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42人の教室  作者: 夏空 新
第5章

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40:夜もすがらの報告会-目と目

《19:46/321号室》

「さてと、残りの課題はというと……江戸川と七尾で起きたこと、だね」

 松本さんは腕を組みながら話を続ける。

「とりあえず七尾の件について話すね。事前調査後に、今日の午後に水樹さんのところを尋ねて話を聞いてみたよ」

「おお、それまたずいぶんと進んだ話だね」

「だいぶ濃い内容だった。まぁ勿体ぶらずに話すとーーー」

 僕は彼女から聞いた例の襲撃事件での一幕について話をした。

 所々で松本さんも引っかかるところに突っ込みを入れたがわかるところは回答して、わからないところは「僕もわからない」と返した。如何せんこの話題については、主に終盤、話してくれた水樹さんの憶測や可能性なども含まれた内容であったため、決めつけで語ればミスリードに繋がりかねないからだ。

「と、彼女に聞いたところとしてはそんな感じだったね」

「なるほどね、事のあらましについては大体わかったわ。そうか、三浦君はもともと七尾の生徒であり、そして政治家の娘だったのね」

「ちなみに松本さんは三浦事務次官の存在は?」

「無論知っているとも、ニュースで度々見かけていたからね。ただ直接的な繋がりがあることは考えもしなかったわ、そこまで珍しい名字でもないし。前情報なしに2人の名前を見たところで『家族だ!』とそう早々と決めつけずに『たまたま同じ名前だった』で片づけていたさ」

「まぁそうだよね………」

 正直なところ、僕も調べる前からその政治家の名前は知っていたが、三浦さんのお父さんだなんて思いもしなかった。

「話を戻して、彼女の目はその三浦事務次官の機密情報を開示するためのキーになっているっていうのが大きなテーマになっていた。それをめぐって一連の騒動があった。襲撃事件はその一つであったと。だがそうとなれば目が狙われる問題についてはこの島にいる限り安心してもいいだろう。しかし………何故その事件から今日に至る、特に相瀬への転入後だ、彼女を狙った襲繋がなかたのだろうか。これは特にひっかかるな。彼女の転入先だった相瀬では何も起きなかったのかい?」

「まだ完全に調べ切っていないけど、それっぽい事件はないね」 

「そうか………それ以外にも引っかかることが多く、者と共通している点もあるわね。例えば、事件当日のその名護(なご)という男の立ち回りについてだ。彼はあの日、一体何をしたかったのか発言と行動がうも一致していないところが多すぎる。ただ、君の言う考察というか可能性か、私は全然アリだとも考える。若干突飛でも、無視していいものかとは思うさ」

 松本さんはベッドの上にそのまま寝転がり、天井を見上げながら話を続ける。

「当日の流れが単純に小手試しのようなものだとしたら、以後の手際についてはよくあっさりとしている。三浦君の目についても容易に狙えたはずだ。三浦君の知り合いの探偵を名乗る彼女の話では後日に水樹君の仲間を2人殺しているようだね。それに拠点地はもぬけの殻になったとか。随分と迅速というか………むしろあの襲撃事件も本来はこうあるべきであったのじゃないかしら? それなのに話を聞く限りでは、どうもあの日の襲撃事件だ(・)け(・)が(・)お粗末すぎる」

 一応、ダーティー・ハリーの弾丸のメンバーについてはこの場では語っていない。特に京極 ココア、彼女の名前がどうしても引っかかる。今ここで彼女の名前を伏せておいて、この話がある程度着地したところで相談しようとした意図があっての僕の判断だ。まぁ彼女のことだ、見透かしているかもしれないけれど。

「彼女の話によれば、のことが中心になるけどね」

「う~ん………なんだか納得できないわね。とりあえずすぐに思うところとしては、ハッカ一の彼女についてだ。最初はスカウト目的で彼女に声をかけたんだよね、結局は断ったけれど。でも一度断ったからといってそのあとにあっさりと殺すなんて薄情なことをするのかしら?」

「これについては水樹さんでもわからないひっそりと起きた事件みたいだから何ともね。ちなみに松本さんは今のところその件についてはどう考えているの?」

 これについては彼女の専売特許である推測も聞いてみたいものだとワンクッション置く気持ちで尋ねる。

「そうね。まず確定的なことを言うと、やはり『三浦君の襲撃事件』と『ハッカー君の死亡事件』。この二つの出来事には明(・)確(・)な(・)違(・)い(・)がある。目の生体認証の紐づけを消すことができたことね」

「まぁ素直に考えればそれが真っ先にたどり着くだろう」

「だけどそれで引っかかることはあって、やはりその腕前をみすみす手放したことだね。聞けば二つの出来事の間はそんなにブランクがなかったのだろう? 熱心にしつこく勧誘したわけでもない。一声かけて断られたから『じゃあ死ね』と。恐らく今後もハッキングされる危険性があるからそうやったんだろうね。生かす選択肢を与えたのに、断ったから死んだ…………気分の良い話じゃないわ」

