ツメトホノオトマホウ
「やぁぁぁぁぁぁ!」
まずは一太刀入れに走り出した。
上段から斬りつける。一ヶ月剣を使っていなかったが、剣術はまだまだ健在のようだ。その次にすかさず斬り上げ、両手に持ち渾身の力で正面斬り。
「クッ、すこしはやるようだな。」
「五輝さん、すごい。」
「まだまだぁ!」
次に水平に切ろうと思ったとき、禍々しいオーラが見えた気がした。その瞬間、爪で引き裂かれた。幸い、ディフィマーの効果で無傷ではあったが自分にまとっていたオーラが消えた。
「五輝さん!炎の魂よ、今、目の前を焼き尽くせ!『ボウガフォ』」
ヒーナちゃんの手から出た炎が目の前を覆っていく。ヒーナちゃんって魔力どんだけあるの?高火力すぎでしょ。もうプリボーを倒したんじゃないの?
「ヒーナちゃん、今の魔法って。」
「あ、『ボウガフォ』のことですか?これはまあ、かなり高度な魔法です。」
「ほ、他にどんな魔法が使えるの?」
「えっと、『ハイランサー』とか、『グファイマ』とかですね。」
おいおい、なんかやばそうだぞ。
煙が消えてきた。プリボーは・・・ピンピンしています。一回の攻撃が強すぎるし、あんな魔法受けて怯まないなんて強すぎだろ。
「我を倒すのは不可能だぞ。」
たしかに、そうなのかもしれない。もう、ここで終わりなのか・・・
「五輝さん、しばらく一人で出来ますか?」
「どうしたの?」
「『ボウガフォ』はもともと範囲攻撃なのです。『ハイランサー』ならダメージを与えられるはずです。そして、最大限の魔力で放てば倒せるはずです。それまでの時間を稼げますか?」
な、なるほど。それならできるぞ。というか、「ハイランサー」ってどんな魔法だろう?
「わかった。やってみる。」
一気に駆け出す。プリボーのテール攻撃が来るのをかわす。そして背中に一攻撃、しかし、背中は硬く弾かれてしまった。そこからの爪の一撃をくらってしまった。ディフィマーがない今、ダメージがくる。それもとても強烈だ。口の中に鉄の味がする。やられた左腕は傷が深い。痛い。思わず怯んでしまった。俺に魔法が使えれば・・・ん?、俺にも使えるぞ、一つだけ。
「終わりだ!異世界人」
そういって炎の息が吐かれた。間に合うか、脳裏にはプリボーの後ろの風景そして
「テレポート」
即座に後ろに瞬間移動でき、後ろを攻撃した。
「な、何!」
プリボーさん驚いています。まあ、いきなり消えてと思ったら攻撃されたもんな。そりゃ驚くわ。
「貴様、何をした?」
「何って何?」
「今、我の目には消えたように見えたのだが」
「知らないな~」
「ほう~しかし、さっきからヒーナが見えないな。何処かに隠れているのだろう。どれ、こっちの方向にいるのかな?」
やべぇ、ヒーナちゃんとの作戦がバレ始めてる。ここはなんとしても止めないと。でも、どうやって?わからない。もうヤケだ!剣で叩き切る!
「うぇぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
攻撃、しかしびくともしない。もう一発、すると
ヒュヒュヒュヒュ ドサァ
剣が折れてしまった。折れた剣先は華麗に宙を舞って後ろの方に落ちていった。って感心している場合じゃねぇ。ヒーナちゃん、ヒーナちゃん!プリボーやめろぉぉぉぉ!
「ヒーナちゃん逃げて!」
「いえ、もう詠唱はできました。『ハイランサー』」
無数の氷の槍がプリボーに刺さっていく。どんだけあるんだよ。
「ヒーナちゃんこれはいったい・・・」
「これは私が得意とする魔法技能、繰返・詠唱です。『ハイランサー』を繰返・詠唱しました。えっと、百回くらいかな?」
百回?ってことは、その分一気にダメージが当たるってこと?エグいって。
「ぐ、グハァ。こ、この我が・・・」
ダメージは絶大なようだな。もう勝ったのか?
「クハハハハハ、我もここまでのようだな。だがしかし、もうお前たちはこの世界の敵だ!この世界のすべての人々が殺しに来るだろう。キャハハハハハハ。」
そう言い残してプリボーは消えていった。
「ヒーナちゃん大丈夫?こんなことになってごめんね。」
本当に申し訳ない気持ちでいっぱいである。ヒーナちゃんまで巻き込んでしまって俺って最低だな。
「いえ、私が思うままにしたことですので。それに、五輝さんが初めて安心できた人なので助けたいって。」
最後あたりは声が小さくなって聞き取ることはできなかった。でも、顔を朱に染めてモジモジするところはとてもかわいいと思った。これから起こることにワクワクしてきた。ヒーナちゃんもそう思ってるのかな?きっと、同じ気持ちだろう。
五輝 「ふう、危なかった。」
燈花 「お兄ちゃん大丈夫!?」
五輝 「ああ、大丈夫だ。」
ヒーナ「なんだか、幸せな光景ですね。」
五輝 「ヒーナちゃんも来る?」
燈花 「お兄ちゃんだけ」
マボ 「俺も入れて~」
五輝、燈花、ヒーナ「誰!?」