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42人の教室  作者: 夏空 新
第6章

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47:一縷の闇 これは尋問?

《4月13日/10:11/食事会場》

 おはようございます。佐藤です。

 仮屋(かりや)君との激戦から2日の後の今日。朝食もとうにい終わっている僕はなぜかここにいる。

 しかも正面には、安河内(やすこうち)さんと西門(にしかど)さんが並んで座っている。2対1の面談だ。

「あの………これは?」

 僕は尋ねる、自分の今の状況について。

 全く知らなということでもない。それこそ激闘後のことだ。仮屋君と会う約束をしたほぼ直後に西門さんからメッセージが届いた。内容は「ここで貴方と話したい」とただそれだけだった。僕はてっきり西門さんと1対1で話すものだと思っていたがまさか安河内さんがいるなんて思いもしなかった。

 しかし、どうしてこの2人が? ついこの間まで犬猿の仲だったはずの2人が肩を並べているのか理解で着なかった。

「色々と聞きたいことがあってね、佐藤君には」

 安河内さんはそうい聞いてきた。

「僕………なんかやっちゃいました?」

 この2人がいるということは少なからず【一縷の闇】の件に関してなんだろうと考えるまでもない。ただ僕としては十分に2人から話は聞いているし……なんだろう? わかるようでわからない。

「別に悪いことはしちゃいないよ、ただそうね、意図を聞きたくて」

「意図?」

「私と安河内のこと、どうやら嗅ぎまわっていたみたいね、正確に言えば一縷と二敷のことになるか」

「あ、あぁ………でも、あれは僕の中で関心があったからってだけでーーーー」

「あの時の模試で全国一位を取っていたことを承知の上で?」

「………え?」

 どうしてそれを、と思わず言いかけると

篠原(しのはら)さんから教えてもらったんだ。あの日、君と仮屋君が百人一首で闘っている間、教室でその話になった。もちろん、私たちだけではない。あの場にいた生徒全員は君が模試で1位を取ったことがあって、それが一縷の全貌を暴くきっかけ作りをしたことは知れ渡っているわ」

 西門さんから告げられた衝撃の真実。なるほど、あの戦いが終わった後、少しみんなの見る目に違和感を覚えていたがその正体がこれか。恐らくあの時の忘却状態は、松本さんくらいしかいないが彼女の口から皆に知れ渡った可能性もあると思うと、あの温かいようで冷めたような視線の正体がこれかと納得できる。

「まぁ、若槻(わかつき)さんはどうなのかは知らないけど、寝ていたから・・・・・・」

 安河内さんは補足情報にそう言う。にしても相変わらず若槻さんは寝ていたんだな…。

「そっか………バレたと言うか、気づかれたというか………」

「まず単刀直入のところになるけど、君が模試で1位を取ったことで一縷があんなことになったのは知っていたの?」

「………うん」

 これは事実以外のなにものでもない。

「知っててなんで調べようと思ったの?」

 西門さんは詰め寄る。これはどこまで話すべきか悩ましいが、上手に言葉を選ぶ必要があるかもしれない。

「さっきも言ったけど、関心で調べただけだよ。………少なくとも自分で勝手に、動いた」

「この際ハッキリ聞くけど、貴方は自分がこの状況を救った英雄として賞賛を受けたかったの?」

 少し含みのある、それこそ刃にも近しい棘で僕にそんな言葉を安河内さんは投げる。鋭利でチクチクする。

「それは決してない。確かに一縷のことは当時までは噂くらいの認識で、関心があって調べていくうちに、初めて実情を理解したのがほとんどだったんだ」

「さっきから関心関心って言っているけど、どの立場からそんな言葉を出すの?いやね、随分とマスゴミの常套句みたいに語っているからさ」

 またも安河内さんから棘のある口撃、容赦ないなぁ………。これは程ほどに情報開示をした方がいいかもしれない。

「う~ん。まぁこれは隠すつもりはないけどさ、僕は犯罪研究部って変わった部活に入っていたんだよね」

 手堅いところから開示することにした。

「犯罪研究部?」

 安河内さんは首を傾げる。知らないのかな?

