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42人の教室  作者: 夏空 新
第6章

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71/88

43:■■■vs■■■①

《8:31/3年42組教室》

「ルールはいたっていシンプル。ここにいる 42人の中から2人が出て、1対1で闘う。お互いに自分の知っている・覚えている句を詠み人と併せて言い合う。これで先に言えなくなった方が負け。もちろんこれについて、何もなしに勝敗を決めるのも野暮ったいよな。張り合いをつけるために、今回は勝った人に対しての景品を用意した!」

 景品?何のことだろう?

「みんなこの島に来てからゼミターミナルに何かしらのポイントがあることには気づいているよな?もちろんもう何人かは使用しているとは思うが」

 ポイントについては確かに心当たりがある。モノレールで移動したときと、あとは買い物で少々使ったことがあるくらいで、少しばかりお世話になっている。

「そういや名前言ってなかったね、NC ポイントって言うんだけどね。今度改めてちゃんと説明するけど、大雑把に言えばそれは君たちの生活費でもある大事なこの島限定の金銭だからね」

 NC?何の略称だろうか。少し思案したが全く思いつかなかった。

「で~………今回勝った人にはなんと!100NC ポイント付与します!ちなみに負けても参加質として25NC ポイントあげます!」

 以前から気にしていたがどうもこのポイント、現金換算したらとんでもない額なのではないかと思っている。

 初期に付与された分を更にもらえるとなると………大変でかい話だなぁとは感じる。

 負けても少しは稼げる、悪くない話だ。

「先生、質問」

 挙手したのは仮屋君だった。

「なんだ仮屋?」

「1対1で詠み人含め 100首だが、互いに 50首正しく言えた場合はどうなるンだ?」

「お、ちょうどそれを説明しようとしたところだよ。そうなったら引き分けでお互いに 5ONCポイント付与ってことにしようと思う」

 最低 25 ポイント、最高100ポイント。悪くない数字だなあ。でもこれに参加できるのは2人だから選ばれた人のみになるわけだが、参加しない40人と差ができる。その埋め合わせはどうなるんだろう?

「ちなみに参加しない40人については置いてきぼりにするのも可哀そうだから、もちろん救済措置は準備しているよ。その際には安河内、西門、綾部、君たち3人の出番になる」

 先生の挙げた3人は共通して、試験作成委員会だ。ということは今回の百人一首に絡めた試験を作るということか。

「百人一首に関する試験を作って、残り37人にはそれを受けてもらう。点数配分とかは調整するが、最終的にそれを受けて得点に応じて最大 30NCポイント付与するように考えている」

 なるほど、挑めば25・50・100のいずれか。挑まなくとも頑張れば最大30が確約。そう思うとどちらにせよ悪い話ではないのだなと思う。

「とまぁ説明はこんな感じだ。何か質問はあるか?」

「はい」

 挙手したのは安河内さんだ。先生は「安河内」と声をかけ、発言権を譲る。

「まず試験作成についてはわかりましたが、私たち 3人の参加権などはどうなるのですか?」

「そうだな。先に言うと今回の対決での参加権は申し訳ないが無い。そして試験作成には1週間期間を設けることにしている。受験者の勉強時間を含めてね。その間に作ってもらうが、残念ながらこれも受験する権利はない。そりゃあ答えもわかる状況だからな。こうなると、3人は不平等な状況になるからな。ということで40NCポイント付与するという形になる」

「なるほど………それで不公平さを調整するということですね」

「おや? ポイントが足りないとでも?」

「いえ、そんなことではありませんよ。わかりました。では私たち試験作成3人はその対決の参加権は無いとして、そしたら残り39人になりますが、参加権はどう決める予定ですか?」

 手を振りながら否定の仕草をする。

「おっ、そうだな。これについてはみんなの疑問が解消されたら決めようと思っている。もちろん手段はこっちで準備済みさ。ということで、他に質問のある人はいるか?」

 誰も手を上げなかった。僕自身もこれ以上聞くことはないだろうと思った。

「じゃあ早速、決めようか、参加者を」

 そう言って先生は教卓の中から箱を一つ取り出す。よく見たら上面に手が入る穴があった。それはもうまぎれもないーーー

「くじ引きだ」

 そして先生は箱を片手で持ち、上下左右に軽く揺らす。箱の中からカサカサと軽い音が聞こえる。

「この中には42人の生徒の名前がある。例えば………」

 先生は箱の穴に手を入れて一枚の紙切れを取る。二つ折りになっていて、それを開くと「結城 天音」と手書きの文字が書かれている。黒板の書体からで推測するのは難しいが、恐らく先生の字だろうと察しがついていた。先生は結城さんの名前が書かれたくじを再び折り、箱の中に戻した。

「こんな感じで、くじが入っている。42人分のね。だけどまず先に、この対決に挑みたくない人もいるだろうからそれを確認しようかなとは思っている。『ちょっと僕には厳しいです~」って気持ちが少しでもあれば遠慮なく言ってくれてもいいよ。この箱から参加拒否の人を万が一引いたら、それは引き直しと言うことでね、やって行こうと思う。ああ、ごめん、さっき42人分って言ったけど嘘ついたな。ここに試験作成の3人は最初から抜いてある。えっと………ほらここにね」

 そう言って先生は教卓から3枚の紙切れを出して、開く。そこには「安河内凛」「西門 美希」「綾部 魅華」の名前があった。

 3人のくじを再び教卓に戻し、静かに箱を置いて、一呼吸ついたところで、先生は「さて」と言い、

「僕は無理、私は無理と、参加を希望しない人挙手!」と続けて言った。

 意外なことにたくさんの人が手を上げて、むしろ上げない方を列挙した方が早いほどだ。

 手を上げなかった、つまりは参加表明をしたのは僕、仮屋君、森君、書風君、一条君の5人だった。

「意外と参加者少ないなぁ。これだったら事前に聞いておけば引き直しの時間短縮できたかもしれないな~………いやはや失敬失敬。それじゃあくじを引くぞ、もしかしたらここでグダグダになるかもしれないがご承知を」

