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42人の教室  作者: 夏空 新
第5章

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38:それはそう、突飛な発想

《4月10日/16:09/322号室》

「というのが私とサクちゃんとの間に起きた事件よ」

 淡々と水樹さんは自分の過去話を語っていた。しかしまぁ気になることだらけだ………。

「そっか……」

 僕の口から出た言葉はそれだけだった。

「それを踏まえて聞きたいことがある?」

「そうだね………たくさん聞きたいことあるけど、まず一ついい?」

「うん、何かな?」

「その……ダーティハリーの弾丸だったっけ? そのメンバー全員の写真ってある?」

「写真?………まぁ、あるよ?」

「見せてもらえる?」

「どうしてそんなことを」

「ちょっと…気になることがあってね」

 僕の頭の中で彼女の過去話を聞いた時、確かに目まぐるしいほどのことを体験したんだってことは十分にわかっていたが、どうしても引っかかることがあった。どうして()()()()()がそこに出てくるんだと、それがまるでノイズのように残っていて三浦さんのこととかそれらのことも気にはするが僕の中でのプライオリティーがそれを解決するように薦めている。

「はい、これ。大事な写真なんだよね。実家にもこれを印刷して額にいれたものがあるんだ」

 水樹さんはゼミターミナルの画面を見せる。彼女含めた四人が映っている。ずっと座り込みながらパソコンを操作少女、考え事をしているように物憂げな顔をしている少女。そして………()()()()()()。だけど僕の知っている彼女はそんな合気道の心得とか得ている様子ではなかったし、体も十分に鍛えている様子ではなかった。じゃあ彼女は一体……?

「えっと、パソコン操作しているのが火釜さん、考え事しているようにみえるのが月夜野さんで……」

「あと1人がココたん……京極 ココアよ」

 京極 ココア。彼女はそう言った。僕は彼女の名前を知っている。それもそうだ。あのスクラップブックに載っていた僕の学校、陸奥で起きた事件の主犯で自殺した人間だ。もうこの世にはいないと思っていた。本当は生きていたかもしれないかって? 僕は確かに見ているんだ、彼女の死体を。初めて見た、死体だ。僕は彼女の死に際から死ぬ瞬間、そして人間の肉塊が弾ける音をちゃんと耳にしている。今でも夢に出るほどのものだ。

「本当に今の質問については意図が見えないわね……」

「あぁごめん、気にしないで」

「そう……じゃあ他に何か質問がある?」

「そうだね。今三浦さんの目ってどうなっているの?」

「それは今でも認証キーになっているかってことだよね?」

「うん」

「結論から言うとわからない。元々そういうのはナっちゃんに任せっきりだったからね。彼女は抗ったみたいだけどそこに不意打ちで彼女は殺されたから結果は聞けなかった。遺言だって無いからね」