「どうだろう、一応今この場にいる3人は揃って都内の能学園から来ている。2人は陸奥にそういった部活があるって話は聞いた事ある?」

「いいえ」

「同じく知らないわ」

 認知度は多少あるものだと思っていたが勘違いだったか……。

「そっか………。まぁとにかく、僕はそこに所属していたけどね、当時の先輩から色々と情報を調べるノウハウを教わったんだ。それで色々と資料を作っては発表しているなんて活動をしていたんだよ」

「まさか、一縷と二数の事も調べて発表したの……?」

 安河内さんは怯えたような表情をした。

「そんなことはしないよ。他の鳥籠学園のことは触れても良いが表沙汰にしないことは部内で決まっていた。調べてもいいが頭の中に留めること、むやみやたらに発信しないことは鉄則だったよ。だから、誓って2人が不利益被ることはしていない。というか、そもそもの話、僕がこの件を調べるようになったのは、ここに来てからなんだよね」

「ここに来てから? ってことはそれまでは調べたことが無かったと…?」

 西門さんは少し疑わしいような目で見ているがこれについては嘘偽りないから押し通すしかない。

「うん。順を追って説明するとね、まず委員会決めの日、解散した後2人がもめていた。それは松本さんが確認している。僕も色々とあって保健室にいたから安河内さんが運ばれてくるのは目撃したし、それに、僕はたまたま安河内さんの部屋を知っていたから安否確認で夕方部屋に行ったよね」

「ええ、それはそうね」

 安河内さんの表情に特に変化はなかった。少しはバツの悪い顔をするものだと思っていた。

「元々一縷と二敷の関係については、同じ都内の鳥籠学園ということもあってでも耳にしていたけど、正直なところ興味関心は薄かった。だから思い切って、その問題を知ろうと思った。まぁ、今思えば2人がこの先ギスギスしないために何かできないものか、というおせっかいの精神だったのかもしれないね」

「おせっかい、ねぇ………それでわざわざ蹴られたよね貴方」

 西門さんはそう言うが、それ別に今ここでする話ではないよね? だなんて思わず声にしてしまいそうだった。

「なるほどね、きっかけや意図については理解できたわ。でもこれは結局、私と西門の問題であって君は関係のないことじゃない?」

「ほら、この間先生も言ってたじゃん。大学も一緒になるから少なくとも5年の付き合いはあるって。それ抜きにしたって、目の前でわだかまりが出来ている関係性の人たちを見るのは決まっていい気分じゃないからね」

「意外と優しいんだね」

 本日3回目の安河内さん口撃。意外はさすがに余計だよね? だなんて思わず声にしてしまいそうだった。

「じゃあまぁ、そういうことにして。それで、その時点ではどうだったの? 君の模試結果とこの問題の関係についての認識は」

 安河内さんは話を切り替え、模試の件に触れる。

「調べる前、例の一級の話題が出たときのニュースは、『一縷の教師陣が生徒に罵詈雑言を言う全校集会の録音が流出して、それで大バッシングを受けて大組閣が行われた」という話しか報道されていなかった。だから例の全校集会が開いた原因・きっかけ・背景まではわかっていなかった。だけど後に、『一縷の生徒誰もが模試で全国一位を取れなかったことが事のきっかけである』と判明して、それが報じられた。この二つの出来事は大体1週間ほどだったけど、背景が報道されたあたりからは、時期的に近しいこともあって僕の関与の可能性も薄々だけど意識をしていたなぁ。ただ確信たるものがなかったから半信半疑だったね。だけど今、調べたことで正式に僕が関与していることが判明した」

「決め手は何だったの?」

 安河内さんは尋ねる。

「受けた模試だよ。ほら模試って一口に言っても色々な予備校が主催しているじゃん。一縷がどれ程の模試を受けさせているかは定かではないけど、いやなんとなく網羅しきって受けさせているんじゃないかなとは思う。それを踏まえたうえで例の全校集会前に結果の出た試を手当たり次第調べたんだ。俊大模試だけは僕が1位で他は一縷の誰か、それこそ安河内さんもいた、が一位を取っていたこと。あとは実際に流出した音声もたまたま見つけたけど、報道されていないところも含まれたフルバージョンを聞いたら『俊大模試が~』って言っていたこと。この2つが決め手だよ」

「すごい、そこまで調べることができたのね……なるほどね………うん、確かにあの模試結果、篠原さんが見せた模試は俊大模試だったわ。今でも覚えているよ、私が久しぶりに1位を取れなかった模試だったからね」