 そう言って先生はくじを引く。紙切れ一枚取り開くと、わかりやすいほど焼いた顔をした。

「おぉ!?ラッキー!一発で参加者引けた!仮屋だ!」

 くじの紙には確かに「仮屋 彰」の名前があった。

「とりあえず仮屋、前に来てくれ」

 そう言われると仮屋君はふぅっと一つ溜息をつき、立ち上がって教壇の方へ行った。

「さてと次だが、仮屋、お前が指名してくれないか?」

「はァ?」

 仮屋君はポケットに手を入れながら、悪態をついて聞き返す。

「さっき手を上げなかった人の中から『この人となら張り合える!』って思える人を指名してみてくれ。まぁ本音を言うとくじを引くのが面倒なんだよね………」

「ンだよそれ………はァ。どうせ、俺に勝てる人はいませんよここにはァ」

「お、強気な自信家だね」

「先生、俺のことどこまで知ってッかは知ったことじゃねェが………誰にしたって、張り合える奴はいねェよ。こちとら、全部丸暗記している身だからな」

 確かに仮屋君が読書家なのは存じている話だが、全部覚えていると…………本当か?

 僕は言うまでもないけれど、それだけの大見得を切るというブラフなのか? いや、でも偶然選ばれたにしては威勢が良すぎるから、決してそれは虚勢とは言い難い。

「う~ん、こうしたらここまで挑発的な仮屋に挑戦したい人はいるか?」

「いねェと思いますよ、先生。悪いですが、そのポイントは俺が全て掻っいます」

 やはり、仮屋君の威勢に怖気づいてしまったか、誰も手を上げない様子だった。

 むしろこの展開は僕にとって好都合かもしれない。今この場での目的は闘いを通じての友好を築く。果たして今の内容でそんなうまくいくことはあるかと、眉唾に感じている。

 しかし、奇しくも僕の目的である仮屋君との関係値を築く上ではいい機会なのかもしれない。だけどなんだろう、事が上手いこと進んでいるというか、まるでこの展開がシナリオ通り過ぎるという気持ちも同時にある。

 僕にとっては都合のいい展開ではあるが、それにしても、ご都合展開もいいところだと思ってしまう。

素直にこの展開に乗っかるべきか、悩ましい。今この場で手を上げたら、なんだか向こうの思うつぼのように感じてしまう。

 だけど…………いや、僕の立場、松本さんの助手という点を思えば、例え向こうの組んだシナリオであったとしても、役割として乗っかるべきなのかもしれない。

 少しのためらいという残り火は未だかすかにあるが、僕は思い切って手を上げた。

「お、佐藤。挑むか、仮屋に」

「………フン」

 仮屋君は鼻で笑う、見下した目で僕を見た。この間は『よくわからない睨まれ』が効かなくて、何か思う節はあるはずだ。だけどそれを一切感じさせない得意げな顔をしている。

 彼はどうやら僕では相手にならないと思っているのか? だが、君は僕のことを知らない。だから強気でいられるのだ。しかし残念ながらこの戦いは最悪の場合を除けば50:50のドローになるだろう。そう最悪の場合………忘却状態にさえならなければだ。

 この島に来てからは運よく、なんとか、一度たりとも、それに遭遇していない。それもあって、自ら闘いの場に飛び込むのは非常にリスキーではある。

 忘却状態になるきっかけやスパンは今までも覚えているからこそわかるが、本当に偶発的・突発的なもので、規則や法則がなく、きっかけとも思えることも心当たりがない。

 こんな不安がある中での挑戦だが、弱気になっちゃだめだ。

「仮屋君。その自信に関して根拠はわかるよ。でも、君だけができると思い上がらない方が良いよ」

 僕なりの強気な言葉で返す。

「勝手に言ってろ。お前の負けは確実だ」

「その威勢がどこまで続くか、楽しみだよ」

 僕は自分にとっての強気な笑みを浮かべる。

「よし、じゃあ仮屋と佐藤の対決になるが、異論はないな?」

 天堂先生の呼びかけに対し、誰も反応しなかった。

「うん、そしたら…………仮屋は一旦席に戻って」

 仮屋君は言われるや否や、すぐに席に戻った。そして先生は先の曲がった鉄の棒を取り出し、天井に向けて何かをひっかけ、下に引っ張る。

 すると薄いスクリーンが下りてきた。

「まぁさ、これから俺と仮屋、佐藤は移動してもらうけど、みんなそれじゃ退屈だよな。そう思って」

 数卓からリモコンを取り出す。そして天井にある、モニターに向けて操作する。

スクリーンに映されたのはどこかの教室だ。

「ここで二人の対決を中継しているから、観戦にね」

 すごい、ここまで手の込んだ………なんだかここまでくると一周回って気合も入る思いだ。

「ちなみに場所はちょうどこの真下のフロアにある空き教室だよ」

 そんなに遠くないんだ………。もっとちゃんとした別室かと思っていた。

「ということで~、二人とも行こうか。みんなはここで二人の行く末を見守ってね。あぁくれぐれもどっちが勝つかについての賭けは抜きでね、予想まではしていいけれど〜」

 そう言って、僕らは教室を後にした。

 僕と仮屋君の闘いの火蓋が切られたのだった。

ということで佐藤君vs仮屋君開戦!


このタイトルは以降そうなりますがあえて伏せていました。正式には「タケルvsアキラ」です。

次回以降はこのタイトルになります。



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