表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

33/125

三十二話 リリはモテモテ

本日二話目です。

 三年生に飛び級すれば、案外あっさりと溶け込めた。

 仲よしの友達もできたし、一緒に遊んだり勉強したりしてる。


 充実した日々を送っていた頃だ。思いがけない人が学校にやってきた。

 放課後、僕が友達と一緒に学校を出たところで、正門前にその人は待っていた。


「あ、坊ちゃま!」

「リ、リリ!? なんでここに!?」


 僕を見つけるなり、満面の笑みで声をかけてくれたのはリリだ。

 父さんやおじいちゃんとは手紙でやり取りして、近況報告をしてるんだけど、リリがくるなんて聞いてないよ。

 驚いたのは僕だけじゃない。一緒にいる友達もだ。


「グレンガー……この人は?」

「坊ちゃま? グレンガーってお坊ちゃんなのか?」

「可憐だ……」


 うわあ……説明が面倒そう。

 あれこれ追及される未来しか見えない。なんて説明しよう。

 脳内で言い訳を考える僕を放置して、リリは僕の友達に自己紹介する。


「坊ちゃまのお友達ですか? はじめまして。私、リリ・リローと申します。()()()()()メイドです。いつも坊ちゃまがお世話になっております」


 またそれ!? リリは、なんでいつも「坊ちゃまの」ってつけるの!?


「は、はじめまして! グレンガー君の一番の親友、ナミガノ・ボードです!」

「グレンガー君の一番のライバル、カムバッチ・ロンドです!」

「グレンガー君の一番の……一番! モモタ・シックです!」


 こっちもこっちで、好き放題言ってる。一番の親友だの、一番のライバルだの。


 そういえば、一つ補足。僕は「グレンガー」って呼ばれてるけど、バカにされてるわけじゃないよ。

 スタニド王国とは常識が違って、ヴェノム皇国だと個人名で呼んでも家名で呼んでも構わないんだ。


 僕を「グレンガー」って呼ぶ友達もいるし、「ロイサリス」とか「ロイ」って呼ぶ友達もいる。「グレンガー」の方が多いかな。


 てな話はどうでもよくて。

 三人の友達は、リリに夢中だ。必死に自分をアピールしてる。


 まあ、リリは可愛いしね。二十歳なのに、見た目はいまだに十二歳くらい。

 僕たちは九歳や十歳だから、少し年上の素敵なお姉さんって感じだ。

 今のリリは、旅用の服を着ててオシャレとは縁遠いけど、元の可愛らしさまでは損なわれてない。


 異性に興味を持ち出す年齢の男子なら、夢中にもなる。

 リリもリリで、丁寧に対応するからなおさら。


「それで、リリ。急にどうしたの? リリがくるなんて聞いてないよ」


 僕を無視して話を続けそうな勢いだったし、悪いけど割り込ませてもらった。


「はい、少し坊ちゃまにお伝えしたいことがありまして。悪い話ではなく、むしろよい話ですけど、重要なので手紙ではなく私が直接」

「直接って……ここまで遠いでしょ」

「いえいえ、坊ちゃまにお会いできるのですから、苦になりませんよ。坊ちゃまが初等学校に入学されて、私は寂しかったのです……」


 誤解しか生まないリリの発言に、友達がざわついてる。

 僕がメイドに手を出す鬼畜野郎みたいだ。


「ナミガノ君にカムバッチ君、モモタ君でしたよね。私は坊ちゃまとお話がありまして……予定があったのであれば、中止にしていただけませんか? 坊ちゃまと二人きりになりたいのです。私が宿泊してる宿で二人きり……ゆっくりと……」


 後半はいらないよ! リリ、絶対に分かっててやってるでしょ!

 あ、僕を見る三人の目が、どんどん冷たく……


「グレンガー、また明日な」

「ああ、明日だ」

「明日が楽しみだな」


 口々に言い残して、三人は帰って行った。

 ……明日、学校に行きたくないな。





 友達と別れ、リリと一緒に宿へ。

 宿っていっても、旅人が利用するごく普通のものだ。男女が特定の行為のために利用する場所じゃない。

 宿の部屋に入ってから、僕はさっそく切り出す。


「リリ、そろそろ話してよ。何があったの?」

「せっかちですね。久しぶりの再会ですし、もっと感動的になっても……さあ坊ちゃま、どうぞ」


 両手を横に広げて、何がしたいのさ。胸に飛び込めとでも?