「ねぇ少し余談になるけど、佐藤君ってその模試の時だけ1位でそれ以外は良くて9~13位くらいだと聞いているわ」

 西門さんは横から別の質問を飛ばす。しかし……

「本当に篠原さんには秘密が通じないなぁ……」

 情報通を自負していたがそこまで把握されているとさすがに苦笑がもれる。

「その1位ってたまたま取れた結果なの?」

「あぁ、そうだね………うん、ハッキリ言おう。()()()()()()()。ちゃんと狙って取った」

「意識して? それじゃあ普段の模試はどういう受け方をしているの?」

 安河内さんは聞く。

「この間、2人も見たであろう忘却状態、あれが起きない限り、安定してもっと上の順位は狙うのも容易いよ、それこそ毎回1位常連になれる。だけど僕としては、それで目立ってしまうことが億劫でね。だから目立たないように大体この順位に入るだろうという目星をつけて回答していた。だからわざと空欄を作ったり、誤答したりしていた」

「そう……だったのね」

 安河内さんの言葉がわかりやすくも詰まる。

「今こうして、事件を調べて、2人それぞれに話を聞いていて、そうだね………僕がもう少し早くにでもやっていれば2人の悲劇もわだかまりも生まれなかったかもしれない、なんてそんなことを思うよ」

「え?」「は?」

 2人の声が重なる。

「「この子の悲劇?」」

 互いに指をさし合い、さらに言葉が重なる。もう仲良しレベルだよ。

「なんだ、話してなかったのか………いや、話したところでどうしようもないか。安河内さんも、西門さんもそれぞれの友人が自殺している。しかも同時期に」

「………え?」

「は?」

 安河内さんは少し間を空けてようやく返せた言葉を見つける。一方の西門さんは間もなくすぐに声が漏れる。

「しかも加害者は、本当になんという偶然か、一緒だった。1人、たぶん主犯格でね」

「アイツが………ってこと?」

 西門さんは絞り切って声が出る。

「これは推測の話、時系列としては西門さんの友人をいたぶった後に安河内さんの友人に手を出したって感じかな。いや、もしかしたら並行でやっていて、安河内さんの方は中長期的にやっていたかもしれないね」

 加害者の名前は出していないが、「恐らく奴であろう」と2人の中での認識になっている。

「まぁでも色々とあって、今は逮捕されて裁判中じゃないのかな?」

 僕は西門さんの方を向いて話しかける。これは以前彼女から直接聞いた話であるからだ。

「ええ、前にサオ………その友人の母から連絡が来て、少し聞いたけどそんなところらしいわ。そろそろ判決が出るとは聞いている」

「そうだったのね………アイツ、例の全校集会直前にリンチに遭って大怪我したとは話は聞いているけど、そうなんだ逮捕されたんだね」

「え、一縷にいながらそれを知らなかったの?」

「貴女には言っていないけど、私、例の大組閣中に休学したんだよね。それでえーっと………半年くらいは学校から距離取っていたよ。だから今こうして学校に通えているのも久しぶりだし、嬉しい話だよね」

「そう………なのね」

 西門さんは天を仰ぐ。きっとこの先、彼女の口からは加害者である赤池(あかいけ) アツシに大怪我を負わせたのが自分自身であるとは言わないたろう。

言ったところで、まず説明がつかないことが優先的にあがってくる。西門さんは本当に体が華奢だ。その華奢な体躯から重傷を負わせるほどのことが出来ようかという疑問が生まれる。実際安河内さんも奴の事に関しては『集団リンチ』という言葉を使っていたからなおの事であろう。

 それに僕もこれについては未だ合点の付く答えを見つけていない以上、掘り下げが難しいとも思っている。だから今は語らず、どちらの肩も持たない中立にいるのがちょうどいいかもしれない。

「話を戻すけど、さっき満点を取ることや1位を取ることは簡単だけど今まではわざと回避していたのよね」

 安河内さんは沈黙を長続きさせない意図か話を切り出す。

「そうだね」

「じゃあなんでその時に限って、本気になって1位を取ったの?」

「……………う〜ん」

 回答に困る。

 どうしてあの時に限って意図的に1位を狙ったのかについてだが、ちゃんとした理由はある。ただしそれは………あまり大々的に言えたものではない。

 僕も調べていくうちに思った。たかが()()のためにちゃんと受けたら、よそ様の学校では大トラブルを招く事態になっていたことを。

 まぁでも………篠原さんにはそのこと見抜いているからなあ。だとしても、どこで仕入れてきたんだその情報。

 いや、それにしたってこれは堂々と言えない事情だ。さて、どう誤魔化すか。

「当時の担任に見透かされて、指摘されたんだ。『お前わざと手を抜いているな?』って。僕もそんなわざと間違えたり空欄を出したりするのを細かく意識していなかったからね。そこを見抜かれたんだよね~」

