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42人の教室  作者: 夏空 新
第6章

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70/88

42:夢、夢、夢、夢

《4月11日/7:27/321号室》

 おはようございます。佐藤です。

 さて昨晩の話し合いの結果、僕の課題は仮屋君との関係値を築くことであるという結論に至ったわけだ。確かにこの方法だったら彼の目の真相について知ることもできるだろう。身をもって味わってほしいだなんて偉そうなことを言って心肺停止状態になったら、それはそれで笑えない話だ。

「さてと………どうしたものかなぁ………」

 ベッドの上で考え込んで早数時間が経過していた。

 実は今起きたわけではなく、たまたま5時頃に目が覚めて、それ以降なかなか寝付けず、ずっと天井かターミナルかを見ることの繰り返しだった。

 目が覚めた理由は、夢を見てそれに飛び起きたからだ。しかも夢の内容は覚えている。だけど京極 ココアの事件ではない。

 それではないが、だがそれはそれで変な内容だった。


 暗夜の雨の山奥、足元もぬかるんでいる。木々は風で横に揺れ、葉が舞う。目の前には誰かがいた。僕より少し背の高い誰か。顔には黒色のクレヨンか何かで塗りつぶされたように隠れてわからなかった。ただその誰かは右手にナイフを持っていた。その刃先には赤いものが滴っているのがわかる。もしかしてそれは血なのか?そしてその誰かは僕に向かって襲ってくる。

 その刹那、ぬかるんでいた足元は崩れ、そのまま滑落していった。


 というところで目が覚めた。ここまでディティールのはっきりした夢は、京極ココアの時に見る夢以来なのかもしれない。だけど不思議なことに、新鮮味を感じない。

それはつまり、僕はこの場面をどこかで見た記憶がある。小説?アニメ?マンガ?映画?ドラマ?………いや、どれでもない。もしかして僕自身の経験?いや、そんなはずは………と言いたいが、これはあれか、中学生以前の記憶喪失と関係しているのか?でも僕の記憶喪失のきっかけは交通事故だったはず。そう考えると余計にいつそのシチュエーションに立ち会ったのか疑問符でいっぱいだ。

 つまりはわからないことだらけ。だけど僕なんかが、いや誰でもそうか、あんな夜も更けた土砂降りの山奥に行くことなんてあるのだろうか?山に行くことについては疑問に感じない。登山中の突然の雨も、ありえるシチュエーションだろう、心当たりがないけれど。

 ただ夜というシチュエーションが余計頭を悩ませる。真っ暗な中、山に行くことはあるのだろうか。例えば車移動をしていて、途中から山道を徒歩で行くだなんてことはあるかもしれないけれど、それも結局心当たりがない。

「わからないなあ。本当に、わからない」

 だがどうしもて「変な夢だ」と割り切って、見なかった知らなかったフリをしたいと思っていた。だけど同時に、この夢は何か大事な予感がすると思っていて、山の滑落事故とか行方不明の話で何か情報があるかなとネットで調べていた。

 しかし残念ながら、僕の中で納得のいく情報を得ることはできなかった。

 登山できる山だなんて僕の住んでいる近辺、それは実家の方も含めて、数は限られるはずだ。といいつつ少し広めにとって関東圏の山に着目して行方不明の事件などを眺めていた。

 だが調べる限りの名前はない。仮に行方不明者の名前があったとしても亡くなっているのが関の山。山の特徴がわかれば、探しやすかったのかもしれない。だが僕の夢に出てきた舞台は、決定的なものがないよくある山道。さらには夜で雨、奥行きや眺めもわかるはずがない。

「なんだったんだろうなぁ〜、あの夢は」

 色々と思えばあの夢自体も、そういえば初めて見る内容じゃないような、過去にも見ているような気がしてくる。

 そうだ、この島に来た時、変な夢を見て飛び起きた朝があった。その時は夢の内容を覚えていない、何か変なものを見た気分程度だったが、もしかしたら同じ内容だったのか…………。

 そんなことはさておき、いい加減ベッドから降りるとするか。時間を見ればとうに7時半をだいぶ過ぎているところだった。


《7:51/321号室前》

着替え終わり、部屋を出ると松本さんが立って待っていた。

「おはよう、佐藤君」

「松本さん、おはよう」

「昨晩は眠れなかったのかい? いつもにしては目があまり開いていないようだが?」

「あぁ………わかる?実は変な夢を見てさ…」

「夢か」

「正直よくわかんないけど話すよ、歩きながらね」

 そう言って僕らは食事会場へと向かった。僕の夢の話を添えて。


《7:56/食事会場》

「なるほどね、それはまた随分と変な夢を見たのね」

 松本さんはジャムの乗った食パンを一口加えてそう言った。

「本当にね」

「夢って、記憶を整理する過程で見るものだなんてことを聞いた事はあるが…………果たして、そのようなシチュエーションを目の当たりにしたのかについては引っかかるわね」

「どうなんだろうね。確かに松本さんの言っていることは僕も耳にはしたことはあるけれど、僕の中では断片的なものが一つになっで”夢”という形に成るんじゃないかなぁとは思っているんだ」

