責めなかった。

 それどころか、無事でよかったって言ってくれた。

 本当に、申し訳ないやらありがたいやら。





「ロイサリス様は、自傷癖でもおありなのですか!? 毎度毎度、大怪我をして! わたくしの魔法も万能ではないのですよ!」


 いつかもあったように、僕はシロツメの部屋で正座させられ、お説教されてる。


「あれほど! わたくしがあれほど、無茶をなさらないでくださいとお願いしましたのに!」


 はい、おっしゃる通りです。ごめんなさい。

 一年以上もかけて左腕を治した患者が、すぐさま別の怪我をして帰ってきたら、そりゃ怒る。シロツメの頑張りを無駄にしたようなものだし。


「そうではありません! わたくしなど、どうでもよいのです!」

「サラッと僕の心を読むのはやめ……」

「何かおっしゃいました?」

「いえ、何も……」


 相変わらず弱いなあ、僕。

 多分、いつまでたってもこのままな気がする。シロツメに頭が上がらないって意味で。

 ひたすらにかしこまる僕を、シロツメはそっと抱き締めてくれる。


「ご無事でよかったです……ロイサリス様が亡くなられていたら、わたくしも後を追っていたところです」

「お願いですからやめてください」

「わたくしを死なせたくないのであれば、お命を大事になさってください」


 変な脅し方だ。シロツメなりの気遣いなのかな。

 僕を抱き締めたままで、シロツメは続ける。


「カザカナ・ミコトさん……でしたか? ロイサリス様は、一人の少女を救いました。ご立派なことです。ロイサリス様のご友人として誇らしく、またヴェノム皇国皇女としても国民を救っていただき感謝致します」

「僕の方こそ、認めていただきありがとうございます」


 あっちこっちから怒られ、罰せられた僕だけど、ほんの少しでも認めてくれる人がいれば救われる。


 ハンターの仕事はできなくなったし、実績の面でも大きく後退した。

 ご加護を授かるまで、あと少しだったのに。

 この分だと卒業までに間に合わないかもしれない。それこそ、首席で卒業しても厳しいかも。


 まあ、命が助かっただけでも儲けものって考えよう。

 今回の失敗は教訓になった。成功ばかりの人生なんてあり得ないんだ。


「ところで、いつまでこの態勢なんでしょうか?」


 僕を抱き締めてるシロツメに突っ込んだ。

 いや、嬉しいよ。シロツメって……あれだし。十三歳なのに、体の一部がさ。

 思い切り当たってるんだよね。


「わたくしの抱擁は、ロイサリス様への報酬になりませんか?」

「ならなくはないですけど……」


 むしろ、大変光栄です。

 こんなことを思ってしまってごめんなさい。なんか、謝ってばかりだ。





 ハンター見習いをクビになったせいで、仕事がなくなった。

 ある事情があってお金が欲しいし、僕は雑貨屋でアルバイトをしてる。

 夜になり、仕事が終わって寮に帰ろうとしたところに彼がいた。


「ベイさん……」


 強制労働中のはずのベイさんだ。なんでここに?


「お前の……お前のせいで、俺の人生は台無しだ……」

「どうして僕のせいなんです? 自業自得でしょう」

「俺をパーティーから追い出した奴らも憎い。が、俺がパーティーに入れてやったのに、足を引っ張って俺をこんな目に合わせたお前も憎い」


 つまり、ベイさんが不幸になったのは、全部他人のせいって言いたいの?

 身勝手にもほどがある。


「俺の人生は終わった。なのに、お前がのうのうと暮らしてるのが許せない! お前も殺してやる!」


 言いがかりをつけてきたベイさんは、剣を抜いた。

 元パーティーメンバーを襲ってもよさそうなものなのに、僕のところへきたのは、僕を舐めてるからかな。


 元パーティーメンバーには勝てないから挑まない。

 ご加護を授かってない僕になら、勝てると思ってるんだ。


「死ねえっ!」


 ベイさんが斬りかかってくる。

 ハンターをしてただけあって、動きはかなりいいけど……


「甘いですよ!」

「がふっ!」


 ベイさんを投げて、地面に叩き落としてやった。

 リリ直伝のアーガヒラム体術だ。丸腰だからって甘く見たね。


 背中を強打したベイさんは、息を詰まらせたみたいで苦しんでる。

 頭から落とさなかっただけ優しい方だよ。ベイさんを気遣ったというよりは、僕が殺人犯になりたくないからだけど。


 ベイさんを騎士の人に引き渡して、この襲撃事件は終わった。

 

 そして、結末としては。

 ベイさんは縛り首になった。ヴェノムオオヘビの卵の件に加え、罰を受けてる途中で殺人未遂だからね。改心の余地なしって判断された。


 変な真似をしなかったら、やり直せたのに。

 人を呪わば穴二つ、だっけ? これだと僕も死んでることになるから、ちょっと不適切かな。

 とにかく、嫌な気持ちになった事件だった。

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