それっぽい嘘をついてみる。

「例えば…『この問題が正解できるなら、この問題も正解できるだろ?』みたいなこと?」

 よし安河内さんが乗ってくれた。

「そう!それそれ!本当にそう言われた!」

「なんか急に語気強い………」

「まあまあ。とにかくそういうことがあったから、さすがに嘘もつけなくてちゃんと解いてみてくれないか?ってなって実際にやったらそうなったの」

「そっか、うん、わかった。それで以降はどうしたの?」

 よし、話が上手い事進んだ。

「その指摘した先生に記憶の事とかいろいろと事情を説明して、納得はしてくれた。向こうとしても『とりあえずは本番で合格すればいい』と言われて、以降は変わらず程々の順位を維持していたよ」

「なんか最初に聞いた時は随分と間があったけど、その割には事情話す際は饒舌だったような………まぁ、そういうことにしておきましょう。少なくともそちらの教諭の何気ないアドバイスがきっかけだったのであればね」

 ふぅ、事なきを得たか?少し含みのある言い方をされたのが妙に気になるが。

「大体のことはわかったわ。ごめん、あともう一つ余談なんだけど、その記憶のことについては病院とかに診てもらっているの?」

 すっかり西門さんは口数が減って、安河内さんが話してばかりになった。

「もちろん、ここに来る前までは定期的に通院はしていたよ。ただ結局のところ定期健診ばっかりで服薬もなし。内容も平行線で『脳に異常はない』とのこと。この島に来る直前に一度通院したけど、問題ないからもう来なくてもいいだなんて言われたなぁ」

「………そっか、そうなのね」

 やっとのことで西門さんは口を開く。

「だいぶ話が逸れたね。経線の話だったに戻そう。それで後は開べていくうちに自分が受けた模試との繋がりに気づいたけど、そこからは知ったことを各々に話して少しでも和解の機会があればなぁと思った。ただ自分から話すきっかけを伺っていたところに偶然、西門さんがいたのを目にして話をした」

「西門から先に話をしたんだ」

 少し不満気に安河内さんは言う。

「うん。でもこれに関しては『偶然見かけたから』ってのもあるから、安河内さんが先だった可能性も十分にはあった。ただ、かといって安河内さんが最初になった場合、果たしてその次に西門さんのもとに行こうとは思えたかどうかは………タラレバの話だよ」

「ふぅ~ん」

「だけどそれが結果的に良かったのかな。西門さんと話して分かったことは、僕の培ってきたテクだけでは調べ切れなかったことだらけだった。つまるところ、僕の技量で何でも知れると思い上がっていたが、完全にわかりきったことばかりじゃなかった。だから本当の真実、事者である人たちの口からの情報も得ようと思ったんだ」

「それであの日、私のもとへ来たのね。納得したわ。でも私と話したとき、西門のことについては一言も触れていなかったけど」

「僕の中では既存新規の情報が混ぜこぜの状態だったからね。そんな半端でわかりきったと言い切るのはおこがましいもいいところだ。だからあの当時はできる限り安河内さんの方から話してもらうことを軸にしたんだ」

「なるほどね、意図は十分わかったわ……それで、君は各々の情報を持っているわけだけど、そこからどうするつもりだったの?」

 あぁ、やはりその質問に辿り着いてしまうか。そう思ってしまった。

「そうだね。まぁ僕のとった行動って結局のところ、『自分の調べる力は程度に限界があった。それを知るために一旦問題を当人から聞いてみよう』ってことが軸にあった、それでカ量不足だと実感した。それで各々から実際の様子を聞いて、『あぁ~、頑張れば和解もできそうだがどうしたものか』と悩んでいて、正直匙を投げてもいいと思えてきた」

「それは逃げようとしたってこと?」

 さっきまで落ち着いていたと思ったらまた安河内さんはこうきつい言葉を………チクチクするよ。

「逃げようとねぇ……確かにそうなのかもしれない。そもそもこの思惑、2人の関係をどうこうしたことについては誰にも吐露していない僕のエゴ。最初からなかったことにしても良かったし、結局のところ僕は確かに当事者に近いかもしれないけど、どちらかと言えば部外者であるからそこまで首を突っ込む必要はあるのかという話でもあると思った。遡れば委員会決め後の諍いも、もとはと言えば2人が………主に西門さんがきっかけだからね。まあそれに食らいついた安河内さんにも落ち度があるけれど」

