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42人の教室  作者: 夏空 新
第2章

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27/86

12:4月2日 (3)

《10:05/廊下》

 図書室を一通り散策したあと、僕らは次なる場所を目指していた。と言ったものの、どこへ行こうかと悩んでいる。

「佐藤君、私は行く当てもない旅をするのも嫌いじゃないが、目的地があってもいいと思うわ」

「いきなり痛いところを突いてくるね」

「さっき君は図書室に行きたいと言って私はついてきたんだ。次は私の行きたいところで手を打とうか」

「それがいいね」

 そのまま僕は松本さんについていくことにした。


《10:09/体育館》

 僕らは2階にある体育館に向かった。

「松本さんが体育館に行きたいだなんて意外だね」

「そうかしら? 運動するの私は大好きなのよ」

「そうだったんだ、そういや松本さんって部活何していたの?」

「話していなかったわね。1年生の時、半年ほどテニス部にいたわ。やめてからは帰宅部」

「元テニス部ってことか………なんでまた半年でやめたの?」

「ちょっといろいろとやらかしてね………興味あるかい?」

「………いや、その話はお互いしんどそうだから別の機会に」

松本さんの表情が哀愁漂う雰囲気で踏み込みにくいと僕の中で判断した。

「英断ね。私もこれについてはあまり話したくはないな」

 そう言いながら松本さんはどこかへ向かったので僕もそれについていった。向かった先は体育準備室だった。なんでそこに向かうのだろうかと思ってしまった。

「あら? 佐藤君、ここ開いているわ」

 松本さんは遠慮なくドアを引きながらそう言った。

「本当だ」

「中はっと………極普通ね」

「そこに特別感を与えてもどうしようもないでしょ…」

 僕は躊躇なく中に入り、あるものを手にする。

「佐藤君? バスケットボールなんて持ってどうしたんだ?」

「あぁいや………バスケットボールみると無性に持ちたくなるんだよね」

「でも佐藤君は犯罪研究部だからバスケとは無縁だよね? ………いや、小中学校の頃にそういうクラブに入っていたとか?」

「もしかしたらそうかもしれないね。こればかりは『覚えていないからわからい』の一点張りになっちゃうからね」

「実際バスケはできるのかい?」

「そりゃ………」

 僕は話しながらボールを数回地面に叩き付けながら体育準備室を出て数十メートル離れたバスケットゴールに向かってシュートした。

「………入った」

 投げた瞬間確信した、ボールが入ると。

「えっ?」

 松本さんは驚いた様子で僕を見た。僕はそのままボールの軌道を見守る。そしてボールはそのままストンと軽い音を出してゴールに入る。

「御覧の通り、僕はバスケができるよ」

「……………いや、いやいやいや。できるの次元を超えているわ」

 ボールの弾む音が広い体育館に虚しく響いていた。僕はボールを回収に走っていった。

「佐藤君、やはり君はわかりやすいのにわからない人ね」

 松本さんのそんな一言は僕の耳に入らなかった。


《10:21/廊下》

 その後体育館を散策したが、更衣室、トレーニングルーム、道場などだけで特別なものに関して発見はなかった。

「まぁ、普通の体育館だったわね」

 松本さんはそう言った。

「そもそもこの一年のうちに使うのかな、体育館を」

「持ち物に体操着があったんだからゼロとは言えないでしょう」

「それもそっか」

「次はどこへ向かう?」

「松本さんの方は行きたい場所とかないの? 僕は行くところがないけど」

「そうね……植物園に図書室、体育館を見て回ったけど私としても満たされた気分になっているわ」

「でもまだ帰るには早すぎるって顔だね」

「佐藤君も少しは私のこと理解してきたようね」

「松本さんほどじゃないさ、君のその推測には勝てないよ」

「あら、これ以上私を褒めても何も出てこないわよ?」

「何も求めていないさ…」

 やはり松本さんは読めない少女だなと僕はふとそう思ってしまった。これはネガティブな意味ではなくそれこそ彼女の取柄なのだろうなというポジティブな意味だ。


《10:24/3階廊下》

「勢いで3階まで来たね」

 僕は吹き抜け部分を柵から覗いた。1階の床がよく見えるしか情報が得られなかった。

「この階は理科室があるのね」

 松本さんが指差す先には第1理科室、第2理科室と書かれたプレートがそれぞれの扉の前に掲示されている。

「ん? 佐藤君よ、今理科室に人影が見えなかったかい?」

「え、何急に。ちょっと怖い」

「いやいや心霊とかそういうのじゃなくて本当にさ」

 そう言って松本さんは躊躇なく理科室の方へと向かった。本当に躊躇がないなぁと感じながら僕も後を追いかけることにした。


《同刻/理科室前》

「やっぱり気のせいじゃなかったわ」

 松本さんが示した先には確かに理科室内を物色している少年が立っていた。ワイシャツを外に出して、紺色のフード付きパーカーを着ている彼は髪を掻きながら、備品の詳細をじっくりを眺めていた。