 両手を伸ばしていたが、掌は拳に変わっていた。

「うん、そうだね」

「それと私はこの件、名護とハッカー君の問題と思っているが、神宮(じんぐう) コヤス。彼も一枚噛んでいるとみているわ」

 バッと起き上がって、そう言う。起き上がる際の長い髪が綺麗に靡いていた。

「あぁ、三浦さんの目と彼の父親の情報を紐づけさせた男だね」

「その男にとって、ハッカー君の腕前は惹かれるものがあると同時に、邪魔でもあると思っていたんじゃないかしら。実際、それを破られていたとしたら、奴にとってこれ以上の屈辱はあるまいよ、と。こういうシナリオならパッと思いつくわ」

「うん、そうだね。筋の通った納得できる展開だ。だとすると自ずと出てくる可能性が………」

「えぇ。名護と神宮の繋がりだね。三浦君の襲撃事件の時、名護は「ある人物からの依頼』と名護を単独指名して依頼しているように伺えるわ。実際、そのハッカー君も依頼人=神宮であると疑っている発言もあったわね」

「うん、そうだね。ただこれについては全体を俯瞰した上での推測で発言があったとしても必ずしも神宮とは決まりきったわけじゃないからね・・・」

「それもそうね。ところで少し話は逸れるんだが、その神宮がいたというパンドラだったわね? それは本当にあるのかしら? 私はたまたまそういうのに詳しい同業者がポロっと口にしていたところを聞いた程度であるのかどうかすら眉唾物だったけれど………実際のところどうなの?」

「結論、ある」

「ほう、言い切りだね。ということは、ご存じ、だったのかな?」

「まあね。今までこういうネット調査するときに利用していた一つだからね。もちろんダークウェブの一つにすぎないけれどね」

「なるほど、お互い最低ラインとして名前は知っていると、ただ佐藤君は実際に見たことがあるという感じだね。まぁでも確かにこれは一般周知されているものでもないのも確かだわ。私たちお互いが特殊な状況下だったからこそ知れた話。件のハッカー君も調べ上げるところからハッキングまで行えていたのだから随分と達者なものだわね」

「情報収集能力に関してはきっと………いや、間違いなく僕より上だったかもしれないね」

「そんな優秀な一人がもうこの世にいないのは大変口惜しいわね」

「そうだね………」

「さてと、じゃあ次の事項は、江戸川の件だね」

「江戸川の件だね。これもまぁ側然というかね、少しかまをかけてみたらあることがわかったんだ」

「あること?」

 松本さんは首を傾げながらキョトンとした表情をする。

 僕は図書館での出来事、特に仮屋君に睨まれた時のことについて話した。

「睨まれた時に圧を感じた………ねえ」

「松本さんはどう思う?」

「こればかりは実際に見ないとなってところもあるけど、そんなことで本当に心肺停止状態にまで至るのかってところだね」

 あぁ、正直さっきの水樹さんの件に関しての突飛な話題を多少は受け入れたから、これも、やはり突飛な話題である以上スムーズに話が進むものかと思ったけど、ダメだったみたいだ。

「やっぱそうだよね………」

「それにこの話をややこしくさせているのは、君も原因の一つだ」

「えっ!?なんで!?」

「そりゃあそうでしょ。だって君はそれに耐えることができたんだろう?しかも『デプス』だったわね………デプスというと深度、か。彼の睨む力にはある程度のレベルがあった。君は2と5を味わったんだよね」

「まぁ………うん」

「違いとかはどうだったの?」

「確かに5の方が強いものを感じたよ」

「もっと具体的な感じで」

 凄い手厳しい詰問だ……。中々言葉で表現をするのは難しい。

「う~~~〜ん.………青筋がゾワッとして足も動けなくなったんだよね、あとは目の前に仮屋君がとても強大な壁というか異形のものというか、見上げるようなナニカを感じたね」

「つまりは高圧的の延長線といってもいいかもしれないわね」

 いろんな表現をたった一言で締められた。

「これに関しては実際に君も受けてみたらわかると思う。正直その一言で片づけていいものかとは思うよ」

「そう………まぁ一旦そういうこととして、君はどういうわけかそれに耐えられたんだ。これで『いや~、本当に心臓が止まって死ぬかと思ったよ~』だなんて言ったら、やっぱり彼がこの事件にかかわっていたんだね、で大方結論を出しても良かったわ。それに聞けば仮屋君自身もどうして君にその睨みが効かないのか酷く動揺している様子だったわね」

「むしろその動揺もヒントになりそうではあるけどね」

「ヒント? ああ、なるほど。ソレが効くときは最悪の場合心肺停止状態になるってこね。確かにまぁそれは、そうね……」

 松本さんの表情はやはり苦しまぎれなものを表している。

「納得いっていない顔だね」

「やっぱりどうしてもね、君がどうして耐えれたのかの理屈がわからなすぎてね。君ってほら………ごめんね、悪く言うつもりはないのだけれど、穏やかで大人しくてそこまで強くはないじゃない? そのフィジカ ルとかそういう意味で」

「う~~~~~~ん、悔しいけど反論はないね」

 僕は天を仰いで反論とか諸々諦めることにした。

 そして今日の僕からの報告が終わり、今後のプランニングについて、あとは………そうだね、やはりあの事も話した方が良いのかもしれない。

報告編はやはり時ヶ淵に大半もっていかれた。それもそうさ、水樹さんの件も仮屋君の件もすでに前に話していたからね。

さて、次は多少長くなりそうだぞ?

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