表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/125

十一話 二年生への進級と、新しい担任

今朝は投稿できず、すみませんでした。

一日二話更新は維持したいので、まず一話目。次話は一時間後です。

 リリが先生になるのは、思いのほか簡単に認められた。

 実力を披露すれば一発だった。

 僕も見学させてもらったけど、それはもう凄かったんだ。


 学校には武術の授業があるから、腕に覚えのある先生もいるのに、その人たちをちぎっては投げ、ちぎっては投げ。


 学校の訓練場には、屍の山が築かれた。

 あ、死んでないよ。比喩だからね。


 実際に死んでなくても、先生たちのプライドはボロボロになったかもしれない。

 見た目十二歳のリリに、複数人でかかって手も足も出なかったし。

 その際の、リリの感想をどうぞ。


「たるんでますね。前線から退いているにしても、たるみ過ぎです。子供に教育する立場を軽視していませんか? これでは、まともな子供が育たないわけです」


 容赦ない言葉の暴力だ。先生たち、立ち直れるといいけど。

 僕が教わってる先生もいるのに、ちょっとだけ同情した。


 教わってるって言っても、一年生の間は、本格的な訓練はない。

 基本的には体力作りで、走らされてばかりだ。たまに、型を練習したりする。

 本格的なのは、二年生になってから。僕も二年生になるし、つまりこれからだ。


 実は、これが学校をやめたがった理由の一つでもある。

 戦い方を学べば、使ってみたくなるのが人情だ。子供ならなおさら。

 同級生たちは、僕をいじめてるから、暴力に躊躇がない。そこへ、剣なり槍なり、武器の扱い方を学んで戦えるようになったら、どうなるか。


 十中八九、僕で試そうとする。手加減なんてせず、好きなように。

 そんな事態になったら、今度こそ殺されかねない。


 先生は、気にせず教えるだろうからね。

 本来なら、戦い方以前に、力を持つ者の義務とか責任とかも教えるべきなのに、この一年間教わったことはない。これからも、ただ単に強くするだけだろう。


 僕は、父さんからちゃんと教わったよ。

 先生は無責任だけど、責任があれば僕のいじめを看過しない。

 教育者として失格だし、学校制度も若干破綻してる気がするのは、僕だけかな。

 無責任な大人に育てられたら、子供も無責任になる。国の将来が心配だ。

 リリがカンフル剤になってくれればいいと思う。





 二年生になった僕は、クラスも新しくなった。

 一年ごとにクラス替えがあるんだ。色んな子供と仲を深めるためにね。

 ただ、その理念がクラス替えに反映されてないのは、気のせいじゃないだろう。


 レッド君に都合のいいクラス分けになってた。

 レッド君と、彼と親しくしてる取り巻きたちをまとめてある。

 取り巻きってのは、要するに、特に僕をいじめてる連中でもある。


 例外は、二人だけ。僕と、なぜかマルネちゃんも同じクラスだ。

 一年前、マルネちゃんが同じクラスになってるのを拒否したのに、どういう風の吹き回し?