「断片的、ねぇ…………」

「例えばさっき話した僕の夢を例にすると、『雨』というシチュエーションと『山』というシチュエーションが合体して舞台を作る、みたいなね」

「そうだとしても、『君が誰かに襲われる状況』は記憶にあるの?」

「そ、それは………」

「失礼しまして、面白そうな話をしているじゃ~ん」

 言葉に詰まりかけたとき、僕と松本さんの座っている席の端からひょこっと顔を出したのは鹿島君だた。

「わぁ!?」

 びっくりして変な声が出てしまった。

「おっと、驚かせてごめんごめん、それとおはよう」

 気だるげな声を出しながら鹿島(かしま)君はニコニコと笑みを浮かべて挨拶をする。ただ相変わらず黒マスクをつけているため、口元の表情まではわからない。

「それよりも、今君たちさ、夢の話していたよね?俺も関心があってね、夢について」

「鹿島君って、えっと…オーラだったよね、それがメインとばかり思っていたけど」

「もちろんそれもあるけれど、実は夢にも興味があるんだよね~」

「待って、佐藤君。前に自己紹介した時から気になってはいたが、そのオーラってのは何だい?」

 あぁそうだった、初めて僕と島君が会ったときは松本さんと植物園に行ったときだけど、あの時松本さんは一緒にいた羽入さんと話をしていて鹿島君とは話をしていなかったんだ。

 確かに自己紹介の時にそんな話をしていたが、誰も突っ込まなかったね……。まぁ変わり者と思われて終わったのかな。僕は知っていたから、よくもまぁ人前でその話題を出せたなという気持ちしかなかった。

「あ、あぁそれはあとで話すとして…………で、鹿島君の夢への関心についてだけど」

「君たちは気づいていなさそうだから話すとね、実は今この場では『夢』に関しての話題で持ちきりなんだ」

 この場と言うと、他の生徒もということか。

 夢のことで僕だけじゃなく他の人たちも同じ話をするなんて。こんな偶然があるのだろうか?

「夢についてのメカニズムは、過去に軽く本で学んだ程度の浅い知識だけど、明確にはわかっていないらしい。少なくともさっき松本さんが言った通り、記憶の整理のために見るもその一つには含まれているとされているよ。あとはシミュレーションみたいなのも一説にはあるね」

「なるほどね」

「ただ一つ。これはある学者さんが言った仮説なんだけど『夢は満足したいという願望の現れ』だとも言っている」

 指を1本立てながらそう言う。

「願望かあ…………鹿島君は僕の夢の話を聞いていないと思うけど、少なくとも僕はこの夢を見て満足感とかそういうものを得たとは感じないなぁ……」

「悪夢も含めて、その仮説が支持されているんだ。ただそこから言えることは、隠れた感情や記憶が掘り起こされている可能性もあるということだ。」

「隠れた感情や記憶、か………………」

 もしその説が正しいのであれば、昨晩見た夢はやはり僕の過去に関係する出来事だったのだろか。でも今はそこまで重点的に気にしないでおこう。

「俺も実際、記憶に残る夢を見ている。ただ…………君と同じだ、あまりいい気分はしない夢だったよ。明晰夢で、これは夢だと自覚はしながらいたけど、かえって不愉快だったからもう自ら目を覚ますことで対応したよ」

「…………なるほどね」」

 僕は視線を松本さんに向ける。コップに入っている牛乳を飲んではいるが、話は聞いている様子だった。

 それどころか、表情から「そろそろ話を振られる頃か」と思わせる、()()()()()というしたり顔をしていた。

「私も例に漏れずよ。だけどそうね…………私の場合はあまり嫌な気分にはならなかったか

な」

「そっか。うん、実際君のオーラは晴れやかな色だ。嘘りなく、本当にいい夢を見れたんだね」

「で、何なんだそのオーラと言うのは」

「あぁえっとね」

 さすがに松本さんもこの件に連れを切らしたかと思い、僕は説明した。鹿島君の目には人の感情がオーラのように靄がかかって可視化できることについて話した。

「なるほどね、大雑把に言えば人の感情が見えるということだね」

「うん。俺の目には色々な人の色々な感情が見えるんだ」

「いつから見えるようになったんだい? あぁ、もし長話するなら、隣、座ってもいいよ」

「そんなに長話しないですぐにお暇するよ。でもそうだね、いつからだろう、正直覚えていないんだ」

「気が付いたら見えていた、というところか」

「そんなところ。でもこうして気味悪がずに、むしろ関心を示す人は初めてだなあ。松本さんを初めて見たとき、そうだね植物園で羽入(はにゅう)さんと話していた場面だったけど、とても興味深そうに羽入さんの話を聞いているなぁって色から伝わっていたよ。その時から変わらず、君は何事にも関心を持つ人なんだね」

「なるほど、鹿島君の目にはそう映っているのか。さすがだね、その通りだよ。ここのゼミ生は君含め面白い人でいっぱいだからね、わくわくすることでいっぱいなのは事実だからね」

