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42人の教室  作者: 夏空 新
第3章
34/81

17:混沌の委員会決め 前編

「さてと、委員会についてだが次の通りになる」

 と言って先生は黒板に文字を書き連ねる。

・学級委員長(1)

・学級副委員長(1)

・書記(1)

・教師担当-国語(2)

・教師担当-数学(2)

・教師担当-英語(2)

・教師担当-社会(2)

・教師担当-理科(2)

・試験作成(3)

・確認係(1)

・副確認係(2)

・寮長(1)

・副寮長(2)

・特別教室鍵管理(3)

・植物園管理(2)

・体育委員(2)

・図書委員(2)

・保健委員(3)

・全体補佐(3)

・掃除(5)

「あぁ、括弧内の数字は人数ね」

 一通り書き切った後にそう言った。言わなくてもそんなことくらいわかるがわざわざ言ってくれた。

「ここまでで質問ある人は?」

「はい、先生」

 結城さんが挙手して起立した。

「お、なんだろう結城さん」

「確認係ってなんですか? これだけ学級委員や寮長と同じ副があるようなんですが」

「いい質問だ。この確認係は万が一ゼミで死んだときにその死亡を確認する係だ」

 なんだそれ。僕は思わず言ってしまいそうになった。このゼミは死が前提なのか?

「なるほど……つまりはこのゼミは死が前提にあるんですね?」

「そうとは言っていないさ。億が一、兆が一。石橋を叩いて砕く勢いで用心しているだけさ」

「その係は大人である先生がやるべきでは? 私たち学生が背負うには荷が重すぎるようにも感じます」

「そうはいかないさ。これは特別なゼミ、ならば特別なことの一つ二つはやらせていいじゃないか。その魂胆でこれを設けたのさ」

「これ以上何を言っても無駄みたいですね…ではもう一つ……できれば他にも聞きたいところですが…副確認係は恐らく確認係が死んだ場合のスペアだと考えられますが、その副確認係も」

「まずはその考えは正しいことを伝えよう。確かに副確認係は確認係が死亡した場合のスペアになる。じゃあ質問の回答すると、それについてはこっちでアナウンスをして死亡宣言を出さしてもらう。おっと、どうやってわかったかについては秘密とさせていただくよ」

 ここまで確認係としての立場は理解できたがまだ引っかかるところがある。仮に死んだとして、誰かに確認されたらその後どうなるんだ? まさかそこから蘇生するのか? 考えても埒が明かないからこれ以上考えても無駄だしどこかのタイミングで聞いてみるしかないな。でもはぐらかされそうだなぁ…。

「………一旦わかりました」

 そう言って結城さんは着席した。

「他に質問はないかな? って言ってもみんなありそうにも思えるから各委員会のやることは掻い摘んで話すことにしよう。とりあえず初めに学級委員長だな。これは言わずもがな、この42人のリーダーになる存在だ。今のところの役目はないけどそんなところだ。じゃあ学級委員長を希望する人は挙手!」

 ここで挙手したのは2名だった。結城さんと桐山さんだった。

 結城さんは何となく向いているような気がした。実際今まで一番手に質問する場面が多くて先陣切って動いているところからそう思ったのだろう。ふと仮屋君と初めて会って会話した時のことがよぎる。その時、彼は彼女のことを「委員長面」と言っていたことを思い出す。

「おや、ワタクシ以外にいるとはね…」

 桐山さんはボソッとつぶやく。確かに彼女も女王(?)を目指しているからリーダーになりたいということか。

「いいですわミス結城、貴女にその座を譲りましょう」

「いいの? 桐山さんもなりたかったんじゃないの? このゼミのリーダーにさ」

「えぇ勿論。でもそれより興味のあるものがあったのでいいわ」

「じゃあ学級委員長は結城さんでいいかな? 桐山さんは大丈夫かな?」

「えぇミスター天堂。それでいいとワタクシは言っていますわ」

「よし、じゃあ学級委員長は結城 アマネに決定!」

 ここで拍手が沸く。

「それじゃあここから先は結城さんに進行を任せよっかな」

「わかりました」

 結城さんは言われるがまま、教卓前に立つ。まったく緊張している様子を出していない。

「さてと…ここで私からいきなりの提案なんだけどさ、先に桐山さんの希望している役職を決めてもいいかな? 折角譲ってくれたのに何もアドバンテージがないのが私気に入らなくて」

「あら随分と粋なことをして」

「いいかなみんな?」

 その場で異論を唱える者はいなかった。まぁ確かにすぐに譲った彼女に多少なりともアドバンテージを与えても誰も文句は言わないだろう。

「よし。じゃあ桐山さん、」

「では皆のお言葉に甘えて……確認係にでもなろうかしら」

「え、確認係?」

「えぇ。ワタクシの勝手なイメージですが、これは誰もやりたがらないものに思えたのでね。そういうものほど興味がわいてくるのよ」

「へ、へぇ~そうなんだ」

「ちなみに見たことのある死体についてはグランパの死化粧だけですわ」

「と、とりあえず確認係は彼女に決定でいいね!?」

 僕含め反対意見はなかった。ここまでがっつり詰められたら僕だって力技で状況を締めるしかない。

「よーし。確認係は桐山 ミクっと。さてと、ここからはどう決めていこうかな」

「とりあえず副委員長は結城ちゃんの指名でいいんじゃねぇのか? やっぱ副委員長つったら委員長を支える役割なんだしそれはどこの馬の骨なんかより結城ちゃんが信用できる奴の方が適任だと思うなぁ。なぁセンコーよ」