「そっか」

「私からも質問させて。佐藤君は私の話を聞いてどう思う? サクちゃんの今の左目のことは?」

「う~ん……僕は未だに彼女の目は認証キーになっていると思うよ。確かに高校生であっても腕があればハッキングなんてお手の物かもしれないね」

 実際僕らの身近にそれを得意としている人がいるからね。

「だけど殺された。一度はスカウトしようとした彼女を、空蝉組は」

「ノゾみんの話によると、だけどね。実際のところ誰が彼女を殺したかは定かではないんだよ」

「でも月夜野さんって探偵なんでしょ?」

「彼女が言うにはね。本当かどうかは定かではないけど……」

「う~ん………なんかバッジみたいなの持っていたとかある?」

「バッジ? ………いや特には」

「そうなんだ」

「話が脱線しているわよ、佐藤君」

「あぁごめんごめん。だからつまりあと一歩のところで殺されたんじゃないかと思うよ」

「そう…なんだね」

「………あともう一つ引っかかるというか」

「ん?」

「その……名護 ドリュウだったよね。彼の言動と実際の立ち回りが気になる、特に最後の方」

「最後の方?」

「名護って男はさ、三浦さんの目を抉るためにナイフを使おうとしていたんだよね? しかも聞く限りそれをメインに襲っている様子だった。だけど実際は……」

「隠し刃と言えばいいのかしらね。それがどうしたの?」

「それもあるけどもう一つ、名護は『切れ味を試したい』とか言っていたけど実際はどうだった?」

「………刺すとか投げるとかだったわ」

「うん。そうなんだ」

「言われてみれば……実際彼女の今ある傷はあのナイフじゃなかった。隠し刃の方だった」

「僕はさ、こうも考えたんだ。実は名護が言っていたナイフの方はブラフでメインはその隠し刃だったのではないかってね」

「え?」

「ごめんね、今から話すことは君が、水樹さんが見て感じた話を客観的に見た僕の意見だ。それもだいぶ突飛な……ね。それを了承した上で聞いて欲しい」

「う、うん」

「その隠し刃には目に見えない何かが入っていた」

「………は?」

「はははっ、どうしてこんなことを考えるのか自分でも理解できないけどね。例えばそうだね、左目を溶かす毒とか、爆破させる爆弾とか……ね」

「そんな非現実的なこと……ありえるの?」

「わからない、ただ……変だと思うことがたった一つあるんだ」

「ん?」

「三浦さんの目ってそれなりに価値があるって、名護の行動から確信したんだよね。でも………その事件以降彼女が同じように襲われたって話はあった? 僕はない………と思うよ」

「それは………………確かに」

「『確かに』? もしかして本人に聞いたの?」

「えぇ、向こうでの生活はどうだった? って聞いた時、前みたいな事件は起きなかった。七尾にいた頃と変わらない穏やかな日常がほとんどだったって。あぁでも私がいなくて寂しかった、会いに行くか凄い悩んでいたみたい」

 最後の情報は蛇足だなぁ……。

「なるほどね、ちなみにスクラップブックだと彼女のいた相瀬では七尾の時に類似した襲撃事件はまったくなかった。まぁ代わりに別の事件があったみたいだけど…」

「その事件は…?」

「いや、まだ調べていないから彼女に関係があるかどうかは定かではないよ」

 でも今までの傾向を考えるとスクラップブックの新聞記事は知る限り僕らに関係している内容が多く占めている気がする。じゃあ……三浦さんは二度目の事件に巻き込まれたということになるのか? まだ内容すらしっかりと見たわけでも裏付けるものも手元にないから多く語ることはないか。

「そう、なのね……」

「ごめん、水樹さん。変な推論だよね」

「………でもなんでだろう。確かに納得できる私もいる」

「水樹さん?」

「そうだよね。あの時は事件のこと、その後のことでぐちゃぐちゃになって気付かなかったけど………どうしてサクちゃんは追われなくなったの? 私やココたんのいない場所を狙わずに」

「それが引っかかったんだよね。しかもその男が言うには勝てると確信していて撤退した。実際どうだった?」

「……私の友達2人を容易く殺めた」

「察するになんだけど、名護がやりたかったことは君に三浦さんのこと、特に彼女の左目の関心を逸らさせたかったんじゃないかな?」

「………」

 水樹さんはうつむいた。だが僕は話をやめず続けた。

「火釜さんの死はやはり解除にあと一歩だったところとスカウトを断ったことで生きる価値がないと判断されたから殺された。京極さんは……復讐で襲ってきたからついでで殺した。結果論にはなるけどこれで君たちが迂闊に空蝉組や三浦さんを追わないように諦めをつけるようになる。そうすることで襲撃事件当時の立ち回りを思い出さないようにした」

「……つまり私は奴の手の上で踊らされていたのね」

「僕の推測だけどね」

 水樹さんは天を仰いだ。今彼女は何を思っているのだろうか。僕としてはだいぶ突飛な話をしている。納得しているのか? それとも?

