表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
風紡ぎ唄  作者: 飛水一楽
1/16

…1 空白地帯

スピンオフでありながら、本編より早く出来てますので、本編との擦り合わせをしつつ、加筆修正して、ようやくお披露目です。


…ちなみに。

本作の構想はずいぶん前です。

途中、原発や汚染などの描写が入りますが、震災の影響を受けて作った話ではなく、子供の時から、原発に覚えてきた自身の違和感を反映して作った話です。

その部分については無修正ですので、かなり露骨な表現がされていると懸念します。


もし読んで気を悪くされた方がいましたら、大変申し訳なく思います。

挿絵(By みてみん)

illustrated by mariy




  かーこめ かこめ

  かごのなかのトリは

  いついつでやる

  ……



どこからか聴こえてくる童唄。子供のはしゃぐ声。耳にまとわりつくように。

 

ここではいつものことだ。






音が生まれる。さざめき、拡散して消えてゆく。


生い茂る木々を風が掻き乱す。チリン、チリンと風鈴の音。軒先に回るかざぐるまの音。昔馴染みの風景。……あまりに見飽きた俺の故郷。 


つまらねぇ。ハッキシ言って。


連綿と続く毎日。昨日も今日もそう変わらない。子供心にも憂さを感じてた。

平和は結構と、土地の奴らはのんびりその日暮らし。やんちゃだった俺には物足りない。……何もかも、退屈だった。


辺鄙な土地。草なんかぼーぼーでよ。壊れかけの家には(ツタ)が張り放題だ。

段々になった田んぼ(棚田つってたかな)には、カカシがまぬけなつらで刺さってやがる。いらつくと、よく蹴飛ばしたりした。

ガランと開けた土地。でかい空。田を吹く風はやたらと強くて、時折トラクターさえなぎ倒す。

 

千久楽では、とにかく風は絶えない。だから空気もキレイだ。日が落ちれば辺りは真っ暗で、星がさんざめく。夏になれば蛍が舞うし、蝉がうるせーうるせー。きっと他所者(よそもん)が見たら溜息をつくんだろうな。この田園風景を見てさ。   


そんな自然の恩恵もあり千久楽(ちくら)は特別保護区に指定されてる。……の割には、その在り処はほとんど知られていない。


千久楽の外に出て初めて知ったことだが、どんなに探しても千久楽という地名は地図に載っていない。千久楽と思しき位置には道も川も境界線もなく、ただ空白があるだけ。陸上の孤島みたく……ある意味いわく付きな土地だ。


元々隔たった場所にあるから、蔑まれた時代もあったって聞いた。「あの里のもんは鬼の祭をする」ってな。

けど……今じゃほとんど、この土地を知る者はいない。忘れ去られた場所だ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