 と野次のように意見を発するのは天海君だった。口の悪さと見た目の割にいいこと言うなぁ。

「うん、天海君の言う通りだ。副がついているものは信頼できる相方だとやりやすいね」

「なるほどねぇ。じゃあシンく……湊君で」

「どうせ俺なんだろうなと思ったよ………わかった」

 シンくん呼びをストップしたけどそこまで来たら言い切ってもよかった気がする。

「それじゃあ副委員長は湊 シンタロウっと。じゃあこの流れで次に書記だね。先生、書記は何をするのですか?」

「今は特に役目無しだけど、例えばこういう決め事の時に書く時には仕事があるかなってくらい」

「なるほど、ってシンくんいつまで席に座っているの? 副委員長なら前に出るもんじゃないの?」

「シンくん呼びはやめろとあれほど言っただろ………行った方がいいか?」

「だって委員長を支えるもんでしょ。身近にいないと」

「都合よく解釈しやがって…」

 ため息交じりで湊君は教卓前に向かった。

「さてとシンくん。書記どうしよっか」

「俺に聞くな。希望取ればいいだろ」

「それもそっか………書記やりたい人ー!」

 誰も挙手しなかった。周りはと言えば誰が手を挙げるか伺っている様子でもある。

「希望なしか。どうするよ委員長様」

「シンくんはさ、この人なら適任って候補はいるの?」

「いねぇよ………まぁ強いて言うなら、佐藤とかどうよ?」

「佐藤君? あぁ……………確かに向いているかも」

 待て待て待て待て。どうしてそうなった。

「ってことで佐藤君、君は」

「湊君、なんで僕が書記に向いていると思ったの?」

「だってお前の字キレイ………そうに思ったから」

「字のキレイさを問うなら僕なんかよりほかの女性陣が適役では…?」

「実際書いてみたら? ちょうどこの書記の下にさ」

 結城さんは空白に指でトントンと叩く。

「いや、それ書いたら『はい、じゃあ君が書記ね』って言うオチじゃん」

「シンくんの評価程じゃなかったら別の人にするわよ」

「それはそれで非常にヤダよ……遠巻きに字が汚いと言われているみたいじゃん」

「で? 実際字はキレイなの?」

「書くか…」

 僕は渋々黒板まで来て自分の字を書くことにした。もちろん手は抜かずに。

「………すごい」

 結城さんの口から感嘆の声が漏れる。自分で言うのもあれだが字はだいぶキレイだと思っていた。だけどそんなことをいちいちドヤッて言うのも違うからあまり言ってはこなかった。確かに自慢にはしているがわざわざオープンにする必要はあるか? と眉唾物だった。

「な? 委員長様。こいつでいいじゃないか。お前らもどうよ?」

 教卓前に立って気付いた。反対の雰囲気を感じない。賛成の雰囲気しか感じない。

「じゃあ書記は佐藤君に決定。早速だけど書記としての仕事。今まで書いてきた名前のところを書き換えて欲しいなぁ」

「いや、結城さんの字もだいぶ良いと思うけど…」

「そんな字を見せられたら私の字が場違いになっちゃうわ」

「はぁ…」

 僕は言われるがまま結城さん、湊君、桐山さんのところを書き直した。書いている間に気付いたけど、湊君はどうして僕の字のことを知っていたのだろうか?

 彼と会ったのは遡ること3月31日のフェリー上にて。その時、字のこと以前にあまり僕と会話していなかった。

「さてと、次は教師担当だけど…」

「教師担当は係になった君たちが教壇に立って教えるっていうものだ。あぁ常にじゃなくて定期的にね。で、例えば国語とかは古文と現代文すべて合わせていることになるからね」

