きさらぎ駅 1
「あぁ!!畜生!!毎日毎日仕事がねぇとつまんねぇよ!!」
俺は年の離れた幼い妹がくれたブレスレットを腕から外し、風呂に向かった
探偵なんてカッコいいのは名前だけだ
あるのは浮気調査に探し物、俺の憧れてた大事件を解決したり、怪盗との熱い頭脳戦も勿論無い。
「このままじゃ、この事務所借りるのもままならねぇぞ...」
シャワーを浴びながらそう口走って居た。
シャンプーもボディーソープも買ってきては水増しし、使ってる
収入も安定しねぇし、やっていくのも大変だよ...
あぁ...癒されてぇ...誰でもいいから癒してくれ...そうだよな、五歳の妹が癒してくれるか...今度はいつ会えるんだ...
俺はそっと風呂場から出た、湯船に浸からねぇのかって?浸かれるワケナイ、水道代も節約しなきゃならねぇのに...
そのまま寝よう、明日の服着て寝よう...
俺はもう疲れてんだ...
あぁ...妹の香に会いてぇ...あいつとは生まれてちょっとしたら探偵始めた俺とはあんまり接点ないからなぁ...
俺は園田大和
今年で30...か...もうオッサンじゃねぇか!!!
母さんも高齢出産って親父なにしてんだよ!!
もうツッコムのも疲れるわ...寝よう...
~翌日~
「で?なんの依頼だよ」
「あ、あの...友人がある日を境に見かけないし、電話も出ないので探して頂きたいので...」
少し太り気味の男はそう言った
「ほ、ほんとか!?勿論引き受けよう!」
「あ、ありがとうございます!彼は僕にとって大親友でして...小さい頃から彼だけを追いかけてきました」
あぁ、可哀想に
つい、可哀想と思ってしまうが30で彼女及び妻の居ない俺が言える事じゃないがな...
「で、最後に連絡をとったり会ったりしたのはいつだ?」
「そ、その...彼と飲みに行った帰りだったんですよ...電車で帰ろうって話になったのですが、酔って居て泥酔しちゃって、気がついたら終点で、その時に回りに居た奇抜な女子高生とかOLとか酔っぱらいのおっさんとかも、居ないし彼も居ないんです。怖くなって電話したのですが出ないのでもう帰って寝たのかなと思い、次の日大学へ行くと居なくて、次の日もずっと...一週間経ってるのでおかしいと思い来たのです」
そうか、もう一週間も連絡とってないのか...なら誘拐やなにか事件に関わった可能性があるな...
終点か...今日から張り込んでみるか
「わかりました、今夜一緒にその泥酔した電車に乗りましょう」
~深夜~
「なんらおかしなところはないが、本当にここで居なくなったのか?」
「はい...実はこの電車、ある都市伝説があるんです...」
「ちょ、おま、俺は霊とかそう言う類いは苦手なんだよ!」
『きさらぎ駅』、それが都市伝説の話らしい
電車はトンネルに入った頃、男は語り始めた
『2ちゃんねる』等で騒がれていたのがきさらぎ駅らしい
その駅はかたす駅の隣らしいが、はて...そのような駅あったっけか...
「なぁ、話を切って悪いがトンネル...長くないか?」
「そう言えばずっとトンネルですね...」
「さっきの話ではトンネルに入ったら長い間トンネルの中らしいな...まさか...」
俺は首筋に汗が落ちるのをハッキリとわかった
「う、うそだ...まさか...いやだ...俺はまだ死にたくない...嫌だぁぁぁぁぁぁぁ!!」
男は突然正気を保てなくなったようだ
「お、おい、落ち着けよ、ここで慌ててちゃ大親友助けらんねぇぞ...?」
「っぁぁぁぁぁぁぁ!!!死にたくない死にたくない死にたくない死にたくないぃぃぃぃぃぃ!!!」
そう言って男は叫び続けた
プシュ~と音が鳴ると、降りろと言わんばかりに外に向かって風が吹いた
男は薄暗いのに急ぐように走って行った
「あ、あいつ...報酬はどうしてくれんだよ...」
俺は男を探す為、電車から降りた
その瞬間、電車は来たときのようにプシュ~と音をたてて走り去って行った
やべぇ...置いてかれた...
遠くから聞こえる太鼓の音が妙に不気味だった
「こ、こういう時こそ落ち着かなきゃいけねぇ...よし、深呼吸...」
ふぅぅぅぅぅぅぅ~...
よし、酸素が行き渡った。
写真でも撮っておくか...
カシャッ
ん?なんだこれ
掲示板の下に白く太い足が見える...
「ま、まっさかぁぁ....」
掲示板の下には何もない
写真のブレだよな...
よし、探しにいこう