「それは……」

 西門さんの言葉が詰まる。大方、返す言葉が見当たらないといったところか。

「調べて、話を聞いて、これは僕が仲介しなければ解決できないのかと考えていたら、そうじゃない気がしたんだよね」

「その心は?」

 安河内さんは聞く。

「西門さんは確かに一縷の被害者だ。だけど、安河内さんから直接被害を受けたわけではない。一方、安河内さん自身も一級の被害者と言っても過言ではない、少なくとも彼女の口から加客者と思えるような発言はないけれど、話を聞く限りそれをひたししたいような事情も伺えなかったよ」

「それはそうね………貴女と会うのはこのゼミからだからね」

 安河内さんはそう言う。

「えぇ、確かに彼女の言う通りだわ」

 西門さんは安河内さんの言葉に同意する。

「これは勝手な思い込みだけど、2人は大枠が合致した者同士だ。何かきっかけがあれば、今はギスギスしていてもどこかで分かり合える者同士になれると思うんだ。だけどその役目に僕は必要ない」

 2人は完全に黙りこくってしまった。これはこれで言葉でねじ伏せたような気分になって、少し不安不快だ。

「でも……でも佐藤君がこうして話してくれなかったらわからないことも多かったわ」

 安河内さんはしばらくの沈黙を破る一言を発する。

「ん?」

 僕は彼女の方を見る。

「私は、確かに傍から見たら一縷の生徒で優等生の反面、【一縷の闇】の関係者である。ただそれは私が加害者か被害者かどちらかなんて知るよしもないでしょうね、話さない限りは」

 安河内さんはゆらゆらと体を揺らしながら話す。これは加害者のエリア、被害者のエリアどちら側の人間なのかわからないことの暗示だろうか、なんて勝手な解釈をした。

「………そうね」

 西門さんは何か思う節があるようだ。その想いが間合いから伝わる。だけどこれを僕から聞くなんて無作法なことはしたくないな。だから僕はそっと彼女を見守った。

「話は済んだ様子ですか?」

 どんよりとした空気感を破るように、安河内さんと西門さんの後ろに立っていたのは綾部さん。そういえば彼女も試験作成の一員だったなぁと思った。

「先生からの課題、それについて打ち合わせをしたくて2人を探していたけれど、すぐに見つかって良かった」

「あれ、綾部さん。もうそんな時間だった?」

 西門さんは何事もなかったかのように話しているが取り繕っているのがこちらからは伝わる。

「そんな時間も何も………事前に話していた時間から10分経っているわ」

「え!?もしかして待たしていた!?」

 安河内さんは慌てる様子でバッと椅子から立ち上がる。

「待っても全然来ないからまた喧嘩でもしているか?って探していたら見つけたという感じです。待ったか待ってないかで言ったら確かに待ったにはなりますが、お二人がそこまで時間にルーズではないと思っていたのですぐに動きました」

 なんだろうその信用しているようでしていないものは。

「そっかー、ごめんごめん。それじゃあ佐藤君、私たちはこれで失礼するよ」

「ええそうね、大方聞きたいことは聞けたかな。私も少しはすっきりした」

 安河内さんはそう言って、西門さんと共に去って行った。だが安河内さんは足を止めて、こっちを振り返る。

「あ、そうそう。どこかで西門()()とゆっくり話してみる。この機会を無駄にしたくないか

らね」

 そんな言葉を聞いて、西門さんもどこか穏やかな表情を浮かべていた。

「そっか、うん、なるべく喧嘩はしないようにね」

「大丈夫~」

 手を振りながら安河内さんたちは去って行った。

「ふぅ、しかし何が起こるかと思ったが、とりあえずはいい形でおさまったのかな」

 この行く末にやはり僕はいらないかった。あとは彼女たち次第ということになるのだろう。

「………ん?」

 僕のゼミターミナルが振動する。取り出すとメッセージが1件、西門さんだった。

 内容を見ると、少し吹き出してしまった。

「フフッ、なるほどね………なら」

 僕は西門さんからの質問にメッセージで返答した。

一縷の闇編はあともう一つ挟んで終局です。

佐藤君が1位を取った模試の名前は色々と考えてしました。ちなみに候補ですが…

・北進模試

・学究模試

などがありました。


ちなみに、佐藤君が模試1位を取った理由ですが、あの場ではお茶を濁しています様子ですね。

ですが彼の発言からもある通り「篠原さんは知っている」とあります。

つまりそこに答えがあります。

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