「とのことよ。それを踏まえたうえでじゃあまずは国語から」

「ではここは私の出番ですね。古文については滅法強い方ですよ」

 と手を挙げながら森園君は言った。

「私は現代文が凄い得意です。これでも文章を書くのが趣味みたいなものなので」

 続いて手を挙げたのは一条さんだった。

「他に希望したい人はいないかな?」

 沈黙。誰もいなかった。

「よーし、それじゃ教師担当の国語は森園君と一条さんに決定ね。佐藤君、名前書くのよろしくね」

「はーい」

 僕は黙々と黒板に2人の名前を書いた。

「次は数学……確か狗神さんは数学が得意だって言っていたよね?」

「ひぇ…! あっ、はい…」

「じゃあまず一人決まりじゃない? 狗神さんが他にやりたいところがあれば話は別になるけど」

「あの………えっと………す、すごい興味あってやりたかったです」

「大丈夫? 私無理強いしていない?」

「いえいえいえいえいえいえいえいえいえ。本心です」

 そこまでいえいえを言わなくても大丈夫だよ狗神さん。ほら、結城さんも若干焦っている。

「良かった~。じゃあまずは1人目ね。あともう1人は………希望者挙手!」

「んじゃ俺がやろっかな~」

「お、矢吹君。やってくれるの?」

「これでも数ⅢCまで学んでいるからね」

「数ⅢCって結構難しい科目じゃん! それができるってすごいね!」

「まぁ冗談ですけど、あ、数学が得意なのはホントだよ?」

「え、冗談?」

「あぁ、俺の頭じゃ数ⅡBが限界ですよ」

「そ、そっか。あっ、まさか狗神さんを狙ってこの係選んだとか!?」

「そんな下心があるかどうかはご想像におまかせしますよ。ま、信じるも信じないもあなた次第ってことでここはひとつ手を打ってください」

「胡散臭いわね」

 すごいな結城さん、同級生相手によくそんなこと言えるなぁ。

「よろしくね、狗神ちゃん」

「ひっ………よ、よろしくお願いします…」

 狗神さんもビビっているよ。

「よし数学はこれで決まりとして、次は英語か………日笠さん」

「It's my turnってことね」

 うわ、日笠さんの発音まるでネイティブ。流暢な英語だったなぁ。

「OKay。私が教師担当-英語やるね!」

「即決で助かるわ。あともう1人は………」

「ねぇねぇあまちゃん。私からの提案なんだけどほそやんはどうかな?」

「ほそやんって細谷さんのこと?」

「うん! 彼女って音楽聴くのが趣味だけど、洋楽も好きなんだよね」

「かなちゃん………えぇまぁ洋楽は聴くわね」

「歌詞の英語とかはわかるの?」

「わからない単語は英和辞典で調べれば大体解決するでしょ?」

「ね!? ほそやんが適任じゃない!?」

「確かに英文法の基本は出来ているしアリかもしれないわ。細谷さんはそれで大丈夫? 他に希望している係とかあれば優先的に細谷さんの希望も聞くけど」

「そうねぇ…特に希望しているところは考え中だったし、せっかくここまで向いているって言うならやろうかなぁ」

「その意気だ! ほそやん!」

「これで英語は終わり。次は社会だね」

「「はい」」

 同時に挙手が2つ。星君と初瀬川君だった。

「今回も被り無し。これも即決だね」

「初瀬川。お前は社会の中で何が得意なんだ?」

 星君は初瀬川君に向かってそう聞いた。

「俺か? 公民とか地理とかかな。歴史系は全くダメだ。覚えるのがかったるい」

「良かった俺は逆に公民とかが苦手で歴史が好きだからバランスがいいな」

「おう、そうだな。俺たち良いコンビになれそうだな」

 初瀬川君がエアーでグータッチをした。星君もそれを返すようにグータッチした。

「星君と初瀬川君、いい感じだね。さてと気を取り直して教師担当最後の理科」

「クククッ………愈々我の出番が訪れた様だな」

 霧雨さんがそう言いながら立ち上がった。

「立ったってことはやってくれるんだね!えっと………」

「ダークカタルシス・MR・ゼロだ」

「え、えっとだ、ダークカタルシス…?」

「あっ、彼女は霧雨 レイさんです。」

「こらーっ!佐藤君!私の本名を言うなと言っったやろがい!」

 初めて霧雨さんの素を見た気がする。

「あっ、彼女の名前は霧雨さんって言うんだね」

「ゲフンゲフン、今の瞬間は無限領域の中に沈むとて………我は錬金術師の叡智と森羅万象の生命について有象無象とあるグリモワールを読んできた。故に其処の智慧については無限である!」

「つ、つまり………」

「はいはーい、ここからは保護者の番。今のはつまり化学と生物ができるって意味です」

 と浅沼君が頭を掻きながら説明してくれた。

「な、なるほどー!」

「クッ、我が宿敵アサヌマよ。我の言葉を理解できるとは…!」

「で、彼女の保護者役は俺しかいないんで俺とこいつで教師担当-理科やります。俺は物理が得意なんで」

「えーっと……まぁそれでいいけどみんな異論はないかな」

「委員長、言っておきますがあのじゃじゃ馬の手綱は誰が握るんですか? 俺しかいないと思いますよ?」

「確かにそうね…」

「じゃじゃ馬とは無礼である! 我は魔王だぞ?」

 そんなこんなで教師担当は無事に各教科決まったのであった。しかしこの混沌とした係決めはまだ前半だと思うと怖いなぁ…。いや、前半が濃すぎただけでこのあとは地味かもしれない。

湊君と結城さん、なんで佐藤君の字の綺麗さを知っていたのでしょうね?


前々から感じているんですが、霧雨さんのセリフは独特故少し一考が必要になるのですが、これを考えている時が一番ノビノビとイキイキと書いている実感はあります。

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