百一話 結束
仲間が続々と集まってる。
続々とって表現できるほど大人数じゃないかもしれないけど、僕たちがやってることを考えればよく集まってる方だ。
戦争を止める、すなわち国王陛下に逆らおうとする命知らずな人たち。
当初は四人になることも考えた。僕とリリ、シロツメとシャルフさんだ。
マルネたちが協力してくれれば助かると思ったけど、強制はできない。
なのに、マルネ、ユキ、スウダ君、サクミさんが協力してくれて、さらにはナモジア君まで。
このメンバー以外にも、シロツメの使用人や護衛がいる。
交換留学の際にヴェノム皇国から連れてきた人たちで、シロツメが強制的に帰国させた人以外はほとんど残ってる。
シロツメの人徳のなせるわざだよね。単に皇女様だからってだけじゃない。
今回は、新たに二人の仲間を迎え入れた。
僕の父さんの知り合いである、ブルブさん、ワレトスさんっていう男性たちだ。
二人に助けてもらった恩は覚えてるけど、あれについて問いたださないと。
「ところで、ブルブさん、ワレトスさん。マルネのお尻を触ったとお聞きしましたが、どっちですか? どちらがマルネのお尻を? 二人ともですか?」
「ワトレスだ」
「俺を売るなよ!」
ワレトスさんだったのか。きちんと言っておかなきゃいけない。
「マルネのお尻は僕のです! 僕だって触ってないんです! 次に触ったら、シロツメの権力で縛り首にします!」
「わたくしの権力を頼られても困ります。やりません……というかできません。ロイサリス様は、そのように権力を乱用するのはお嫌いでは?」
「それはそれ、これはこれです!」
「便利な言葉ですわね」
もちろん、本当にやる気はない。冗談だから言えるセリフだ。
冗談だけど、それだけマルネが大切だって意味。
「勘弁してくれ。つうか、俺はいてえ目にあった。嬢ちゃん二人は、酒場の常連客に大人気だったんだ。俺が尻を触ったもんだから、ボッコボコにされたぜ」
「そうでしょうとも。マルネは可愛いですから」
僕のマルネが不人気なわけがない!
僕が頭の悪い独占欲をむき出しにしてれば、みんなが呆れてた。
「ロイサリス様は放置しましょう。まともに相手をすると疲れます」
「了解です。それで、皇女殿下。これからどうされるので? 俺とワレトスは新参者なので、ご指示をいただけると助かります」
「お二方は、屋敷の警護をお願いします。爺、彼らの配備を」
「かしこまりました」
バカな真似をしてたせいで、シロツメに放置って言われた。
そろそろ真面目に話を進めよう。
ブルブさんとワレトスさんには、屋敷の警護に回ってもらう。
いつ何があるか分からないし、昼夜を問わず警護する必要がある。
襲撃に対処するためにも交代で休むためにも、人手は多い方がいい。
「そして、わたくしたちですけれど……」
「早く動かなきゃいけませんよね。戦争を止めたいのに、僕たちが泥沼の内戦を起こしては意味がありません」
仲間をどんどん集め、国王派と反国王派で内戦。
反国王派は、レジスタンスとか解放軍とか呼ばれたりするのかな。
これは、できれば避けたい。下手したら、ヴェノム皇国と戦争する方が被害は少ないってなりかねない。
内戦にならないよう迅速に動こうって言えば、シロツメが黙考した。
険しい顔をしながら考え込んだ末に、こう提案する。
「……わたくしたちの関係に亀裂が生じることを懸念しておりましたけれど、しっかりと話し合っておきましょう。目を背けてはいけない問題です」
「というと?」
「わたくしたちは、一枚岩ではないはずです。各々の考えや目的を持っており、すると手段も異なってくるかと」
「目的は、戦争を止めることでは?」
僕はそのつもりでいたけど、シロツメは違うの?
「わたくしは、ヴェノム皇国の皇女です。すなわち……極論を承知で言いますけれど、スタニド王国がどうなろうと構いません。内戦になろうと、国が疲弊し崩壊しようと」
……そっか、そうだよね。考えてみれば当たり前だ。
シロツメが何よりも優先するのは、ヴェノム皇国に決まってる。
皇女様なのに、他国の方が大事なんて言い出すと大問題だ。薄情ではないし間違ってもない。
僕が内戦を起こしたら意味がないって言ったから、シロツメもこんなことを言い出したんだろう。
内戦を避けたいってのは僕の考えで、シロツメは違うんだ。
「無論、内戦をしてもらいたいわけでもなければ、崩壊してもらいたいわけでもありません。しかしそれは、ヴェノム皇国のためです。同盟国の情勢が不安定では、我が国にも影響が及びますので。爺もわたくしと同様です。では、皆様は?」
「僕は、どちらの国にも愛着があります。どちらの国にも大切な人がいます。片方を選ぶことはできません。だからこそ、戦争を止めようと思ったんです」
「わたしは、ロイ君と違ってヴェノム皇国に行ったことはないですし、愛着もありません。でも、ロイ君が悲しい思いをすると嫌なので、ヴェノム皇国がどうなってもいいとは思いません。もちろん、スタニド王国も」
「あたしもマルネと一緒かな」
「私は、坊ちゃまに近いですね。どちらの国も祖国と言えます」
僕、マルネ、ユキ、リリが答えた。
続けて他のメンバーも。
「俺は、スタニド王国の貴族だ。王国を第一に考える」
「サクミは、愛するスウダ様と共に。そして、サクミ・ジウ・ゼードガードとして王国の未来を考えます」
「俺は戦えればいい。小難しい話は知らん」
スウダ君、サクミさん、ナモジア君の意見だ。
同じようで異なる考えを持つ人たち。シロツメの言う通り、一枚岩じゃない。
「答えにくい質問をしてしまい、申し訳ありませんでした。そして、お答えいただきありがとうございます」
「シロツメが謝る問題じゃありませんよ。それに、優先順位は多少違っても、やることは変わりません。戦争を止める。内戦もできる限り避ける。ですよね?」
シロツメだって、スタニド王国の情勢が不安定なのは困るって言ってた。
内戦でドンパチやるならご勝手にどうぞってわけじゃない。
「結束が固まったってことでいいんじゃないですかね? 俺のようにスタニド王国を第一に考える奴もいれば、シロツユメンナ様のようにヴェノム皇国を第一に考える人もいる。ロイサリスのようにどっちも大切って奴も。そんなものですよ」
「スウダ様、素敵ですわ。サクミは、スウダ様が一番大切です。スウダ様が世界を滅ぼすとおっしゃれば、お供いたしますわ」
「お前は、少し自重しろ」
ヤンデレ気質のサクミさんはともかくとして、だ。
結果的に、結束は固まったと思う。
シロツメが言い出してくれてよかった。僕は危うく、自分の考えだけが正しいって勘違いするところだった。
それじゃあレッド君と同じだ。
感動してたら、ブルブさんが僕の肩を叩いた。
「かけがえのない仲間ってのは、こういうのだ。ゴウザも安心してるだろうさ」
「ブルブ、くせえぞ」
「うるさい」
ワレトスさんにからかわれて、ブルブさんは少し照れてたけど。
言葉の重みは十分に伝わった。
父さんに言われたことを思い出す。
初等学校に通う時、父さんはこう言ってた。「同年代の友人は貴重だぞ。将来、お前の力になってくれる友人がな」って。
まさしくその通りだった。
国は違う。性別も違う。身分も違う。
でも友達だ。かけがえのない仲間たちだ。




