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たびねずみ  作者: 橘颯
7/24

百二十一歩目~百四十歩目

121.

はじめまして。

わたしは、たびねずみ。

もくした、ままの、かれに、まずは、ごあいさつ。

きょうは、でんごんを、ひとつ、おとどけに、あがりました。

おとうさまは、あなたを、ゆるす、そうです。

だから、いつか、かえるように、との、ことでした。

おはかは、なにも、いいません。

ちう。


122.

わたしは、たびねずみ。

その、くにには、ひとりの、ものごいが、いました。

ほがらかに、わらい、かれは、いいます。

わたしは、じつは、おうさま、でね。

そうおもえば、みな、いとおしい、はいかに、みえる。

かれは、みさげる、みなを、うとむ、ことなく、あいして、いました。

ちう。


123.

わたしは、たびねずみ。

たびを、していると、いろいろな、においを、しります。

あめの、おひさまの、よるの、そして、まちの、におい。

ああ、いま、においが、かわりました。

なんだか、ごちゃごちゃで、けれども、ちからづよい、におい。

こんどの、まちは、たのしそう、ですね。

ちう。


124.

わたしは、たびねずみ。

まちを、ゆきかう、せなかに、おおきな、とけいを、せおった、ひとたち。

ちくたく。

みちに、ころがる、はぐるまと、ぜんまいの、おと。

ああ、いそがしい。

だれもが、あわただしく、はしることを、やめません。

とけいが、はしらせて、いるので、しょうか。

ちう。


125.

わたしは、たびねずみ。

いえ、ほんとうは、たびねずみ、では、ありません。

ターミナルの、コンコースに、すみついた、いっぴきの、ねずみ。

ききかじった、おはなしを、かたっている、だけです。

いえ、ほんとうに、ねずみ、でしょうか。

あなたが、みているもの、は、なんですか。

ちう。


126.

わたしは、たびねずみ。

みちに、まよった、ときに。

わたしは、まず、たちどまります。

それから、いくらか、もどって、みるのです。

いちど、みた、こうけいを、みなおせば、あんがい、みちは、みつかる、ものです。

もどるのは、こわく、ありませんよ。

あなたなら、どうしますか。

ちう。


127.

わたしは、たびねずみ。

そのひとは、やさしいひと、でした。

ながい、ちんもくの、その、あとに。

もう、わすれた、と、いって、わらったのです。

やわらかく、めを、ふせて。

わすれられない、ことを、こそ、わすれた、と、いって、わらったのです。

とても、やさしいひと、でした。

ちう。


128.

わたしは、たびねずみ。

その、まちには、ゆうめいな、おばけが、いました。

はくしゃくと、よばれる、かれは、しんしゅつ、きぼつ。

ゆく、さきざきで、べるを、ならすのです。

もう、なんびゃくねんも、いる、かれ。

こよい、おこなわれた、けいしょうしきは、こうぜんの、ひみつ。

ちう。


129.

わたしは、たびねずみ。

その、まちでは、だれもが、パスワードを、もって、いました。

おさないころ、きめる、いくつかの、たんご。

かぞくでも、しることの、できない、ことば。

なにかに、つかう、わけでは、ありません。

ただ、ひとりだけの、もの。

それが、だいじ、なのだそう。

ちう。


130.

わたしは、たびねずみ。

いっぴきの、ねずみですが、ひとりでは、ありません。

いままで、であい、わかれた、かたがたが、わたしの、たびじには、よりそって、います。

そして、みなさんが、いつでも、わたしの、そばに、いるように。

わたしも、また、いつでも、あなたの、そばに。

ちう。


131.

わ、た、し、は、 た、び、ね、ず、み。

い、つ、も、よ、り、 ゆ、っ、く、り、 は、な、し、て、 い、ま、す。

こ、れ、な、ら、 あ、な、た、の、 お、み、み、に、 と、ど、き、ま、す、か。

す、て、き、な、 と、き、を、 か、さ、ね、た、 ま、だ、む。

ち、う。


132.

わたしは、たびねずみ。

やどは、のきさきや、ゆかしたを、かりる、ことが、おおいです。

しかし、ときには、おうちに、まねかれる、ことも。

こよいも、やさしい、こえに、さそわれ、へやの、なか。

わたしに、できる、おれいは、おはなし、だけ。

さあ、なにを、はなしましょうか。

ちう。


133.

わたしは、たびねずみ。

こわいと、おもうこと。

それは、それが、なにか、しらないから、では、なく。

それが、なにか、しっているから、です。

くらやみが、こわいのも、そこに、なにか、あぶないものが、いると、しっているから。

じぶんの、きおくに、こわい、ものは、いるのです。

ちう。


134.

わたしは、たびねずみ。

にこやかに、えむ、ひとが、きくに、たえない、ばせいを、はいて、いたり。

うつくしい、はなの、うらで、どくむしが、うごめいて、いたり。

そう。

せかいは、じぶんが、かかわらず、とおくから、ながめている、ときが、もっとも、うつくしい、のでしょう。

ちう。


135.

たとえば、あめに、ぬれたり。

ゆきに、うもれたり。

からだが、じとじと、しめっても。

おひさまに、あてて、かわかせば、もとどおり。

ふわふわ、たびねずみに、もどります。

こころも、おなじ。

しまいこまず、ときどき、そとに、だしましょう。

きっと、ふわふわに、なれます、よ。

ちう。


136.

わたしは、たびねずみ。

よい、ねずみと、いう、わけでは、ありませんので、わるい、ことだって、します。

たとえば、おかしの、つまみぐい。

おやおや、これは、いけません。

おさとうと、しおを、まちがえて、いますよ。

もういちど、つくりなおし、なさいな。

なきやんだら。

ね?

ちう。


137.

わたしは、たびねずみ。

ぽろ、ぽろん。

ずじょうで、ひびく、ちいさな、おんがく。

もっきんの、ような、やさしい、ねいろ。

あまおとが、かなでる、きまぐれな、しらべ。

それとも、いつかの、こもりうたでしょうか。

わたしを、つつむ、くちかけた、ずがいこつが、かつて、きいた。

ちう。


138.

わたしは、たびねずみ。

おてを、はいしゃく、おじょうさん。

さして、うまくは、ありませんが、ぜひとも、おつきあいを。

きゃしゃな、てを、とり、そっと、きざむ、ワルツの、ステップ。

がくたいも、いないので、はなうたに、あわせ。

こわれた、オルゴールの、うえ。

よあけまで。

ちう。


139.

わたしは、たびねずみ。

みずうみに、うかべた、ふねで、ゆらゆらと。

みみを、ぴんと、たてて、ほの、かわり。

しっぽの、かじで、たいがんを、めざします。

ぶじに、ついたなら、ふねは、おなかの、なかへ。

おはなの、ふねと、みずたまりの、みずうみ。

ちいさな、ぼうけん、です。

ちう。


140.

こんにちは。

まちゆくひとに、ごあいさつしても、へんじは、ありません。

わたしが、ちいさな、たびねずみ、だからでしょうか。

いいえ。

ないている、こどもの、こえも。

こまっている、おとしよりの、こえも。

だれも、きこえない、ようです。

どんな、こえなら、とどくのでしょう。

ちう。

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