…2 祭
子供は皆、物心ついた時には祭で舞を踊らされる。稚児舞っていう伝統の一つ。千久楽では子供は尊ばれる存在だ。
7歳までの子は強制的に稚児舞に参加することになっている。その親達は祭の度に我が子を華やかに飾り立てる。子におめかしさせたいという親心もあるだろうが、本来は厄よけの意味合いが強い。
生を受けて間もない子供は未熟で脆いものであり、些細なことで命を落としやすい。あの世に近いということは、神の領域にも近しい存在……俗に言う〝七つまでは神の内〟というやつだ。
その後、8~17歳までの十年間は、神と人の間、という意味で〝間人〟と呼ばれ、その中から選出された二人が祭の舞手を務める。(実際、女は〝月のもの〟が始まると舞手を降りなきゃならない)で、18歳で皆めでたく〝大人〟に……神から人になれるってわけだ。
祭は欠かせない昔からの習わし。風の神に、その年に採れた農作物や歌、舞を奉納する。
風はこの土地の守り神であり、祟り神でもある。ほどよい風は恵みをもたらすけど、強すぎる風で被害が出る。毎年その繰り返し。どういう塩梅なんだか……ったく、厄介な神サマだ。祭というのは要は神のご機嫌取りだ。
稚児舞にしろ、何でこんなことしなきゃならないって思ったけど、ここに生まれついたからには仕方ない。
小さい時はまだ素直で、千久楽に神がいるってことを当たり前のように思ってた。どこの土地でもいるもんだ、ってな。……俺としたことが(笑)
次第にませてくると、こーゆー根拠のない気休め的な行事がだんだんめんどくなってくる。それでもいの一番に練習に参加してたのは理由があった。
まず第一、家に居たくなかった。そのニ、早く覚えて遊びに行きたかった。
――以上。さぼると名倉の爺さんうっせーし、殴るからよ、容赦なく。毎回とっとと終わらせてドロン、だ。周りの奴らに合わせてなんかられない。
とは言っても本番では俺がいつも目立つ位置をキープしてた。文句が付けられないほど優秀だったのさ。