「リリ、ふざけないで」

「ううぅ……坊ちゃまが冷たいです。抱擁の一回くらい、いいじゃないですか」

「久しぶりに会えて嬉しいのは確かだけど、抱擁はなし。で、用件は?」


 態度が冷たいとは思うけど、友達にわざわざ誤解させるような真似をしたことに、少し文句があるんだ。

 リリは、ようやく話してくれる。


「まずは、坊ちゃまに悪い虫がついていないかな、と」

「はあ? 悪い虫って、女の子って意味? そのために、友達に誤解させるような真似を?」

「だって、坊ちゃまはマルネさんが好きですよね? 他の女の子に手を出すとは思えませんけど、念のために」


 なんでリリが知ってるの!? 僕がマルネちゃんを好きだってこと!


「な……ん……」

「なんで、ですか? 私が何年、坊ちゃまのお世話をしてると思ってるんですか。坊ちゃまの態度を見ていれば分かりますよ。マルネさんは私の愛弟子ですし、坊ちゃまとのご関係を応援しています」


 リリに知られてた事実もそうだけど、応援って言われたことも驚いた。

 すっごく自惚れた発言をするけど、リリは僕を好きだと思ってたんだよ。


 好きな人の恋路を応援するって、普通できないよね。

 仮定の話で、マルネちゃんに好きな男がいるとすれば、僕は応援できない。

 リリの気持ちは、あくまでも家族愛なのかな。謎だ。


 リリが僕を好きなら、どうやって断ろうか悩んでたし、楽になったとも言える。

 はっきりと告白されたなら、ごめんなさいって言えば済むんだ。

 告白される前から、「僕はマルネちゃんが好きだ。リリとは付き合えない」なんて言い出すのは、自意識過剰だと思う。


 助かるんだけど……うーん、女心ってよく分かんない。


「ま、まあいいや。それが本題じゃないよね? 僕が女の子と付き合ってないか確認する以外にも、用件があるんでしょ?」

「はい。こちらが重要でして、坊ちゃまの左腕の治療についてです」


 それは、今の僕にとって最重要課題と言えることだ。


「……聞かせて」

「オグレンナ様が、別の人に診てもらえばどうか、と」


 僕は、治癒魔法を使うお医者様に診てもらいつつ、完治を目指してる。

 でも、治る気配が全く見えないんだ。


 これは、お医者様の実力の問題じゃなくて、相性の問題らしい。

 治癒魔法を使う人と使われる人には相性があって、僕はかかりつけのお医者様と相性が悪いたみたいなんだ。


 相性が悪いってことは、お医者様にも言われてる。

 真実を告げてくれるあたり、良心的な人だと思う。

 ただ、いくら人柄がよくても、それで僕の左腕が治るわけじゃないのがね。


「別の人に診てもらうのはいいけど、具体的に誰? いい人がいるの?」

「治癒魔法の実力は未知数です。実績もありません。なにせ子供ですから」

「子供?」

「はい。坊ちゃまの二歳上で、十一歳ですね。お体が弱く、十一歳でまだ初等学校の三年生です。加護も授かっていません」


 随分と変な人を勧めてきたな。

 おじいちゃんのことだし、何かしらの考えはあるんだろうと思う。


「その人を勧めるのはなんで?」

「治癒魔法には相性があるのはご存知だと思います。そして、根拠は薄弱なのですけど、その方と坊ちゃまは相性がいいのではないか、と」

「薄弱なんだ……まあ、相性の良し悪しが分かれば、誰も苦労しないか」

「ですね。やってみないと分からないのが難しいところです。根拠ですけど、近しい年齢なら相性もいいのでは、というのが一つ。もう一つは、血縁関係です」


 血縁関係か。おじいちゃんの肉親に、治癒魔法の使い手がいるのかな。

 僕が想像したのは、おじいちゃんの兄弟姉妹やその子供だったけど、リリの口から出たのは予想外の名前だった


「シロツユメンナ・ヴェノム様。ヴェノム皇国の皇女様ですね」


 ……コウジョサマ? 皇女様?

 た、確かに、血縁関係があるっちゃあるけど。


「い、いくらなんでも遠過ぎない? おじいちゃんは皇族の分家で、僕はその孫だよ。それ以前に、皇女様に治療の依頼なんてできるの?」

「ですから、根拠が薄弱なのです。皇女様に対して無礼ですけど、ダメ元ですね。依頼できるかどうかなら、オグレンナ様であれば可能かと」


 おじいちゃん……ケノトゥムの力なら、か。


「私は、坊ちゃまのご意思をうかがうためにきました。どうされますか?」


 悩ましいけど……





 翌日、学校に行った僕は。


「メイドさん?」

「超可愛いメイドさん」

「俺、一目惚れした」

「俺も俺も」

「あのメイドさんにお世話されたい」


「グレンガー君は」

「スケコマシ?」

「あたし、見損なった」

「許さん。許せん」


 クラスメイトたちから散々に言われてしまったとさ。

 リリってモテるんだね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