「挨拶でもしておくか」

 僕はそう言って、ドアをガラガラと開ける。その音に気付いて少年はこっちを向いた。

「おっと……君たちは初対面だね」

 と笑みを浮かべながら僕らの方に近づく。僕らも中に入りちょうど理科室の中央あたりに三人が集まる。

「初めまして、僕は佐藤 タケル。こっちは松本 アスカさん」

「よろしくな。俺は浅沼 ユウジ、えっと佐藤に松本だな、一年間よろしく!」

 そう言って浅沼君は握手を求めてきたので僕はそれに応えた。

「浅沼君はここで何をしていたのかい?」

 松本さんは彼に質問する。

「あぁえっと、前の学校にいた頃は理系で理科部に所属していたからつい癖で備品見たくなるんだよね。この機械は最新鋭なのかなぁとかさ」

「なるほどね。私も向こうにいた頃は理系だったけどそこまでの関心はなかったかな」

「ハハハッ。まぁこれは趣味の話だからなぁ。とは言ったものの本音を言うとここにいた理由はもう一つあるんだよな」

「もう一つ?」

 僕は首を傾げながら尋ねる。

「お前らは会ったか………あのバカに」

「あ、あのバカ?」

 思わず聞き返す。


「ここにおったか、浅沼よッ!」


 突然理科室内に鋭い女性が響く。浅沼君がため息をついて「見つかったよ…」と言っていたが僕はその声の方を向く。そこには船上の時に出会ったダークカタルシス・MR・ゼロこと霧雨さんが立っていた。

「あ、霧雨さん」

 僕は彼女の名を呼ぶ。

「なっ! 貴様、我が真名を唱えたな。それは禁忌に触れることに値するぞ! 今こそ我が左腕に眠る眷属四天王が一人のヴォルケ――――」

「だからその中二病をなんとかしろ」

 いつの間にか浅沼君は霧雨さんの近くにいて、優しい手刀で彼女の頭を小突く。

「ふぎゃ! な、なにをするんだー!」

「てかなぜ俺の居場所がわかった。適当か?」

「フッ、愚問だな………貴様と因るエニシは深いものだ。貴様の魂は実に刈り取りやすい形をしているからな…位置など容易いものよ」

「つまり適当だな」

「適当じゃない!」

 今の霧雨さんの語気が素に近かった。

「ふむ………浅沼君と霧雨君は知り合いのようだね、それも長い付き合いのある」

「小学校の頃からかな、近所づきあいで仲良くなったのは。その頃はまともだったんだかなぁ…」

「ちなみに霧雨さんが()()()()()()()のはいつから?」

「中学2年生」

「マジの中二病じゃん…」

 聞いてあきれた僕はドン引く。というか中学2年生からあれなのかと思う方の衝撃が大きい。

「憧れたものがあったみたいでね、詳細は知らないけど」

 彼女をここまでしたものが何かむしろ興味がわいてくる。

「高校からは別々になったのね」

「霧雨のところの家族が仕事の都合で引っ越すことになってな」

「なるほどね」

「てかお前らしれっと呼んでいるけどこいつの本名よくわかったな。頑なに名乗らないはずなのに」

「まぁ………そこの松本さんが推理してね」

 僕が松本さんの方を見ると彼女は得意げにブイサインをしていた。

「あれ推理すりゃ本名特定できんのかよ……魔王様よ、それは無しだろ」

「我が名、ダークカタルシス・MR・ゼロは暗黒天国より授けられた宿命ぞ。この闇の力を得る為に我は己の全てを棄て切った」

「あぁ確かにゼロってレイの零から取っていたか……ずっと聞いていたのにそのキャラ付けの方が気になりすぎて見落としていた……」

「悔しがることなどない浅沼よ。我が真名に辿り着くのは禁忌に値するのだ、貴様はせめて我のことを魔王の名として呼ぶがよ―――」

「やだよ霧雨」

「貴様も裏切るきかーッ!」

 しばらく僕らは理科室で談笑をしたのであった。


 それから僕らは学園を後にしてそれぞれの自由時間を過ごすことにした。

えぇ!?佐藤君はバスケがそんなに上手だったの!?

ということで体育館の一幕、いらないようでいるようで、この場面の意義については皆さんに委ねます。


そして初登場浅沼君。ツッコミ役であることや霧雨さんと幼馴染である設定は初期からあった設定です。やはり中二病キャラの横には常識的な人を置くのが鉄則ですよね?

推理小説の掟みたいにこのルールもあってもいいなと勝手ながら思っています。

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