 碌でもないことを考えてそうだ。マルネちゃんの目の前で僕をいじめたいのか、マルネちゃんもいじめのターゲットに加えるつもりか。

 学校をやめなくてよかったよ。僕がやめてたら、マルネちゃん一人が犠牲になってた。


 他のクラスは、まあ適当にってところだ。

 憂鬱な学校生活が、また始まるんだな。

 そう思いつつクラスに足を運べば、さっそくだ。


「おらあっ!」


 挨拶とばかりに、僕を殴ってきた少年がいた。

 カッツャ・カーダ。僕よりも二歳年上で、十歳の少年だ。


 暴力大好き。暇さえあれば、僕を殴ってる。

 避けたり受け止めたりすれば、余計に殴られるだけだから、大人しく食らう。

 朝っぱらから、顔面にきつい一撃をもらったけど、こんなの日常茶飯事だ。


 ギャハギャハとゲスい笑い声を上げながら、カッツャ君は席に着いた。

 僕の席なんて物は、当然のごとく用意されてない。

 これも日常茶飯事だね。素直に床に座る。


 すると、僕に向かってインク壺が投げつけられた。黒いインクが服にかかって汚れる。

 犯人は、ヒョンオ・カーダ。カッツャ君の一歳下の弟で、こっちは直接的な暴力よりも、陰湿な嫌がらせを好む。


「あー、ぼくのインクがー。おい、グレンガー、べんしょーしろよ、べんしょー」


 ヒョンオ君が弁償を連呼すれば、同調して声を上げる子供が出る。


 ヤガ・ピナト。

 スウダ・バゼラ。

 ラナーテルマ・クォンカル。


 あ、名前は覚えなくていいよ。レッド君の取り巻きって覚えとけは十分だ。

 彼ら以外にも、クラス全員が僕の敵みたいなものだし、覚え切れない。


 もし覚えるなら、ラナーテルマちゃんだけかな。

 八歳なのに、学校一の美少女って評判の子だ。

 個人的には、学校一はマルネちゃんだと思うけど、かなり贔屓目が入ってるし、客観的には同レベルかも。


 ラナの愛称で呼ばれてて、レッド君の妻の座を狙ってるって噂。

 可能性はあるのかな。顔だけなら、美少年と美少女でお似合いでも、身分の差があるし。


 レッド君の正妻の座は、王女様で決まりとも言われてる。

 となると、ラナーテルマちゃんは妾になるわけだけど、子供ながらにプライドの塊みたいな性格だから、我慢できるかどうか。


 どっちにしろ、僕には関係ない。僕とラナーテルマちゃんがくっつくなんて、天地がひっくり返ってもあり得ないし、王女様なんてもってのほかだ。

 とか考えてたら、ラナーテルマちゃんが僕を蹴飛ばした。


「スケベな目で見ないでよ!」


 見てないって。いくら美少女でも、性格の悪い子はこっちがお断りだ。

 女の子でも、足の力ってバカにできない。カッツャ君に殴られるよりも効いた。

 さらに、靴にインクがついて汚れたって騒ぎ出した。酷い言いがかりだ。


 そこへ颯爽と登場するのは、我らが貴公子、レイドレッド・オザ・フォス・キルブレオ。

 レッド君は、僕を睥睨しつつ、冷たく告げる。


「やれやれ、またグレンガーか。いい加減、クラスの秩序を乱すのは勘弁してくれないかな。ラナさんがかわいそうだと思わないか? ヒョンオ君のインクも台無しにしたようだし、救いようがないね」


 レッド君が僕を注意して、クラスメイトたちはレッド君を絶賛する。同時に、僕を悪しざまに罵る。

 しつこいけど、全部日常茶飯事だよ。辟易する。


 いつもの茶番が終われば、レッド君たちは長期休暇中の話題にシフトした。

 彼らも、四六時中僕をいじめてるわけじゃない。気が済めば、僕を無視して仲間内で盛り上がる。

 主に、レッド君の活躍ぶりが話題になってるね。


「父に怒られてしまったよ。まだまだ未熟だってね。確かに、ワタシはもっと学ばなければならない。父のように立派な人間になるためにね」

「レッド君の成績で怒られるって、すげえ! 主席なのに!」

「ひ、筆記試験は、満点ばっかりだったのに」

「あたし、レッド君が満点以外を取ったところ、見たことないよ」


 レッド君は嫌味たらしく謙遜し、カッツャ君たちは太鼓持ちのように絶賛した。

 レッド君は機嫌をよくして、話を続ける。


「あとは、王様や知り合いの貴族に挨拶してから、勉強していたかな」

「や、休みの間も、勉強?」

「さすがレッド君! あたしたちなんかとは違うよね!」


「いや、いくらなんでも、ずっと勉強漬けだったわけじゃないよ。王子様や王女様と一緒に、お茶会もした」

「お茶会! さすがレッド君!」

「お相手が、王子様と王女様ってのも凄い!」

「ぼ、ぼくらみたいな庶民とは、住む世界が違う……」


「君たちも、努力すれば地位を得られるさ。ワタシのように、努力しなくてはね」


 レッド君は、発言自体は立派だ。正論を述べてる。

 僕に言った、「クラスの秩序を乱す」ってのも、これだけを聞けば正しい。

 僕が秩序を乱してるわけじゃないけど、仮にそうなら、面と向かって注意できるレッド君は立派だってことになる。

 正しいし立派だからこそ、たちが悪いんだ。正しいと、何をしても許されるって考えてるから。


 レッド君の自慢話と周囲の称賛を、右から左へと聞き流してれば、先生が……

 やってきたんだけど……


「はいはーい、みなさん、席に着いてくださいね」


 教室に入ってくるなり、可憐な声で注意したのは、僕のよく知る人だった。

 なんでリリが? まさか担任なの? 武術指南じゃなかったっけ?

 リリが担任になってくれるのは頼もしいんだけど、嫌な予感がひしひしと……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