「でも確かに……納得できる節はある」

「更に言うと、名護の事件当時の立ち回りが用意周到な割には雑な要素が多いと思った。だけど以後の動きは直接なのか間接なのかは不明にせよ手際よくしっかりとやっているのが変なんだよね。水樹さん含めたみんなが女子高生だから手を抜いたと言っているけど、その割にはお粗末なやり口に感じるところが節々にあるように感じるんだ。まぁ僕はその場に居合わせたわけではないから言い切るのも違うけどさ」

「でも佐藤君の話を聞いていると納得できるよ。でもそうすると………」

「待って。これは仮説、冷静に考えてそんな都合よく起動する毒や爆弾があるのかと思うよ」

「それはまぁそうね……でもその仮説を無視してはいけない私がいるの」

「それは………去年の事件での悔しさとかから」

「えぇ。どんなに突飛でも、まだこうして彼女が危険に晒されているなら、次こそは私が守る番だよ」

 いや、さっきの話を聞く限り十分守っているようにも聞こえるんだけどなぁ……。でもきっとその時に負った彼女の目の傷が目の前の彼女にとっての心の傷と同じものなのかもしれない。それはそう、可視化された傷跡でもあるのかもしれない。

「うん、そっか。じゃあ僕の質問は以上だよ。長いことお邪魔したね」

「別に構わないわ。佐藤君に話したことで気付けなかったこととか色々と見つけることができて、こう、心がスッキリしたよ」

「そっか。あんな突飛な話だったけど?」

「もうさっきから突飛突飛って、まぁ確かにちょっと異質ではあるけど、もっとこう自分の話に自信を持ったら?」

「うん……ありがとう。じゃあ僕はこれで」

 そう言って僕は水樹さんの部屋をあとにした。


 だいぶ話し込んでいたみたいだ。夕ご飯が終わったら松本さんと報告の話をしないと。

 と考えつつ時が経って、夕ご飯の時間がやってきた。僕一人でゆっくり食事を済ませていたところに彼女とばったり会えたので終わってしばらくしたら部屋に来てほしいことを伝える。松本さんは二つ返事で了承してくれた。


《19:13/321号室》

「いやはや佐藤君。この部屋に来るのがつい昨日で、もはやここが私の部屋ではないかと錯覚したよ」

 松本さんが僕のベッドに横になりながらそう言った。

「なら今晩はここで寝る? 僕は別に構わないけど」

「君と? 2人で? イン・ザ・ベッド?」

「松本さんがいいって言うんだったら僕は気にせず寝るけど?」

「そんな無粋なことをしたら向こうに戻った時、君の子が怒るんじゃないか?」

「う~ん、そうだろうねぇ」

「もっと彼女を大切にしてあげなさい、佐藤君。まぁ会ったこともないから件の彼女がどんな人かは知らないけれどもね」

「言われなくともそうしますとも、まぁ今のは君の冗談に乗っただけだよ」

「…そうか。私のジョークもいよいよ君には通じにくくなったか」

「そういうこと」

「さて前座はここまでで、今日ここに呼び出したのは報告したいことがまとまったのかい?」

「あぁうん。3つあったあれだね」

「………待って、もしかして全部終わったの?」

「完全に終わったかどうかは君にも判断を委ねるけど、僕の中ではある程度の回答は用意できたよ」

「なるほど。じゃあ順を追ってお願いしようか」

 こうして僕の報告会が幕を開ける。

ここでついに物語のキーになる存在"京極 ココア"が具体的になってきましたね。佐藤君にとって京極さんの死は直接見た、そして止められなかった出来事であるためそれなりのトラウマを抱えています。そのため、彼の学校での事件のことになると話を淀ませていたのはこれがあったからなのです。隙間で佐藤君の過去回想はこれが主軸になります。ですがそれ以外にも彼の過去には語るべきことがあれやこれやとあるんですよね……ははは、これだから主人公は手が焼けるぜ。


それは置いといて、水樹さんと三浦さんの馴れ初めなどが明らかになり、そして彼女は今トラウマを乗り越え変わろうとしている最中です。三浦さんの盾になれるのか、それとも………今後の動向が楽しみですね。

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