「そっか、松本さんにとっては興味のあることで溢れかえっているのかな」

「かもしれないね」

 そう言って、鹿島君は「ではまた」と一言放ち、その場を去ろうとしたが

「あぁ、待ってくれ鹿島君」

 松本さんはその足を止めた。鹿島君もビタッと止まり「何かな?」と言いながら振り返る。

「気になっていたんだが、そのマスクはどうしてつけているのかな?初めて会った時も、自己紹介の時も、今こうしている時も、私は君の口元を見たことが無いんだが…………」

「あぁねえ。実はちょっとね、訳あり。でも、ごめん、今この場では言えないかなぁ。いつかどこかでね」

 そう言って、鹿島君は去ったが今度はどこか逃げていくようなそんな足取りで、足早だった。

「少し詮索しすぎたかしら」

 松本さんは肩をすぼめながら、残った牛乳を飲み干した。

 でも確かに僕も引っかかっていた。鹿島君を見た回数は確かに片手で数えるに足るほどだが、その出会ったすべてで必ず黒マスクをつけている。口元を見たことが無い。

「まぁ、どこかで心を開いたら話してくれるんじゃないかな」

「君と仮屋君みたいにね」

「ウッ。そうなるように頑張ります…………」

 ジト目で睨まれる。

 恐らく松本さんの中ではジャブのつもりで言っているだろうがだいぶボディーブローなことを言われて少しダメージを受けた気持ちになった。


《8:29/3年42組》

 今日は普通に学校のある日だ。と言っても授業とかがあるわけでもなく、「ただ来い」と言われているだけで、本当にこれから何をするのかまったくもってわからない。

 そもそもここに来て数日だが、授業と言えることを全く受けていない。

 教科担当という委員会があるからどこかで機会が設けられるのかもしれないが、それはいつになるのやら。

 そんなこんなで本当に僕らはこのゼミが終わったらちゃんと神皇大学に入学できるのだろうか。

 複雑な思いが交錯している現状である。


 キーンコーンカーンコーン


 教室内に響くチャイム音。鳴りやみ、少しの静寂ののち教室のドアが開く。

 天堂先生の登場だ。

「おはよう諸君!昨晩はいい夢見れたかい?」

 奇しくも朝に夢の話をしていたが、どうしてわざわざそれを強調するんだ?猜疑心が増して止まない。

「とまあ、それは置いといて。お前たちもそろそろこの島に慣れてきて、どうだ?友人はできたか?」

 友人かぁ。そう言うべき人は確かに何人かできたなぁ。でもまだ一度も話していない人も半数以上はいるなぁと思っている。

「ここに集まっている面々は確かに今年限りの付き合いだが、一応みんな神皇大学に行くことは決定だからな、最短でも5年は付き合いがあるんだ。だからいい感じに、いい関係値を築いてほしい」

 さりげなく言ったが、本当に神皇大学に進学することは確定なのか!?

 入試とかその辺りはどうなるのだろうか、疑問は残る一方だが、とりあえず話の続きを開いてみよう。

「ただな、友人の作り方というのは会話から意気投合して、なんてのもあるが必ずしもそれで築けるとは限らない」

 会話から意気投合して、僕がこの島に来てからの大半は会話を通じて知り合った人が多いが、どういうことだろうか。

「そこでだ。一つ面白いことをしようと思う。闘いを通じての関係値の構築だ!」

 闘いを通じて?それを聞くと、まるで昔流行った河川敷で殴り合いをして、二人寝そべって笑いながら友情を築くなんてベタベタな展明を想像したが、まさかそういうことだろうか…? 首を傾げてしまう。

「あの先生…………これから何をしようとしているのかさっぱり見当もつかないのですが……」

 結城さんが恐る恐る手を上げながら話す。

「お、結城、よくぞ聞いてくれた!いや~、ここまで反応ゼロだったから心配していたよ~。とまぁそれは置いといて、今の俺の言い方だと、たぶん殴り合いをして友情を結ぶとかそういうことを考えている人もいるだろうが、そ〜〜〜んな血生臭いことはしないよ、()()()

 まだね?僕はこの三文字が引っかかる。なんだか意味深長なワードにも思えた。

「まぁでも、もうすでに何人かはソレをやってるみたいだけど〜〜~……今は目を瞑っておくよ」

 少なくとも僕と湊君、もしかしたら安河内さんと西門さんのことも含めて言っているのかもしれない。

「でも今回はそういう力は抜き、必要なのは…………知識!」

 そう言って天堂先生は黒板の方を振り向き、チョークを握り何かを書き始めた。

 書き終わり、読めるようにはけるとある4文字が目に入る。


 百人一首


「これで知識の勝負をしてもらおうと思う」

 百人一首の知識とはどういうことか?

やっと4月11日………過去と現在の交錯が大事になるから仕方ないとはいえ遅いね……………


ということでここから物語は少しずつ動きます。


ちなみに朝食での会話で、松本さんも夢を見たと言っていますがその内容は前の隙間で語られた夢です。

少なくとも彼女にとってはいい夢だったようですね。

ただ一方で佐藤君は奇妙すぎて不気味な夢、鹿島君は不愉快になる夢を見ているとのことで………こうも偶然みんな見た夢を覚えるものなのでしょうかね?

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