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取りつく
今度は、捕食する側の視点になった。
「よくできたVRゲームだ。」
違う、これは仮想じゃない。危うく、勘違いするとこだった。
クモの視野は広い。上半球は、ほとんど見えるじゃないか。これならカンニングやり放題だ。
クモは蝶をぐるぐる巻きにして、ゆっくり隅に戻っていった。繁殖期でないクモは一日中このまま巣の端でじっとしているだろう。なんとか次のターゲットが欲しい。いつしか、僕自身が獲物を待ち伏せするクモと化していた。
「ガサガサ。」
あたりが騒がしい。
「ゴフゴフ。」
激しい音がする。聞いたことがある。動物園か?いや、社会科見学で行った牧場だ。豚だ。豚が逃げ出してきたのか?まさかな。
茂みを突き破って巨大な茶色い塊が突っ込んできた。驚いたが、警告はでない。とりあえず危険はないってことか。
あれ?移動している。クモの速度じゃない。自転車で走っている感じだ。イノシシだ。豚ではなく突っ込んできたイノシシにくっついているんだ。僕がクモに取り憑き、そのクモがイノシシに取り付いている。




